表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/78

第52話 国葬の地下、物理と技術の合奏(アンサンブル)

【担当:キース】

脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?

開戦だ。


 地上からは、重厚なパイプオルガンの音と、数千人の参列者による聖歌が響いてくる。

 大聖堂で行われている、勇者キースラインの国葬だ。


「……あいつら、いい声で歌うじゃねぇか。俺たちの葬式だってのによ」


 地下通路。ガルドが天井を見上げて皮肉っぽく笑う。


「静かに。……ここからは俺の独壇場っスよ」


 先頭を進むのは、盗賊シーフのナイル。

 彼は通路に仕掛けられた「侵入者感知の魔法陣」や「毒矢のトラップ」を、次々と解除していく。


「……へへっ。前の俺なら見落としてたかもだけど、リーダー(慎也)の『観察眼』を真似てからは、空気の流れで罠が分かるようになったっス」


 やがて一行は、最奥の巨大な鉄扉の前に辿り着いた。

 枢機卿の隠し金庫だ。

 扉には複雑な魔法陣と、物理的なダイヤル錠が何重にも施されている。


「……ここっス。俺が前にお手上げだったのは」


 ナイルが悔しそうに扉を撫でた。


「魔力でロックされてる上に、内部のシリンダーが常に変化してる。……ピッキングじゃ追いつかないんスよ」

「なるほど。ランダム変動式の魔導錠か」


 慎也は眼鏡ないけどを押し上げ、扉に耳を当てた。


「ナイル。君の指先の感覚は世界一だ。……だが、見えない内部構造を予測するのは困難だ。そこで僕が『目』になる」

「目?」

「ガルド、壁を叩いてくれ。……一定のリズムで」


 慎也の指示で、ガルドがコンコン、と壁を叩く。

 慎也はその反響音エコーを聞き取り、脳内で扉の内部構造を3Dマッピングした。


「……見えた。変速ギアが3つ。右に45度、左に120度、そして奥のピンが魔力に反応して回転している」


 慎也はナイルの耳元で囁いた。


「僕がタイミングを言う。君はその瞬間に、針を通す精度で解錠してくれ。……いけるか?」

「……へっ、愚問っスね」


 ナイルはニヤリと笑い、愛用の解錠ツールを鍵穴に差し込んだ。

 額に汗が滲む。

 地上の聖歌がクライマックスに差し掛かり、音が大きくなる。


「――今だ、右45!」


 カチッ。ナイルの手が動く。


「待て……まだだ……今! 左120!」


 カチッ。


「最後だ。魔力パルスと同調しろ……ゼロ秒地点で、押し込め!」


 カァァァァン!!

 重い金属音が響き、巨大な鉄扉がゆっくりと開いた。


「……開いた……!」


 ミナが息を呑む。

 中には、山積みになった金貨の袋、宝石、そして棚に整然と並べられた「裏帳簿」と「契約書」の束があった。


「大漁っスね……!」


 ナイルがガッツポーズをする。


「ナイル、見事な腕だ。……僕の計算(理論)も、君の指先(実装)がなければ机上の空論だった」

「リーダーこそ! まるで中が見えてるみたいで鳥肌が立ったっスよ!」


 互いの健闘を称え合う二人。

 慎也は指示を出した。


「さあ、仕事にかかりましょう。……すべて回収です」


 ガルドとミナが袋に詰め込んでいく。

 慎也は書類の束を確認し、冷ややかに笑った。


「……ほう。魔王軍への横流しリストに、孤児院への寄付金の着服記録か。……猊下、これは言い逃れできませんね」


 数分後。

 金庫の中は空っぽになった。

 慎也たちは何も残さず、指紋一つ残さず撤収した。


 ***


 数時間後。国葬を終え、涙を拭う演技をして執務室に戻った枢機卿は、念のため金庫を確認しに来た。

 そして、絶叫した。


「な、な、な……無い!? 金が! 書類が!?」


 金庫は無傷。鍵も閉まっていた。

 なのに中身だけが消失している。


「だ、誰だ!? 魔王軍か!? それとも部下の裏切りか!?」


 犯人の痕跡はゼロ。

 「死んだ勇者」の仕業だとは夢にも思わない枢機卿は、見えない疑心暗鬼の闇に突き落とされ、その場で泡を吹いて倒れた。


 完全犯罪ミッション・コンプリート

 勇者たちは幽霊となり、鮮やかに最初の復讐を遂げたのである。


【総統通達】

読者諸君。我だ。

あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。


まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。


良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ