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第1章 17・女王の中の女王

第1章 17・女王の中の女王


 (マリエッタ、三つ目の道具を召喚したいんだけど)


 【はい。ご主人様、お呼びでしょうか】


 (蟻のフェロモンに関する道具なんだけど……って、可能かな)


 【承知いたしました。召喚したスプレーを放出してください。空気中を半径2㎞圏内まんべんなく行き渡ります】


 ホーリーは足元に現れた小型のスプレー缶を手に取り、ガミジン族の群れの方向へ吹きかけました。


 シュッ、シュッ


 霧状のわずかな飛沫がホーリーの足元を濡らします。


 「失礼ですが、ホーリー殿、それはいったいどのような魔法なのでしょうか…」

ヒューイが不思議そうな顔をして尋ねました。


 「ええ、現状を打開するには一番いいかなって思いまして……」

ホーリーが少し自信なさげに頭を掻きながら答えました。


 効果は驚くほど早く現れました。


 ガミジン族同士がかみつき始めたのです。

 隣の仲間の脚を引きちぎり、頭をあごで砕きます。

 あちらこちらで同じ現象が起こりました。

 中には自分自身の体を噛みちぎっているものもいます。


 「同士討ちじゃ」

ヤンがずれた眼鏡を直しながら驚きの声をあげます。

 抱きかかえられている少年ノエルも、うつろな表情でその光景を確認すると、

「凄いや、さすがは伝説の裸足の魔導士だ。僕の渾身の雷撃の呪文スペルよりはるかに威力があるね……」


 ガミジン族の同士討ちは地上だけではありません。シグナリ族の蟻塚に突入している巨大蟻アントも同様です。


 「どうして……」

ヒューイが辺りを見渡します。ガミジン族は阿鼻叫喚の状態ですが、クイをたちシグナリ族は互いに攻撃しあったりはしていません。近くにいるガミジン族に噛みつき、引き倒しています。


 「いったいどうなっているんだ」

刀剣を振るい戦っていた仲間たちも息をはずませながら集結してきました。キリュウは漆黒の甲冑を巨大蟻アントの青い返り血でびっしょりです。


 「貴様、何か魔法を使ったな。何をした」

ウィン姫もさすがに疲労困憊な様子ですが、口調はいつも通りです。


 「蟻は女王蟻の発する命令フェロモンに従って統一した動きをします。僕はガミジン族を襲撃する命令フェロモンを撒いたのです。彼らは女王蟻の新しい命令を受けて同士討ちや自害し始めたわけです」

ホーリーは丁寧にみんなに説明しました。


 「だったら初めからそれをやろうよ」

汗だくのヨークがそうぼやきます。


 「なるほど貴様、わざと魔法を使うタイミングを遅らせて、私たちの腕前を試したのか。なんとも憎たらしいやり口よ」

ウィン姫が銀の剣の刃をホーリーに向けながら言い放ちました。

「いえ、そんなつもりは……」

ホーリーはたじろぎましたが、ウィン姫は次ににっこりと笑って、

「私の夫になりたいのであれば、それぐらいずうずうしく、生意気なくらいがちょうどいい。さすがは非情なる虐殺を繰り返す裸足の魔導士よ。気に入ったぞ」


 どうやらウィン姫のお気に召したようで、ホーリーはとりあえずホッとしました。


 「五万の大軍がこれで壊滅ですか……では、次は攻勢に転じる番ですね」

ヒューイの言葉にみんながうなずきます。


 クイがガミジン族の死骸をかき分けて、シグナリ族の蟻塚に近づいていきます。


 蟻塚の中から防戦を続けてきたシグナリ族の仲間が、蟻塚内のガミジン族の死骸をせっせと外に運んでいました。その死骸はもう山のように積み上げられています。


 と、蟻塚の中から羽の生えたひと回り大きなシグナリ族の巨大蟻アントが一匹現れました。シグナリ族の女王蟻クイーンです。蟻塚の中で何万という卵を産み続けてきたにしては身体に艶があり、生気に満ちています。


 クイと女王蟻クイーンが対面しました。


 互いに目と目が合います。


 その後の事態は一瞬の出来事でした。


 シグナリ族の兵隊蟻たちがこぞって自分たちの女王蟻クイーンに襲い掛かったのです。女王蟻クイーンは観念したように悲鳴ひとつあげず、身体をバラバラに引きちぎられました。


 ホーリーたちは唖然としてその光景を見守ります。


 ホーリーの発したフェロモンにはそんな命令は含まれていません。


 「女王蟻クイーンの交代劇ですね」

ヒューイがぼそりと呟きました。


 「交代劇……」

「ええ。巨大蟻アントは始め4匹の女王蟻クイーンが協力し合って蟻塚を作り、卵を産み、兵隊蟻を増やしていきます。ただし時期ごとに女王蟻クイーンの選別があって、4匹のうち一番力の弱い女王蟻クイーンが兵隊蟻たちに殺されます。そしてまた時期がくると3匹のうちの一番力の弱いものが殺され、最後に2匹のどちらか強い方が生き残って女王の中の女王になるのです。クイが新たに女王蟻クイーンの資格を得たので選別が行われたのでしょう。結果、今までの女王蟻クイーンの方が力が弱いとみなされて殺された。これが交代劇です」


 誰もが巨大蟻アントの過酷な現実を知って息を飲みました。


 ですが、こうして巨大蟻アントたちは子孫を繁栄させて勢力を拡大してきたのです。


 「それじゃあクイがシグナリ族の女王の中の女王になったんだ。おめでとうクイ」

少年ノエルは無邪気に微笑み拍手をしました。


 他に賛同して拍手する者はいませんでしたが……。


北海道は猛烈な雪です。

雪かきだけでものすごい時間と労力を消費しています。

明日の午前3時の更新は自信ないです……

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