第70話 堕ちた聖域と、真なる王の凱旋
【担当:キース】
脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?
開戦だ。
王城、謁見の間。
この日、ソフィア王女の招集により、全貴族と教会の枢機卿、そして偽勇者レオンが集められていた。
「……何の用だ、小娘」
枢機卿は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「我々は忙しいのだ。魔王軍の脅威が……」
「ええ、その『魔王軍』との関係について、お話ししましょうか」
玉座の前に立ったソフィアは、扇子を閉じ、冷徹な瞳で枢機卿を見下ろした。
彼女の手には、一冊の分厚い革表紙の本が握られている。
「……なっ!?」
枢機卿の顔色が土気色に変わった。
見覚えがある。あの夜、金庫から消えた「裏帳簿」だ。
「これには、教会の驚くべき『慈善事業』の記録が記されていますね」
ソフィアは帳簿を広げ、朗々と読み上げた。
「『魔王軍への武器横流しによる利益、金貨50万枚』。『偽聖水の売上、金貨20万枚』。……そして、『前勇者キースライン暗殺計画への出資』」
ざわ……っ!!
貴族たちがどよめく。
枢機卿は震えながら叫んだ。
「で、出鱈目だ! 捏造だ! そんな帳簿、証拠にならん!」
「往生際が悪いですね」
ソフィアはパチン、と指を鳴らした。
「証拠なら、もう一つあります。……いえ、証拠というよりは『証人』ですね」
ギギギギ……。
謁見の間の巨大な扉が、重々しい音を立てて開いた。
逆光の中、5つの影が長く伸びる。
先頭を歩くのは、漆黒のマントを翻した男。
その隣には、純白のローブを纏った聖女。
そして、屈強な戦士、身軽な盗賊、武闘家の少女。
「……まさか……」
レオンが腰を抜かして尻餅をつく。
「う、嘘だ……死んだはずだ……!」
男は、枢機卿の目の前まで歩み寄ると、静かに足を止めた。
そして、嘲るように眼鏡を押し上げた。
「……久しぶりだな、枢機卿。
私の葬式(国葬)は盛大だったようだが……香典の計算が合わんぞ?」
「キ、キースライン……ッ!!」
その瞬間、貴族たちから悲鳴と歓声が入り混じった叫びが上がった。
本物だ。
あの傲慢で、冷徹で、しかし誰よりも頼もしかった最強の勇者が、地獄の淵から帰ってきたのだ。
「馬鹿な! 貴様は死んだ! 亡霊だ!」
枢機卿が喚き散らす。
「亡霊? ……ふん、あながち間違いではない」
慎也は、隣のエリスの肩を抱き寄せた。
「我々は一度死に、そして蘇った。……貴様らが腐敗させたこの国を、物理的に『洗濯』するためにな」
ソフィア王女が高らかに宣言する。
「聞け、皆の者!
教会の悪事を暴き、影から民を守り続けていたのは、このキースライン一行である!
彼らこそが、真の勇者! 王国の守護者である!」
わぁぁぁぁぁっ!!
城外に詰めかけていた民衆にも、魔法の拡声器でその声が届く。
広場は爆発的な歓喜に包まれた。
「キースライン様! エリス様!」
「やっぱり生きていてくださった!」
「俺たちの英雄だ!」
その熱狂の中、慎也は冷ややかに枢機卿を見下ろした。
「……チェックメイトだ。
貴様の資産、権威、そして命運……全て計算通りに『焼却処分』完了した」
「あ、あぁ……」
枢機卿はその場に崩れ落ち、衛兵に拘束された。
レオンもまた、泣きながら連行されていく。
玉座の間。
喝采を浴びる5人の英雄たち。
エリスは感極まって涙を流し、慎也の腕に顔を埋めた。
「……良かった……やっと、光の下に戻れましたね……」
「……ああ」
慎也は、彼女の頭を優しく撫でた。
「だが、これはゴールではない。……復興という名の『残業』の始まりだ」
憎まれ口を叩きながらも、その表情は晴れやかだった。
勇者キースライン、ここに完全復活。
その凱旋は、王国の新たな歴史の幕開けとなった。
【総統通達】
読者諸君。我だ。
あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。
まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。
良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。




