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序章 11・魔法剣士と忍者

序章 11・魔法剣士と忍者


 ドーン!!!


 大きな爆発音とともにトリミング城の一部が吹き飛びました。


 夜の闇に砂埃すなぼこりが舞います。


 そこに上半身の右肩から腕までをもぎ取られた女が、悔しそうな顔でひざまずいています。


 ウィン姫を誘拐するために侵入した吸血鬼ヴァンパイアのひとりです。


 その女は口からも青い血を吐きながら、


 「なぜ、こんな小娘がこれほどの魔力を……」


 そううめきます。


 すると、大きな月に照らされてウィン姫が砂埃の中から現れました。


 金髪は肩にかかり、純白のドレスは夜風に揺れています。


 表情はあどけない少女そのものです。


 緑に輝く瞳の奥だけが、獣のような炎をメラメラと燃やしていました。


 右手には銀の剣。


 吸血鬼ヴァンパイアの青い血で濡れています。


 「フン、さすがは吸血鬼ヴァンパイアの端くれよ。私の一撃を浴びてもまだ生きているとはな。恐れ入った生命力」


 ウィン姫はそう言って微笑みました。



 うずくまっている吸血鬼ヴァンパイアの女のもとに、仲間の2人が駆け寄りました。


 ひとりの男は右腕を斬り落とされており、もうひとりも全身に無数の斬られた跡。


 ウィン姫の傍に侍女のケリーが短剣をクルクルと器用に回しながら近寄ります。


 「姫様、ですから、やり過ぎは禁物です。城を破壊するなどもってのほか」


 困った顔をしてウィン姫に苦情を言います。

 

 ウィン姫はまったく聞く耳持たずに、


 「外に出るにはこれが手っ取り早い。さてと、私の目的は達成したが、お前たちはどうする?まだ戦うか?」


 高々とそう言い放って剣を構えます。



 「く……無念だが、我らの手にはおえぬ。改めて出直すとしよう……」


 吸血鬼ヴァンパイアの男がそう呻くと、残りの2人も恨めしそうな表情を浮かべて闇に消えていきました。


 「姫様、取り逃がしてよろしいのですか?捕らえてヘルツォーク二世の居所を吐かせるという手段もありますが」


 「構わぬ。あのような雑魚、物の数にも入らぬ。吸血鬼ヴァンパイアも聞いた話ほどではないな」


 「戦ってみたところ若い吸血鬼ヴァンパイアのようで、まだいくさ慣れしていない様子でした。この次はこうはいきませんよ。LVの高い吸血鬼ヴァンパイアは、強力な魔法とともに魔法具も使いこなすといいますから」


 ケリーはそう語りながら、ウィン姫のドレスの汚れをハンカチで落としています。


 「誘拐状が届いてからというもの、ろくに狩りにもいけぬ。歯ごたえのある戦いができぬというのはストレスが溜まるものだな」


 「姫様と互角に渡り合える者など、他国を探してもそうはおりませんよ」


 「ヘルツォーク二世とやらも、私と一騎打ちをしに現れるほどの器量であれば、さらわれてやってもよいのだがな」


 「また姫様、ご冗談を」


 ケリーがそう言って微笑みます。


 だが、内心では、この姫であれば本気でそう考えているかもしれないとも思いました。


 強さに対する執着は並々ならぬものがあります。


 強さにのみ惹かれていると言っても過言ではありません。


 なにせウィン姫の戦好きは生来のもので、幼少より武術、魔術のエリート教育を受け、14歳にして「魔法剣士のマスター」の称号を得ているのです。


 しかも、戦闘に関しては天性のひらめきを持っています。


 これまでひとりで討ち取った魔獣、妖魔のたぐいは数知れず。


 ケリーもこの若さで「忍者のマスター」の称号を持っていますが、ウィン姫には到底、かないません。


 この国でウィン姫と互角の戦いができる者などいないのです。


 王が付けた護衛は、むしろ、姫の暴走を止めるための意味合いが強いのでした。


 

 城内からも、外壁からも、爆発音を聞きつけてたくさんの兵や騎士が集まってきました。


 「ケリー急ぐぞ、この隙に言い伝えの男を探すのだ」


 ウィン姫がドレスのままで走り出します。


 「お待ちください姫様!どうやって探すのですか?しかもこんな夜に。せめて夜が明けてからでも」


 「それでは遅い。国王ちちうえに、またあの部屋に閉じ込められるのがおちだ。夜が明けるまでに探すぞ。裸足の男だ。裸足の男を探せ」


 ケリーはため息を漏らしながらその後を追いました。説得は不可能だと悟ったのです。


 せめて外壁の外にだけは出さないようにせねば。


 ケリーはそう考えて走りました。



 夜が明けるまで、あと2時間ほどでした。



 そのとき、ちょうど、ホーリーとギーニハンズが外壁に辿り着いていたのです。


明日もまた午前3時に更新します。

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