第80話 悪意の迷宮と、物理的ショートカット
【担当:キース】
脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?
開戦だ。
魔王領の中盤。
そこには、魔王城を守る天然の要害を利用した巨大地下迷宮、通称「嘆きの回廊」が広がっていた。
「……ふむ。湿度80%、酸素濃度やや低下。不快指数が高いな」
慎也は、松明の明かりが揺れる薄暗い通路で、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「リーダー、気をつけろよ。ここは罠だらけって噂だ」
ナイルが慎重に壁を探る。
その時。
カチッ。
ガルドが床のタイルを踏んだ音がした。
「あ」
「馬鹿者」
ガコンッ!!
床が抜け、巨大な落とし穴が口を開けた。底には鋭利な槍の山が見える。
「うわぁぁぁぁっ!?」
落下するガルドとミナ。
しかし、二人の体は空中でピタリと静止した。
「……重力加速度9.8m/s²。落下時間を計算するまでもない」
慎也が杖を振るい、風魔法で二人を吊り上げていた。
「この程度の『位置エネルギー活用型トラップ』に引っかかるとは。学習能力がないのか?」
「す、すまねぇリーダー……!」
一行は先へ進む。
次は、左右に無数の分かれ道がある巨大な迷路が現れた。
「うへぇ……どっちだ? 右か? 左か?」
ミナが頭を抱える。
壁には魔法がかかっており、空間が歪んでいるため、地図も役に立たない。
「……選択肢を選ぶ必要などない」
慎也は壁に手を当て、コンコンと叩いた。
「空間転移魔法によるループ構造か。……設計者の性格の悪さが透けて見える」
彼は聖剣を抜いた。
「最短距離とは、始点と終点を結ぶ直線だ。……道がないなら作ればいい」
ズドォォォォォン!!!
迷路の壁を、衝撃波で一直線に粉砕した。
「ええええっ!? 壁ぶち抜いた!?」
「ルール無視っスよリーダー!」
「黙れ。迷路の解析に時間を費やすのは非効率だ」
粉塵の中を突き進むキースライン一行。
そして最後に行き着いたのは、出口手前の広間。
入った瞬間、重い鉄扉が降り、閉じ込められた。
ゴゴゴゴゴ……!!
左右の壁が迫ってくる。「圧殺部屋」だ。
「や、やべぇ! 壁が迫ってくるぞ!」
「潰されるぅぅぅ!」
パニックになる仲間たち。
だが、慎也だけは迫り来る壁を涼しい顔で観察していた。
「……油圧式か? いや、魔力駆動のギア制御だな。
……あそこだ」
彼は壁の隅にある、小さな亀裂のような一点を見つけた。
そこへ、足元に落ちていた硬い石ころを、指でピンと弾いた。
カキンッ。
石が壁の隙間に挟まる。
ガガガ……ギギギ……ガゴンッ!!
凄まじい異音と共に、迫り来る壁が停止した。
巨大な力が一点に集中し、内部の歯車が噛み込んで自壊したのだ。
「……構造力学上の弱点(特異点)を突けば、どんな巨大なシステムも停止する」
慎也は動かなくなった壁を背に、出口の扉を蹴り破った。
「行くぞ。……こんな子供騙しのアトラクションで、私を止められると思ったか」
迷宮を「破壊」と「論理」で踏破した勇者一行。
背後には、機能不全に陥った哀れなダンジョンの残骸だけが残されていた。
【総統通達】
読者諸君。我だ。
あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。
まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。
良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。




