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序章 12・言い伝えの男の出現

序章 12・言い伝えの男の出現


 ホーリーは、トリミング王国の外壁の外にひとり立っています。

 

 砂漠の地に裸足です。


 日中であれば足の裏が火傷やけどしていたでしょうが、今は、大きな月の出ている夜。足の裏の感触はひんやりとしています。


 一緒にここまでたどり着いてきた王国の兵士ギーニハンズは、「しばらくここでお待ちください」と言い残して城門から城内へ行ってしまいました。


 もう、かれこれ30分は経過しています。


 【ご主人様。充電が必要になって参りました。残りの電力は20%です】


 ズボンのポケットに入れているスマートフォンからの声。

 

 マリエッタという謎のアプリです。


 会話ができるだけでなく、魔法の道具を召喚することができます。


 召喚できる道具は5つまで。


 1つの召喚ターンは1時間。つまり1時間限定で使用可能です。


 使用後は丸一日、24時間召喚はできません。


 ホーリーはこれまで、魔法の剣、魔法の鎧、魔法の靴、そしてクラスター爆弾を召喚していますので、今から召喚できる道具はあと1つだけです。


 「充電って言ったって、充電器はないし、そもそもコンセントなんてあるのかな」


 ホーリーは面倒くさそうに答えました。


 ホーリーはこの世界が夢だと信じています。とてつも長い夢だと。


 夢には本来、常識も規則性も存在しないはずです。

 

 充電が切れることもなければ、その辺の壁にコンセントがあったり、突如服装が変わったり、死んだ人間が出現したり、夢なんてストーリーもなくバラバラ。


 (死んだ人間……)


 そのキーワードーを思ったとき、頭の奥がズキズキと痛みました。


 なにか大切なことを忘れている気がしてきます。



 【城内に科学者がおります。ヤンという男です。彼ならば充電だけでなく、私のバージョンアップも可能です】


 (ほらね。この時代背景で、スマホのアプリを最新版に再インストールできる技術があるなんておかしな話だよ。本当に夢って、なんでもありだな)


 「わかったよマリエッタ。ギーニハンズさんが戻ってきたら連れていってもらおう」


 呆れ返った顔をしつつも、ホーリーは丁寧にそう答えました。



 一方、城内に戻ったギーニハンズは急ぎ直属の上司に状況を伝え、大勢の兵を引き連れてホーリーの待つ城門を目指しています。


 先頭に立つのは、トリミング王国の将軍ハンニバル。


 頑健な顔の半分は髭に隠れています。


 大木のような手足、分厚い胸板を甲冑で覆っています。


 右手には常人にはとても持つことさえかなわぬような巨大な戦斧。


 「城内で賊が暴れて、ウィン姫が行方不明との知らせでございます」


 伝令が、走るハンニバル将軍にそう伝えました。


 「なんだと……言い伝えの男が現れたこの大事な時に……半数は姫の捜索に当たれ、残り半分は私とともに城外に討って出て、言い伝えの男の首を獲る」


 命令通りに半分に兵は分かれます。


 「将軍、相手は一瞬でシャナムの巣を焼き付くほどの魔力を持っています。うかつに攻めると全滅しますぞ。ここは策が必要です」


 ギーニハンズがそう叫ぶと、ハンニバル将軍は足を止めて、


 「どのような策だ。申してみよ」


 「はい。それでは……」


 ギーニハンズがハンニバル将軍の耳元で何かを伝えました。


 頷きながらハンニバル将軍は聞いています。


 「よし。採用しよう」




 一方、ホーリーが待つ城門の外。


 ぼんやりと月を眺めていたホーリーに、誰かが声をかけました。


 少女の声です。


 振り向くと、2人の女性がこちらを向いて立っています。


 ひとりは堂々と腕を組んだ少女。威圧的です。


 もうひとりは大人の女性です。清楚で優し気な雰囲気が伝わってきます。


 ホーリーが何も答えないので、少女がれて、


 「なぜ裸足でいる、と聞いているのだ」


 「ああ、いやー、いろいろあってバッシュを置き忘れてきちゃって」


 「バッシュ?なんだそれは。そのいろいろあったというのは、あの東の空が火に照らされているのと関係があるのか?」


 「まあ、関係あるといえばあるかな……」


 というか、関係大ありです。


 「よもや、あの炎、お前が放ったものか?」


 確実にとがめられている感じがしました。


 山火事の弁償となると、多額の賠償金を要求されると聞いたことがあります。


(でもまあ夢の中の話だし)


 「そうですよ」


 ホーリーは素直にそう答えました。


 「見つけたぞ言い伝えの男よ!いざ尋常に勝負だ!!」


 少女がそう叫ぶなり、どこから取り出したのか銀に輝く剣をかざして踏み込んできました。


 「うわー!!」


 間一髪、ホーリーはその一撃をかわして、砂漠に転がります。


 「な、なにをするんだ。危ないじゃないか、子どもがそんなものを振り回して!」


 ホーリーは慌てながらも、必死に注意します。


 大人の女性に目を移しましたが、こちらはあきらめ顔で、見てみぬふりを装っていました。


 「問答無用だ。夜が明けるまで時間がない。さっさと勝負しろ」


 少女はそう言って剣を構えます。


 ズボンの中からはマリエッタが、


 【相手の分析が終了しました。ウィン・ド・トリミング姫。魔法剣士LV78です】


 「姫……この子、この国のお姫様なの?」


 【生命力18 体力11 攻撃力136 防御力120 速さ88 知力61 魔力94 特殊能力は魔法剣 スキルはシャミング剣術免許皆伝LV100 爆裂の呪文スペルLV62 王家の威厳LV27 王家の血筋LV80 軍の統率LV9】


 「シャナムより全然強いじゃん」


 【はい。姫の称号とともに、魔法剣士マスターの称号を得ています。現状でホーリー様の勝つ確率は0.00000008%です】


 「ゼロって言ってもらったほうが早いな」


 【いえ、ゼロではありません。突然雷が相手に落ちるかもしれませんし、心臓病の発作が起こるかもしれません】

 

 「心臓に病気が?」


 【いえ、いたって健康体です。あくまでもたとえ話です】


 

 「なにをひとりでブツブツ言っているのだ。こないならこっちからいくぞ!」


 ウィン姫はそう言って、詠唱を始めます。



 【爆裂の呪文スペルの詠唱です。おそらく剣に魔法を込めて攻撃してきます。ホーリー様には避けきれません。最後の装備の召喚をお急ぎください】


 (そんなこといきなり言われても……ど、どうしよう!)


 慌てふためくホーリーをよそに、ウィン姫の詠唱は終わろうとしていました。


明日も午前3時更新します。

ファースト・インプレッションお待ちしてます!

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