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第1章 20・女王のフェロモン

第1章 20・女王のフェロモン


 (マリエッタ、どのくらいでガミジン族の女王蟻クイーンに遭遇できるんだい?)


 ホーリーが頭の中でスマホアプリのマリエッタに話しかけます。

 ワープ専用小型車に乗り込んでいるのは、ホーリーとウィン姫のわずか二人です。

 

 【時間としては出発して0.3秒後になります。少し距離を置いて到着するのがよろしいかと】


 出発したらすぐに決戦ということです。

 いくら効果的な武器があるとはいえ、否が応でも肩に力が入ります。


 「それでは出発します。いきますよウィン姫」

「ウム。ガミジン族の女王め、一体どれほどのものか、楽しみだな」

ウィン姫はまるでハイキングにでも出かけるような気楽さでシートに腰をかけます。そして、ショートパンツから伸びた脚をホーリーに見せつけるかのようにして大胆に組みました。


 (まったく14歳くせに色気づいてるよな……)

と、ホーリーが見とれている間に小型車は到着です。


 二人は揃って車を降りました。

 そこは密林地帯がやや拓けた所で、月の光の下、見通しはバッチリです。


 【ガミジン族は兵隊蟻10万、中央に女王蟻クイーンです。先頭との接触まであと3分】


 「じ、10万か……」

思わず口にします。ウィン姫は、

「どうした?何が10万なのだ?」

と、すかさず問いただします。


 どうやらホーリーとヒューイの予想は見事に的中していたようです。こちらにそれだけの兵力を割いたということは、ガミジン族の蟻塚で待ち伏せしている巨大蟻アントの数は5万ほどでしょう。

 主力は確実にこちらです。ガミジン族は女王蟻クイーンと共に巣替えをしようとしているのです。


 「貴様、なぜ私の質問を無視するのだ!」

ウィン姫が怒ってホーリーの顔に自分の顔を近づけます。


 鼻と鼻が触れ合いそうなほどの距離です。


 ウィン姫の甘い息がホーリーの鼻腔を刺激します。


 「じ、10万の巨大蟻アントが来ます。女王蟻クイーンと一緒にです。もう間もなくです」

「ほーう。ついにご対面か。面白い」


 地鳴りのような足音が聞こえてきます。

 木々の倒れる音と衝撃。

 かすかに巨大蟻アントたちの咆哮も。


 10万の巨大蟻アントたちの行列がどれほど長いのかはわかりませんが、十分にこちらの射程圏内に入っています。

 ホーリーは水筒を取り出し、中身を僅かに口に含むと、音のする方角に向けて吹きかけました。

 ガミジン族に襲い掛かるという命令を含んだフェロモンが周囲2㎞に広がります。

 量はまだまだあるので、いくらでも使用は可能でした。


 ギギギギギギ……


 ガミジン族の凶暴な咆哮がいよいよ間近で聞こえてきます。


 見えました。


 月の光の下、まるで黒い波が押し寄せてくるかのように、一面が巨大蟻アントで埋め尽くされていきます。


 さすがのウィン姫もこの光景を見て、息を飲みます。


 しかし、ガミジン族の歩みは止まりません。

 暗闇の中を赤い目を爛々と輝かせながら進んできます。


 ホーリーはもう一度、水筒の中身を口に含んで、霧状に吹き出します。


 射程圏内にはすでに突入してきているのは確かです。

 なのに、互いに襲いあうような行動はまるで見られません。


 「どうして、効かないんだ……」

ホーリーは茫然として押し寄せてくる黒波を見つめています。


 【ご主人様、どうやら今回の魔法具、ここでは効果がないようです】


 (ど、どういうこと?僕がいれば道具の力は発揮されるはずじゃ)


 【魔法具は力を発揮しているのですが、効果を打ち消されているのです】


 (効果を打ち消す……そんな、誰がそんなことを?)


 【ガミジン族の女王蟻クイーンが発生させているフェロモンです。ガミジン族特有のフェロモンで、巨大蟻アント全般に効果のあるこちらのフェロモンよりも強力で効果的なのです。この軍に女王蟻クイーンがいる限り、魔法具は無効となります】


 なんという絶望的な状況でしょうか。

 頼りにしていた道具に効き目がないのです。


 青い顔をしたホーリーにウィン姫は尋ねます。

「どうした。貴様の魔法がまったく効いてないようだが」

「……」


 ホーリーは頭が真っ白になってしまって何も答えられません。


 「その顔を見る限り、貴様の魔法は敗れたようだな。なぜだ?」


 「……向こうの女王蟻クイーンの出すフェロモンが強すぎるんです……」


 「ほーう、そういうことか」

ウィン姫は納得してうなずくと、急に白銀の胸当てを外し始めました。

 薄手のノースリーブ姿になります。


 「え?ウィン姫、どうしたんです?逃げ支度ってことですか?」

ホーリーは目を丸くして尋ねました。


 ウィン姫は胸元も露わになるような格好で、自らの金髪をかきあげます。


 「女王のフェロモンに対抗するには、女王のフェロモンであろう」


 さすがにホーリーも開いた口がふさがりませんでした。


 (意外と、出てるところは出てるんだ……)

と、妙に感心もするのでした。


 (いやいや、こんな少女の発するフェロモンで惑わされるなんて、よっぽどのロリコン男ぐらいだろ……本気…みたいだな。よっぽど自分に自信があるんだ……)



 ガミジン族10万の大軍はもう目前に迫っていました。


2015年も今日が最後ですね。

明日から2016年。正月も午前3時に更新します。

いつも午前3時に読んでいただいている皆さま、ありがとうございます!!

2016年もよろしくお願いいたします。

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