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第57話 新学期の包囲網と、専属参謀の特権

【担当:慎也】

僕の日常がこれ以上壊れませんように……。

本編スタートです。


 9月1日。始業式。

 夏休みが明け、久しぶりに登校した生徒たちは、ある異変にざわついていた。


「おい、あれ齋藤か?」

「嘘だろ? なんか……すげー精悍になってないか?」

「雰囲気イケメンっていうか、オーラがヤバいんだけど」


 廊下を歩くキースライン。

 日焼けした肌、制服の上からでも分かる引き締まった体躯、そして鋭い眼光。


 かつての「もやしっ子」の面影は消え失せ、そこには「歴戦の戦士」の風格が漂っていた。


 そして、昼休み。

 花憐がいつものようにお弁当を持って生徒会室へ向かおうとした時、事件は起きた。


「ちょっと待った、齋藤先輩!」

「齋藤くん、少しいいかしら?」


 二人の女子生徒が、キースラインの行く手を遮ったのだ。


 一人は、ショートカットの健康的な美少女。陸上部のエース、速水はやみラン。


「先輩! 夏の間のトレーニング、見てました! あの筋肉のキレ、只者じゃないっすよね!?

 お願いです、アタシと付き合ってください! ……ていうか、その肉体の作り方、マンツーマンで指導してください!」


 もう一人は、眼鏡をかけた理知的な美女。科学部部長、氷室ひむろサエ。


「お断りよ、ランさん。彼の価値は筋肉じゃないわ。その『脳』よ。

 齋藤くん、貴方の偏差値上昇率は異常値を示しているわ。興味深い……。

 私と交際(実験)しましょう? 貴方の思考回路、私が全て解明してあげる」


 「肉体派」と「頭脳派」。

 校内でも有名な二人の美少女からの、同時告白(?)。


「えっ、ええっ!?」


 後ろで見ていた花憐は、お弁当箱を取り落としそうになった。


(ど、どうしよう……! 二人とも可愛いし、スタイルいいし……!)

 花憐はパニックに陥った。

 自分はただの幼馴染で、副会長。……「彼女」ではない。

 もし齋藤くんが、「強い子が好き」とか「頭のいい子が好き」とか言い出したら……?


「……ふむ」


 キースラインは、二人の美少女を交互に見た。

 そして、無慈悲に言い放った。


「却下だ。 貴様らに割くリソース(時間)はない」

「えーっ!? なんでですか! アタシじゃ不足っすか!?」

「合理的じゃないわね。私なら貴方の学習効率を最大化できるのに」


 食い下がる二人に、キースラインはため息をつき、背後の花憐を手招きした。


「おい、参謀。こっちへ来い」

「え、あ、はいっ!」


 花憐がおずおずと進み出る。

 キースラインは当然のように花憐の腰に手を回し(※あくまで確保のため)、二人の前に突き出した。


「見ろ。私の隣には、既に『最適解』が存在している」

「え……?」


 時が止まる。

 花憐の顔がボンッ! と音を立てて真っ赤になった。


「彼女は私の思考(作戦)を99%の精度で理解し、補佐できる唯一の人材だ。

 さらに、栄養管理(弁当)、精神安定メンタルケア、その他全ての業務において、彼女以上のスペックを持つ者は存在しない」


 キースラインは傲然と言い放った。


「よって、貴様らの入り込む隙間スロットはない。……失せろ」

「……っ!」


 圧倒的な「パートナー宣言」。

 ランとサエは顔を見合わせ、すごすごと引き下がった。


「ちぇーっ、完敗っすね……」

「……愛妻家なのね。データ修正が必要だわ」


 廊下に残された二人。

 静寂の中、花憐は震えながらキースラインを見上げた。


「さ、齋藤くん……今の……」

「事実を述べたまでだ。……行くぞ、花憐。腹が減った」


 キースラインはスタスタと生徒会室へ歩き出す。


「も、もう……! バカ! 大好き!」


 花憐は涙目で、彼の広い背中に飛びついた。

 新学期の防衛戦は、キースラインの「独占契約」宣言により、花憐の圧勝で幕を閉じた。


 だが、ライバルたちの視線はまだ熱い。

 文化祭に向け、波乱の予感は消えてはいなかった。


【事後分析報告】

読んでくれてありがとうございます。慎也です。

また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?


今後のデータの参考にするため、よろしければ「ブックマーク」と、下にある【★★★★★】で評価を入力していただけると助かります。


皆さんの応援エネルギーが、僕たちの生存確率を上げます。よろしくお願いします。


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