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第1章 1・ヨークVSケリー

第1章 1・ヨークVSケリー


 異様な臭気、息苦しさでホーリーは目を覚ましました。


 (なんて長くて鮮明な夢だったんだろう……)


 目を覚ましても、シャナムに乗って空を飛んだ感覚や砂漠を裸足で歩いた感覚が強烈に残っています。


 (現実的リアルな夢だったな……ん!?あれ、ここはどこだ?僕の部屋じゃ……ない)


 闇に眼が慣れてきました。

 見慣れた天井も机も窓もドアも何ひとつありません。

 汚れた壁、狭い天井、寝ている脇からは汚水の流れる音。どこかの通路です。


 その時になってはじめて自分の両手が、胸の前で手錠にかけられていることに気が付きました。


 立ち上がろうとすると足にも鎖が巻かれています。


 「ようやくお目覚めか、ずいぶんと待たされたな」


 すぐ近くで男の声。聞きなれない声です。


 「その顔を見ると、ご自分の状況がまったく理解できていないようですね」


 声のする方に向くと、そこには少年が壁を背にして座っていました。

 足元には松明たいまつ

 ぼんやりと照らされた表情は、色白で長いまつ毛が印象的です。声を聞かなければ女の子と間違えるほどの美しい顔をしています。

 


 (弓矢……)


 その少年の横に立てかけられているものを発見して、ホーリーは驚きました。明らかに使い込んでいるだろう弓矢です。よくよく少年の服装を見てみると、革で作られた軽い鎧のようなものを身にまとっていました。


 (え!?まだ、夢の続きなの……)


 目が覚めたと思ったら、まだ夢の続きだったことはよくあることです。


 「……」


 ホーリーはその少年に何かを話しかけようとしましたが、声が出ません。猿ぐつわのようなものを口に入れられていることに気が付きました。


 完全に誘拐・監禁されている状況ではありませんか。


 「そりゃそうでしょ。手足の自由がきかなくても、詠唱ができれば呪文スペルが使えるからね。虐殺の魔導士に対しての用心だよ」


 (虐殺の魔導士……確か、マリエッタが僕の虐殺LVは13とか言っていたな。って、僕が虐殺の魔導士ってこと?そんなわけないでしょ)


 ホーリーは必死に首を振って抵抗しますが、少年にはまったく伝わりません。


 「あがいても無駄だよ。ここは、トリミング王国の地下を流れる下水道。迷路のように入り組んでいてね、知らずに入ると生きては出られない迷宮さ。仲間の救援は期待しないほうがいいと思うよ」


 少年はそう言うと、タバコに火をつけて一服します。


 「とは言ってみたものの、王宮の忍びから身を隠し通すのは骨が折れるよ」


 タバコを咥えながら、弓と矢を静かに引き寄せます。


 「先に自己紹介しておくよ。僕の名前は、ヨーク。黒風党ブラームの一味さ。キミをウィン姫の刃から救ったキリュウの仲間だよ」


 (ブラーム??姫……そう言えば、随分と生意気な女の子が剣を振って襲い掛かってきたな……あれ?あれからどうなったんだっけ)


 ホーリーが少しずつ記憶を取り戻している間に、ヨークは弓を絞り、的を狙います。


 十歩先は松明の火の明かりが届かない闇。


 「王宮の人間を殺すのはまずいって念を押されているからね。困ったな。脚でも狙うか……」


 ヨークはそう呟くと、立て続けに五射。目にもとまらぬ速射の腕前です。


 矢が飛んで行った先で、ドシャドシャという汚水に人が落ちる音が聞こえてきました。


 一人ではありません。三人か四人、もしかすると五人かもしれません。


 視界のきかない闇の中でなんという正確な射撃でしょうか。


 ホーリーが感心していると、何かが闇から飛んできてヨークに襲い掛かりました。


 ヨークは床を転がりながら避けます。


 ヨークがいた場所に、鉄の手裏剣が数十本突き刺さっていました。


 「その男を返してもらいましょう」


 闇の中から女性がひとり現れました。ホーリーには見覚えがあります。あの姫様と一緒にいた女性です。


ホーリーはまだ知りませんが、ウィン姫の侍女にして忍者マスターのケリーでした。


 ヨークは手裏剣の攻撃をかわしながらも次の射の準備をしてケリーを迎えます。


 二人の間は十歩ばかり。


 矢の的になっているのに、ケリーの表情には余裕があります。


 逆にヨークの方が額から汗を流し、追い詰められている雰囲気です。


 「安心していいですよ。貴方が私の部下の身体ではなく、脚を射抜いてくれたので、私も貴方の命までは獲りませんから」


 そう言ってケリーは微笑みます。


 「もちろん、五体満足とはいきませんよ」


 ケリーの両手には銀に輝く短刀が握られています。


 「僕も随分となめられたものだな。この距離で僕が外すとでも?これでも弓に関してはマスターレベルなんですよ」


 「当たる、当たらないは問題ではないでしょ。効くか、効かないかの問題よ、坊や」


 坊やと呼ばれてヨークは逆上した表情で矢を放ちました。


 ホーリーは目をつむります。


 (悲鳴が……あれ?)


 恐る恐る目を開けると、ケリーは見事にヨークの矢をつかみ取っていました。


 ヨークは続けて二射しましたが、どちらも簡単につかみ取られます。


 この暗闇で、この速度の矢を捉えるとは……恐ろしい反射神経、動体視力です。


 「レベルの差は実感できたかしら」


 そう言うと、ケリーは手裏剣をホーリーめがけて投げつけました。


 まず、脚を縛っていた鎖が切れます。


 そして両手の手錠が壊れます。


 三本目はホーリーの口のすれすれを通過して、猿ぐつわを解きました。


 凄まじい腕前です。


 実力差を思い知らされてヨークはふてくされています。


 「さて、裸足の魔導士さん、私と一緒に来てもらえるかしら。坊や、今日はお仕置きはなしにしておいてあげるけど、次はないわよ。あと、キリュウさんにもよろしく伝えておいてね。姫様が再戦を待ちわびているので」


 ケリーが倒れているホーリーに近寄ります。


 なんともいえぬいい香りがしました。ホーリーはそれだけでも気を失いそうです。



 「ギャー!!!!」


 と、闇の奥から悲鳴。


 続けざまに3人の悲鳴が響き渡ります。


 「黒風党ブラームはこの下水道にいったい何を飼っているのかしら?」


 どうやら悲鳴はケリーの部下の忍者のようです。


 何かの襲撃を受けています。


 「言いがかりはやめてくださいよ。僕たちは人間だけの一味ですよ」


 ヨークの表情は真剣そのものです。ウソをついているようには見えません。


 「と、なると、連中が復讐しにきたのかしら」


 ひとりごとのように呟いたケリーの表情からも、もう余裕はありませんでした。


明日も午前3時更新します!!

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