第56話 破壊の代償と、請求書の桁数
【担当:キース】
脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?
開戦だ。
「はっはー! 見ろ、この圧倒的な火力を!」
ドォォォォン!!
爆音と共に、宿場町のメインストリートが火の海に包まれた。
現れたのは、中級魔族の「オーガ・ロード」。
それを討伐するために派遣された新勇者レオンは、あろうことか街中で広範囲攻撃魔法を放ったのだ。
「ギャァァァッ!」
オーガ・ロードは黒焦げになり、断末魔を上げて倒れた。
だが、それと同時に、周囲の民家や商店も吹き飛び、瓦礫の山と化していた。
「……やった……のか?」
瓦礫の陰から、煤だらけになった住民たちが顔を出す。
魔物は倒された。
しかし、彼らの家も、店も、家財道具も、すべて灰になっていた。
「おい、村長!」
レオンが剣を鞘に納め、髪をかき上げながら歩いてくる。
「見たか俺の勇姿! あのデカブツを一撃だぜ? 感謝してくれよな!」
村長と呼ばれた老人が、震える手で杖をつきながら進み出た。
「ゆ、勇者様……魔物を倒していただいたのは感謝いたしますが……これでは、住む家が……」
「あぁ? 細かいことは気にするなよ」
レオンは悪びれもせず鼻で笑った。
「命があっただけマシだろ? 家なんてまた建てりゃいい」
そして、彼は懐から羊皮紙を取り出し、村長の顔に押し付けた。
「ほら、今回の『討伐報酬』だ。……危険手当込みで、金貨100枚な」
「ひゃ、100枚!?」
村長が悲鳴を上げた。
「そ、そんな大金、この貧しい村にはありません! それに、この復興費用も必要で……」
「チッ、しけた村だな」
レオンが舌打ちをした。その目は冷酷だった。
「払えないなら、教会の『強制徴収権』を行使するぞ? 家財道具、家畜、あるいは……若い女でもいいぜ?」
「そ、そんな……!」
村の人々が絶望に膝をつく。
これは救済ではない。略奪だ。
その時、誰かがポツリと漏らした。
「……キースライン様なら……」
「あ?」
レオンが眉をひそめる。
「キースライン様なら……こんなことはなさらなかった!」
一人の青年が叫んだ。
「あのお方は、『市街地での戦闘は経済的損失が大きい』と言って、必ず魔物を街の外へ誘き出してから戦った! 建物一つ傷つけず、最小限の魔力で急所を貫いた! 報酬だって、村の財政を見て『適正価格』しか受け取らなかった!」
「……死んだ奴の話をするなと言ったはずだぞ?」
レオンが青年の胸ぐらを掴み上げる。
「あいつは死んだ! 今の勇者は俺だ! 文句があるなら魔王軍のスパイとして処刑するぞ!?」
暴力による支配。
民衆は口をつぐむしかなかった。
だが、その瞳に宿る光は、「恐怖」から明確な「殺意(反逆の意思)」へと変わっていた。
***
その様子を、崩れ落ちた鐘楼の影から見ている5つの影があった。
「死んだはずの」キースライン一行だ。
「……ひどいありさまですね」
エリスが悲痛な顔で焼けた街を見下ろす。
「守るべき民を脅して、何が勇者ですか」
「全くだ。……あいつの戦闘データ、解析完了したぞ」
慎也は、冷ややかに瓦礫の山を見つめた。
「魔力効率、最悪。周囲への被害予測、ゼロ。……ただの『破壊兵器』だな」
「どうするリーダー? 今すぐボコりに行くか?」
ガルドが斧を鳴らす。
慎也は首を横に振った。
「まだです。……今出れば、ただの『勇者同士の喧嘩』になる」
慎也は、レオンに怯える民衆の目を見た。
「民衆が心の底から『助けてくれ』と願い、教会への不信感が頂点に達した時こそ、我々の出番だ。……その時、レオンには『勇者』ではなく『魔王軍以上の災厄』として退場してもらう」
「……性格悪っ!」
ナイルが笑う。
「でも、それが一番効果的っスね」
レオンが去った後、村には再建の槌音が響くことはなかった。
あるのは、教会と新勇者への、静かで重い呪詛の声だけだった。
【総統通達】
読者諸君。我だ。
あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。
まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。
良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。




