第11章 「試作開始!五人で作る初めてのクッキー」
この作品は登場人物が全員モブです。必ずモブ顔で想像してください。
文化祭のメニューが
1日目:クッキー
2日目:カレー
に決まった翌日。
放課後の家庭科室には、五人の姿がそろっていた。
「じゃあ・・・今日はクッキーの試作をしましょう。」
真智がレシピノートを開きながら言う。
「うん・・・! 私、頑張る・・・!」
ひよりは、いつもより少しだけ声が大きかった。
自分の得意分野ということもあり、どこか誇らしげだ。
和馬も、控えめながらやる気に満ちていた。
「ぼ、僕・・・混ぜる作業、得意なので・・・手伝います・・・!」
悠斗は腕を組んだまま、にやりと笑う。
「まぁ、菓子作りは専門外だが・・・力仕事なら任せとけ。」
壮真は、そんな仲間たちを見て静かに微笑んだ。
(・・・いい雰囲気ですね)
材料を並べ、作業が始まる。
「まずはバターを柔らかくして・・・。」
真智が説明し、ひよりが丁寧にバターを練る。
「佐伯さん、手つきがとても慣れていますね。」
「う、うん・・・家でよく作ってたから・・・。」
和馬は砂糖を計量しながら、そっと言った。
「さ、佐伯さん・・・その、すごく上手です・・・。」
「えっ・・・あ、ありがとう・・・。」
二人のやり取りに、真智は微笑ましそうに目を細めた。
「ふふ・・・いいコンビだね。」
悠斗は粉をふるいながら言う。
「おい、田辺。俺は?」
「三浦さんは・・・力仕事担当、かな?」
「おいおい、それだけかよ。」
「ふふ・・・冗談だよ。頼りにしてるよ。」
悠斗は照れくさそうに鼻を鳴らした。
生地がまとまり、いよいよ成形の段階に入る。
「丸めて、軽く押して・・・このくらいの厚さがいいと思う。」
真智が見本を作ると、全員が真似をする。
「田辺さん、こうでしょうか?」
壮真が見せると、真智は嬉しそうに頷いた。
「うん、とても上手だよ、高杉くん。」
「ありがとうございます。」
そのやり取りを見ていたひよりは、ほんの少しだけ頬を赤くした。
(・・・田辺さんと高杉くんって、やっぱり仲良いな・・・)
和馬も、どこか複雑そうに二人を見ていた。
(・・・僕も、あんなふうに自然に話せたらいいのに)
悠斗はそんな二人の様子に気づき、心の中で苦笑した。
(・・・まぁ、青春ってやつだな)
オーブンに入れて数分後。
家庭科室に甘い香りが広がり始めた。
「・・・いい匂いですね。」
壮真が呟くと、真智も嬉しそうに頷いた。
「うん・・・クッキーの香りって、幸せになるよね。」
ひよりは胸の前で手をぎゅっと握った。
「うまく焼けてるといいな・・・。」
和馬もそわそわしている。
「ぼ、僕・・・緊張してきました・・・。」
悠斗は腕を組んだまま、にやりと笑った。
「まぁ、失敗してもまた作ればいいだろ。」
「うん・・・! そうだね・・・!」
そして――
オーブンのタイマーが鳴った。
「わぁ・・・!」
焼き上がったクッキーは、ほんのりきつね色で、形もきれいだった。
「すごい・・・! 佐伯さん、完璧じゃないですか。」
壮真が言うと、ひよりは顔を真っ赤にした。
「そ、そんな・・・みんなのおかげだよ・・・。」
真智は一枚手に取り、そっと割ってみた。
「サクッとしてる・・・!これなら、文化祭でも絶対喜ばれるよ。」
悠斗もひと口食べて、目を見開いた。
「・・・うまいな、これ。甘さもちょうどいいし、食感もいい。」
和馬は胸を押さえながら言った。
「ほ、本当に・・・美味しい・・・!僕・・・感動しました・・・!」
ひよりは涙が出そうなほど嬉しそうだった。
「みんなで作ったから・・・だよ・・・!」
試作が成功し、五人は自然と笑顔になった。
「これなら・・・1日目は大成功しそうですね。」
壮真が言うと、真智はそっと微笑んだ。
「うん・・・!2日目のカレーも、頑張らないとね。」
悠斗が腕を組んで言う。
「カレーは任せろ。田辺の味を再現してやるよ。」
「ふふ・・・ありがとう、三浦さん。」
和馬は控えめに手を挙げた。
「ぼ、僕・・・クッキーの仕込み、もっと練習します・・・!」
ひよりも力強く頷いた。
「うん・・・! 私も頑張る・・・!」
五人の影が、夕暮れの家庭科室に並んで伸びていく。
(・・・このメンバーなら、きっと成功しますね)
壮真は静かにそう思った。
こうして、“モブな僕ら”の青春は、初めての共同作業を成功させ、文化祭へ向けてさらに絆を深めていった。




