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第1章 12・ガミジン族とシグラリ族

第1章 12・ガミジン族とシグラリ族


 (マリエッタ、近くに巨大蟻アントはいるの?)


 ホーリーもようやくウィン姫の後を追います。


 【ウィン様が向かわれた方角20mの地点に1匹。そこから100m離れた地点に100匹ほど。1匹の方の生命反応が弱いです。おそらく怪我をしているか病気なのか。100匹の方の殺意は高い数値になっています】


 ホーリーが密林の茂みをかき分けようとした瞬間、誰かがホーリーの肩を掴みました。


 「しっ!声を出すな」

ウィン姫です。ピタリとホーリーの横にくっついて共にかがむよう促します。 

 ウィン姫の金髪からとてもよい香りがしてホーリーはドキッとしました。


 「あれを見よ」

ホーリーにだけ聞こえるような小さな声で、ウィン姫がささやきます。

 指し示す場所には、1匹の巨大蟻アントがモゾモゾと動いています。トリミング王国の地下で戦った巨大蟻アントよりも小さいです。ちょうど足元で睨みをきかせているナターシャぐらいのサイズでしょうか。


 【どうやらシグラリ族の子どものようです】


 相当な怪我を負っている様子で、脚を引きずりながら必死に前に進もうとしています。でもまったく前進できていません。


 「身体からだに杭のようなものを打ち込まれていますね」

いつのまにかホーリーの横には王国軍将校のラムサスの姿がありました。


 「よし、息の根を止めてこよう」

「待って。様子がおかしい」

ウィン姫が立ち上がろうとするのをホーリーが止めました。ウィン姫の左腕は意外に肉付きがよく、ウィン姫の肉感を手の平で感じてホーリーの胸はさらに高鳴ります。


 「なぜ止める?こちらの侵入を気づかれたら面倒ではないか」

ウィン姫が怒って大きな声を出しました。ホーリーとラムサスが必死になだめます。


 「この奥の100m先に100匹の巨大蟻アントが潜んでいます」

「何!?どういうことだ。ではなぜ助けぬのだ。同じ種族が怪我を負っているというのに」

「それは……わかりません。ただ、あの怪我をした巨大蟻アントは僕たちが戦うべき相手とは別の部族です」

ホーリーは正直に答えました。


 【西から巨大蟻アントが接近しています。距離300m、数は50匹。物凄い速度と殺意です】


 (僕たちの侵入が気づかれたのかな?犬は吠えるし、ウィン姫は騒ぐし……)


 【蟻が聞き分けられる音は限られています。恐らく人や犬の声には反応しないでしょう。反応するとしたらホーリー様が分泌しているフェロモンです。シャナムの国を焼き尽くした敵のフェロモンということでガミジン族は統一認識を持っています】


 (じゃあどうすればいいの?ファブリーズでも出してもらって吹きかけるとか?)


 【とりあえず今はもう時間がありませんね。襲撃してきた巨大蟻アントとの距離が8mですから】


 「来るぞ……」

漆黒の甲冑姿のキリュウの声でした。振り向くといつの間にか全員がそろっています。ナターシャが低い唸り声をあげました。


 【来ます】


 木々がざわめきます。密林をかき分け、地面を揺らす足音。


 ギギギギギギギ……


 怒り狂ったような咆哮も聞こえてきました。


 全員が身構えますが、50匹の巨大蟻アントの群れはこちらから遠ざかった方向へ進んでいきました。


 【シグラリ族の兵隊蟻です】


 怪我を負って呻いている子と同じ部族ということになります。


 (あの子を助けに来たのか……)


 「全員待機して、動かないように!」

ホーリーがそう叫んで、突撃しようとするウィン姫を制止します。ヨークが矢を放つ瞬間でもありました。


 「僕の意見を聞いてください」

ホーリーは必死です。ウィン姫は睨み付けていましたが、やがて諦めて剣を鞘に戻しました。

 全員がホーリーの指示通りに構えを解いて、巨大蟻アントの群れを見守ります。


 50匹の巨大蟻アントが杭を打ち込まれた子ども蟻のところに到着したときです。

 奥から倍の数の巨大蟻アントが突如現れました。

 大きさは後から現れた方がひと回り大きく、目が真っ赤です。トリミング王国の地下に現れた巨大蟻アントでした。


 「囮を使った待ち伏せですね」

ラムサスが言った通りです。大きく、数の多い方の巨大蟻アントが一斉に襲い掛かりました。


 攻め込むつもりが逆に襲撃される形になった50匹の巨大蟻アントは統制もとれず、個々にバタバタと倒されていきます。踏みつけられ、強靭な顎に首を両断されるものが相次ぎます。


 形勢の不利を悟ったものたちが逃げ出し始めました。


 大きな巨大蟻アントは追撃を緩めるつもりはないようで、嬉々としてその後を追っていきます。


 「どうする?私たちも追うか?」

ウィン姫がホーリーに尋ねました。


 「部族間の争いだよ。ほっといた方がいい」

ヨークがそう提案しました。何人かはその意見に同意します。


 「おそらくあのままの勢いで相手方の蟻塚を攻め込み、占領する気ですね。巨大蟻アントの部族同士は、絶えず争いを繰り返し、勢力を広げたり、滅亡したりすると聞きました。負けた側の女王蟻クイーンは食い殺され、さなぎや幼虫は敵側の食料として持ち出されます。占領された巣には殺された兵隊蟻の死骸以外は何も残らないそうです」

やせっぽっちのヒューイがそう全員に説明しました。


 まさに弱肉強食の世界です。



 (マリエッタ、召喚してほしい道具があるんだ。……だけど可能かな)


 【承知いたしました。2つ目の召喚になりますがよろしいですか?ケリー様の救出作戦にも支障が出るかもしれません】


 「ああ。構わないよ」


 ホーリーは、最後の言葉は頭の中ではなく、はっきりと声に表して意思表示をしました。


 「何が構わないんだ?」

ウィン姫が不信そうにホーリーを見つめます。


 「やるべきことをやる」


 ホーリーの視線はある一点を見つめていました。


明日はいよいよクリスマスイブですね……

頑張って午前3時に更新しますよー!!

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