第62話 異端認定の愚策、地下に潜る信仰
【担当:キース】
脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?
開戦だ。
王都の大聖堂。
枢機卿は、各地から届く報告書を机に叩きつけていた。
「『見えざる死神』だと!? 『黒い風が魔物を屠った』だと!?
馬鹿な! キースラインは死んだのだ! そんな幽霊ごときが実在してたまるか!」
横のソファでは、偽勇者レオンがワインを煽りながら震えていた。
「そ、そうだよな猊下! 俺が逃げた……じゃなくて、戦略的撤退をした後に、誰かが勝手に戦場を荒らしただけだ!
きっと魔王軍の内輪揉めか、幻覚に決まってる!」
「……左様。勇者は貴公一人。そうでなくては寄付金が集まらん」
枢機卿は冷酷な目で、側近の神官に命じた。
「布告を出せ。
『各地で噂されている謎の影は、魔王軍が民衆を惑わすための幻術である』と。
そして、『影』を称える者は魔王崇拝者と見なし、異端審問にかけるとな」
***
翌日。
王都の掲示板には、教会の新しい布告が貼り出された。
【警告:『見えざる影』は悪魔の罠なり。惑わされることなかれ。祈りを捧げるべきは教会と勇者レオンのみである】
それを読んだ民衆たちは、口々に囁き合った。
「……嘘だ。俺は見たぞ。あの影が子供を助けてくれるのを」
「私もよ。レオン様が逃げた後に、名も告げずに去っていったわ」
「教会は……自分たちのメンツのために、真実を隠そうとしているのか?」
恐怖による支配。
だが、それは逆効果だった。
公に語ることが禁じられたことで、人々の想いは地下へと潜り、より熱狂的な「隠れ信仰」へと変わっていったのだ。
***
その夜。とある酒場の地下室。
慎也たちは、その「布告」の写しを囲んでいた。
「……あーあ。教会もバカっスねぇ」
ナイルが呆れて笑う。
「『いません』って断言しちゃった後に、また俺たちが暴れたらどうするつもりなんスか?」
「自らの首を絞めるだけですね」
エリスが冷ややかに紅茶を飲む。
「存在しないはずの者が民を救い続ければ、教会の言葉はすべて『嘘』になります」
「……計算通りだ」
慎也は、布告文を蝋燭の火で燃やした。
揺らめく炎が、彼の眼鏡の奥の瞳を照らす。
「人間心理の逆説だ。『見るな』と言われれば見たくなる。『信じるな』と言われれば信じたくなる。
枢機卿は、我々を『異端』に認定することで、皮肉にも我々を『体制に抗う真の英雄』へと昇華させてしまった」
慎也は立ち上がった。
「さあ、次の街へ行くぞ。
教会が否定すればするほど、我々の行動は『奇跡』として語り継がれる。
……信仰のパラダイムシフト(価値転換)を起こす時だ」
その夜も、どこかの街で魔物が討伐された。
教会は「あれは幻だ」と言い張ったが、助けられた人々は知っていた。
その温かい「影」こそが、真実であることを。
こうして、表向きはレオンを讃えつつ、裏では「黒い影」に祈りを捧げるという、奇妙な二重信仰が国中に広まり始めた。
【総統通達】
読者諸君。我だ。
あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。
まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。
良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。




