表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/78

第77話 参謀の機能停止と、王による緊急メンテナンス

【担当:慎也】

僕の日常がこれ以上壊れませんように……。

本編スタートです。





 2月上旬。


 その日、キースライン(慎也)の隣の席は空席だった。


「……チッ」


 彼は不機嫌そうに舌打ちをした。

 黒板の文字をノートに写す速度はいつも通りだが、その筆圧は明らかに強かった。


(天道花憐、欠席。……私の演算リソース(思考)が、無意識に彼女の不在理由を探っている。……非効率だ)

 放課後。

 彼は迷わず花憐の家へと向かった。


 幼馴染の特権で、合鍵(という名の「緊急アクセス権」)は持っている。

 インターホンを鳴らすと、中から花憐の母の声がした。


『あら、慎也くん? 花憐なら熱で寝込んでるのよ。……入ってやってくれる?』


 ***


 花憐の部屋。

 ピンク色のベッドの中で、彼女は顔を赤くして荒い息を吐いていた。


「……うぅ……頭いたい……」


 その弱り切った姿を見た瞬間、キースラインの眉間に皺が寄った。


「……ひどい有様だな」


 彼はベッドサイドに立つと、躊躇なく彼女の額に自分の手を当てた。


「熱い。……体温38.5度。思考能力低下。身体機能、セーフモードに移行中か」

「……あ、齋藤くん……?」


 花憐がうっすらと目を開ける。


「ごめんね……私、風邪ひいちゃって……」

「謝罪は不要だ。……エネルギーの無駄だ」


 キースラインは上着を脱ぎ、腕まくりをした。


「これより、緊急メンテナンス(看病)を開始する」


 ***


 数十分後。


 キッチンからいい匂いが漂ってきた。

 キースラインが運んできたのは、湯気を立てる卵粥と、擦りおろしたリンゴ。


「起きられるか?」

「うん……」


 花憐が体を起こそうとするが、ふらつく。

 キースラインは無言で彼女の背中にクッションを挟み、支えた。


「口を開けろ」


 彼はスプーンでお粥を掬い、ふーふーと息を吹きかけて冷ます。

 その動作は、実験器具を扱うように慎重で、かつ丁寧だった。


「……あーん」


 花憐が恥ずかしそうに口を開ける。

 パクッ。


「……おいしい……」

「当然だ。消化吸収効率を最大化するため、米のアルファ化(糊化)を完璧に制御した。塩分濃度も発汗量に合わせて調整済みだ」


 理屈っぽい説明だが、その味は優しさそのものだった。


 食後、薬を飲ませ、冷却シートを新しいものに交換する。

 手際の良い「メンテナンス」のおかげで、花憐の顔色は少し良くなっていた。


「……ありがとう、齋藤くん」


 ベッドに横になった花憐が、潤んだ瞳で彼を見上げる。


「……うつっちゃうよ? 帰らなくていいの?」

「愚問だ」


 キースラインは、椅子を引き寄せてベッドの横に座った。


「私の免疫システムは鉄壁だ。ウイルスごときに侵入は許さん」


 彼は、布団から出ていた花憐の手を、そっと握った。


「それに……マスターが不調の時に、側を離れる従者サーバントなどいない」

「……ふふ。齋藤くんは『王様』じゃなかったの?」

「……今は、貴様の専属医ドクターだ」


 花憐は嬉しそうに微笑み、握られた手をギュッと握り返した。


「……手、冷たくて気持ちいい……」

「熱が下がるまで、このままだ」


 安心感からか、花憐の呼吸が深くなり、やがてスースーと寝息を立て始めた。

 キースラインは、その寝顔をじっと見つめ続けた。


(……早く治せ、花憐)

 彼は心の中で呟く。


(貴様がいないと、世界(日常)の色度が著しく低下する。……調子が狂うのだ)

 最強の勇者も、風邪のウイルスと、恋人の不在には勝てないようだった。


 彼は花憐が完全に回復するまで、その手を離そうとはしなかった。


【事後分析報告】

読んでくれてありがとうございます。慎也です。

また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?


今後のデータの参考にするため、よろしければ「ブックマーク」と、下にある【★★★★★】で評価を入力していただけると助かります。


皆さんの応援エネルギーが、僕たちの生存確率を上げます。よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ