第64話 王女の演繹推理、および深夜の密約
【担当:キース】
脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?
開戦だ。
王城の奥にある執務室。
深夜、蝋燭の灯りだけで書類を読み耽る女性がいた。
この国の第一王女、ソフィアである。
「……教会の報告書は『魔王軍の幻術』。民衆の噂は『黒い影の英雄』。……そして、裏帳簿から消えた莫大な資金」
ソフィアは眼鏡を指で押し上げ、冷ややかに呟いた。
彼女は、ただのお飾りではない。教会の監視をかいくぐり、独自の情報網を持つ知略家だ。
「矛盾だらけね。……枢機卿は焦っている。偽勇者レオンの失態を隠すために」
彼女は一枚の地図にピンを刺した。
「影」が現れた場所と、かつてキースラインが好んで使っていた補給路が、完全に一致している。
「……死体が上がっていない以上、生存確率はゼロではない。……いえ、この手際の良さ、合理的な『損害排除』の痕跡……」
ソフィアはふっと笑った。
「生きてるわね。あの『ケチで傲慢な男』が」
その時。
バルコニーの窓が、音もなく開いた。
「……ご明察です、殿下」
夜風と共に現れたのは、漆黒のローブを纏った影――慎也だった。
警備兵にも、魔法探知にも引っかからず、幽霊のようにそこに立っていた。
「あら。噂の『死神』が、レディの寝室に不法侵入?」
ソフィアは動じなかった。むしろ、待ち人が来たと言わんばかりにワイングラスを二つ用意した。
「……久しぶりね、キースライン。少し雰囲気変わった?」
「地獄(日本)を見てきたものでね」
慎也はフードを外し、不敵に笑った。
「単刀直入に言おう。……我々と手を組みませんか? 王家の復権をお手伝いしますよ」
「条件は?」
「教会の解体。そして、枢機卿が溜め込んだ裏金の『正当な分配』」
ソフィアはグラスを回し、慎也の瞳を覗き込んだ。
そこにあるのは、かつての力任せな勇者の目ではない。冷徹で、全てを計算し尽くした策士の目だ。
(……面白い。前の彼より、ずっと話が通じそうだわ)
「いいわ。どのみち、あの枢機卿には我慢の限界だったの。……レオンとかいう愚か者にもね」
ソフィアはグラスを差し出した。
「貴方の生存は、私が隠蔽してあげる。その代わり、徹底的にやりなさい。……教会の権威を、根底から腐らせて」
「御意」
慎也はグラスを軽く合わせ、一口だけ含んだ。
「契約成立だ。……では、手始めに明日の『定例報告会』で、枢機卿に揺さぶりをかけていただけますか?」
「ええ。任せて。……あいつが青ざめる顔を見るのが楽しみだわ」
深夜の密約。
「最強の実行部隊」と「最高の政治的後ろ盾(王女)」が手を組んだ瞬間だった。
翌日。
王城での会議で、ソフィア王女は枢機卿に対し、冷ややかな笑顔でこう切り出した。
「枢機卿? 最近、街では『影の英雄』の噂が絶えませんね。……まさかとは思いますが、教会は民衆に何か『隠し事』をしていませんよね?」
「なっ……!?」
枢機卿の顔が引きつる。
王家はもう、沈黙していない。
その背後に、死んだはずの死神の影が忍び寄っていることに、彼はまだ気づいていなかった。
【総統通達】
読者諸君。我だ。
あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。
まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。
良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。




