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序章 14・日の出

序章 14・日の出


 王国の兵士ギーニハンズが将軍ハンニバルに進言した戦術は、門外にいるホーリーを八方から取り囲んで、問答無用で射殺すというものです。


 しかし、ハンニバル将軍がその場に到着した時には、標的のホーリーは居ず、代わりにトリミング王国のウィン姫がひとりいるだけでした。


 ウィン姫は純白のドレスの寝姿でしたが、右手には愛用の銀の剣「スットガルト」を手にしています。賊と戦った後であることは明白でした。はたしてそれが、侵入してきた吸血鬼ヴァンパイアなのか、言い伝えの裸足の魔導士なのか、ハンニバル将軍には判断がつきません。


 「ご苦労だな将軍」


 ハンニバル将軍にそう語りかけたウィン姫の視線は別の闇の奥に注がれています。


 「吸血鬼ヴァンパイアどもの侵入を許し、また、それを取り逃がしたのは我が失態にございます。申し訳ございませぬ」


 そう言ってハンニバル将軍はこうべを下げましたが、それでもウィン姫の視線の先は別のところです。


 「構わぬ。私もしばらく動いていなかったのでな、身体からだがなまっていたところだ。ちょうどよかったわ」


 「して、侍女の姿がありませんが……もしや、吸血鬼ヴァンパイアの手に?」


 「まさかな。ケリーがあの程度のやからに引けを取るものか。賊の跡を追わせている」


 「間もなく日が昇ります。吸血鬼ヴァンパイアどもは深い暗闇に身を隠しますぞ。危険では?」


 「フッ。さてな……将軍おまえの目当ても吸血鬼ヴァンパイアごときではあるまい?」


 そう言ってウィン姫はようやくハンニバル将軍を見て、冷たく笑いました。


 「なるほど、賊は吸血鬼ヴァンパイアだけではありませんか……それは意外な展開でございますな。しかし、ウィン姫ほどの腕前でも倒せぬ相手とは、賊は何者でございますか」


 ハンニバル将軍は逆にとぼけた表情で尋ねる。


 (狸が……)


 ウィン姫は内心でそう呟きましたが、実際口にしたのは、


 「黒風党ブラームと名乗っておったが、将軍は知っているか?」


 「全国で指名手配になっている賊ですな。自分たちは義賊だと称しておるようですが、要は豪商やら貴族から盗みを繰り返している連中です」


 「義賊……そう言えば、集めた吸血鬼狩人ヴァンパイア・ハンターの中にその黒風党ブラームの一味が混じっておったぞ。キリュウという男だ」


 「黒き破壊者の異名をもっているあのキリュウですか……あやつが黒風党ブラームの一味だったとは……それでは、我々も徹底的に捜索いたします!」


 「ああ。よろしく頼むぞ」


 敬礼をしてハンニバル将軍は兵を率いて城内に戻っていきました。一度態勢を立て直すつもりなのでしょう。周辺に駆けつけてきていた弓兵たちもこぞってハンニバル将軍の後を追っていきます。


 そこにただひとりだけ残った兵がいました。


 兜をつけず、青い長髪のスラリとした男です。


 「姫様、言い伝えの男に会ったのですか」


 優しい声です。兄が妹に話しかけるようです。


 「チラリと見ただけだ。少し話もしたがな。あまり強そうには見えなんだ」


 「ケリーが付いているとはいえ、いささか軽率では。言い伝えの男は、老若男女・子どもや赤子にいたるまで平然と虐殺する魔導士。しかも力は神に匹敵するとか。今後はお控えください」


 「さすがはケリーの兄だな。お節介なところはそっくりだ。今は言い伝えの男よりもキリュウよ。勝負をつけねば気が済まぬ。ラムサスよ、もしハンニバル将軍が言い伝えの男やキリュウの足取りを掴んだらすぐに私に報告せよ」


 「承知いたしました。しかし、ケリーの忍び軍団よりも先に発見するのは不可能かと思いますが」


 「確かにな」


 そう言ってウィン姫は声をあげて笑いました。


 「ラムサスよ、なぜハンニバル将軍が言い伝えの男を探して動いたのだ。お前なら知っていよう」


 夜風に青い髪をなびかせながらラムサスは答えます。


 「国王様ではございません」


 「であろうな。国王ちちうえは迷信やら言い伝えやらにはいつも懐疑的だからな」


 「背後で糸をひいている者がいます。調べていますが、正体がつかめておりません。よほど巧妙に連絡を取り合っているようです」


 「ケリーと同じ忍者マスターのお前でも内偵できぬとは……一筋縄ではいかぬ相手のようだな」


 「申し訳ありません」


 「いや、面白くなってきた。ラムサスはそのまま軍の内部で調査を続けよ。しばらくは退屈しないで済みそうだ」



 太陽が地平線の向こうから昇り始めました。



 ウィン姫の胸にも同様に高揚感が高まり始めていました。



    【序章:完】


序章終了です。

ここから本格的に四国戦国史スタートになります。

明日も午前3時更新予定です。

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