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第1章 19・抜け駆け

第1章 19・抜け駆け


 「でも、ケリーさんはウィン姫のお姉さん同然だって言っていましたよね。だったらケリーさん救出の指揮はあなたがすべきだと思います……」

ホーリーは思い切ってそう言ってはみたものの、途中からウィン姫の表情が険しくなり、ホーリーの語尾は聞き取れないほど弱くなっています。


 「貴様の読みが正ければ、敵陣の備えは手薄ということだ。で、あればわざわざ私が向かう必要はあるまい。ラムサスで十分よ」

ウィン姫がそう言い放つと、王国軍将校のラムサスは慌てて首を横に振り、

「とんでもございません。姫様の護衛役が、その姫様を置いて敵に生け捕られた妹の救出になど行けるはずもございません。私は姫様の傍からは決して離れません」


 「ヨークはそのケリーという女の顔は知っているんだろ。だったら俺とヨークで救出には行けばいい話だ。未熟な腕前の連中に付いてこられると余計に面倒になる」

漆黒の甲冑姿のキリュウが吐き捨てるようにそう言うと、ウィン姫の緑の目の色が変わり、

「なんだと、その未熟な腕前の連中とは誰のことを言っているのだ。貴様と私のどちらが上かここで証明してみるか」

銀の剣を抜きます。


 (本当にこの少女の扱いは面倒くさいなー……)


 そう思いながらホーリーは改めて布陣を確認します。

「では、ガミジン族の蟻塚にはヨークさんが指揮をしてもらって」

「え!僕が指揮をするの?なんだか面倒だな……」

「で、キリュウさんと、ヒューイさんもいいですか?」

「ええ。その方が互いに臨機応変な対応ができそうですからね」

ヒューイはウインクしながらうなずきました。


 ホーリーの描いているイメージをヒューイはよく理解してくれています。仮に読みが外れていても、ヒューイならばホーリーの動きを予測して最善の手を打ってくれるでしょう。


 「あとは、ノエルさん……」

「僕はもう魔力を使い果たしちゃって今日は戦力になれそうにないです。裸足の魔導士の活躍もこの目で見たいから、ここに残りたいな」

大きな瞳を潤ませながらそう懇願してきます。ホーリーとしても無理強いはできません。


 「じゃあ、バスケスさんは?」

恐る恐るホーリーは尋ねました。巨人バスケスは首を横に振って、

「王宮の人間の手助けなどする気はない」

と言い切りました。


 ホーリーは巨人族とはまだ会話できないレベルでしたが、今回のガミジン族との戦いでレベルがあがったのでしょう。普通に会話ができるようになっています。マリエッタに自分のレベルの分析をしてもらおうかな、とも思いましたが、無駄に電力を消費するのを避けるために今は諦めました。


 こうなると残っているのは高齢のヤンだけです。

 ヤンはホーリーと目が合うと、アイコンタクトでうなずきました。行ってくれるようです。


 「ヨークさんが指揮を執って、ヤンさん、キリュウさん、ヒューイさん、そしてシグナリ族7千。これでケリーさんを救出してください。残りのウィン姫、ラムサスさん、バスケスさん、ノエルさん、ナターシャそして僕はここでガミジン族の女王蟻クイーンと決着をつけます」

ようやく布陣が決まりました。


 「このスプレーの中身を二つに分けます。ガミジン族の群れに遭遇したら、こちらをすぐに使用してください」

ホーリーはそう言って、女王蟻のフェロモン入りのスプレーを取り出しました。まだ召喚ターンは1時間以上残っています。


 【ご主人様、ご注意を一点お伝えしてもよろしいでしょうか】


 スマホアプリのマリエッタが自動で電源を入れて、通話をしてきました。


 (なんだいマリエッタ)


 ホーリーは頭の中でその声に答えます。


 【私が召喚した魔法具は、ホーリー様がその場に居合わせない限り効果を発揮しません。スプレーを誰かにお渡ししたところで、ホーリー様がここに残られたら巨大蟻アント攻略には使用できません】


 (え、そうなの?じゃあ、このワープ用の車も僕が乗らないと移動できないってこと?)


 【その通りです。ガミジン族の蟻塚にはホーリー様が指揮されるのが一番よろしいかと思います】


 (そうなると、ここでの女王蟻クイーンとの決戦は僕抜きってこと?)


 【私がガミジン族の女王蟻クイーンの現在位置を捉えました。ワープ専用小型車で先にそちらに向かい、その後、ガミジン族の蟻塚に向かわれるのはいかがでしょうか】


 (さすがマリエッタ。もう女王蟻クイーンの居場所を突き止めているんだ。いいよ、その案でいこう)


 【とりあえずシグナリ族7千匹はこの小型車には乗せきれません。先導させておくべきかと】


 (よし、わかった。ありがとうマリエッタ)


 ホーリーは再び口を開いて、

「ヨークさん方は徒歩になりますが、もう出発をしてください。このスプレーは渡しておきます。半分は僕が保管していますから」

「なんだよ、あの便利な魔法の部屋は使えないの?パッと移動できるやつ」

「ええ、申し訳ありませんが、定員オーバーです。シグナリ族が場所を知っていますから先導してもらい、その後に続いてください。ここに残るメンバーはここで待機です」


 ヨークはぶつぶつと不満を口にしていましたが、シグナリ族の群れの後に続いて出発していきました。キリュウ、ヒューイ、ヤンもそれに続きます。


 「じゃあ、僕はちょっと出かけてきますね」

ホーリーはまるでトイレにでも行くかのような軽い感じで、残ったメンバーに伝えました。

 特に誰も不信には思っていないようです。


 ホーリーはワープ専用小型車に辿り着きました。


 独りで女王蟻クイーンと対峙することになりますが、このフェロモン入りの液体があれば大丈夫でしょう。半分は水筒に入れて持参してきました。口に含んで吹き出せば、同じ効果を発揮できるはずです。女王蟻クイーンを素早く倒して、ヨークたちに合流できればヨークのスプレーも効果を発揮できます。


 「よし、それじゃあ行こう」

意を決してホーリーが車に乗り込みます。


 「どこに行く気だ?」


 ホーリーが振り向くとウィン姫が目を細くして立っていました。愛犬ナターシャの姿はありません。ラムサスもいないようです。


 「貴様、何か隠しているだろう。言え。どこに行くつもりだ」

ウィン姫はそう言って勝手に車に乗り込んできました。


 (なんと勘が鋭い少女なんだ……いよいよもって面倒だな。でも時間もないし)


 「わかりました。ご一緒いたしましょう。行き先は、女王蟻クイーン退治です」

ホーリーは降参したといったジェスチャーをしながらそう答えました。ウィン姫は楽しそうにうなずいて、

「さすがは私の夫に立候補するだけのことはある。抜け駆けして、独りで敵の大将を討ちに行こうとはな。面白い。私も連れていけ。夫婦として初めての共同作業となるかもしれんからな」


 (いつの間にか立候補していることになってるし……)


 どういう教育をすればこんな自己中な人間に育つのだろうと、ホーリーは呆れ返っていました。


屋根の雪下ろし、ベランダの雪下ろし、2時間かかりました。

明日は雪は降らないようです。また午前3時にお会いしましょう!!

(感想どんなのでもお待ちしてます!!)

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