第45話 黄金週間の執務合宿と、宰相の才覚
【担当:慎也】
僕の日常がこれ以上壊れませんように……。
本編スタートです。
5月上旬、ゴールデンウィーク。
世間が連休に浮かれる中、私立**高校の生徒会執行部は、避暑地にある天道家の別荘にいた。
名目は「生徒会執行部強化合宿」。
「――これより、第一回『帝国議会(予算編成会議)』を執り行う」
豪華なシャンデリアの下、重厚なマホガニーのテーブルの長に座ったキースラインが宣言した。
その横には副会長の天道花憐。
下座には、会計と書記(一般生徒)が緊張した面持ちで座っている。
「各部活動からの予算申請書だ。……読み上げろ」
「は、はい! まず剣道部より、防具の修繕費として5万円の増額申請です!」
会計の男子が震える声で報告する。
「……剣道部か」
キースラインは目を閉じ、即決した。
「承認する。……彼らは我が校の近接歩兵戦力の中核だ。装備の劣化は兵士の死に直結する。むしろ10万出して、竹刀をカーボン製にアップグレードさせろ」
「えっ、倍額!? い、いいんですか?」
「構わん。その代わり、次回の地区大会(防衛戦)での戦果を約束させろ」
「つ、次は……茶道部より、和菓子の購入費および茶葉のランクアップ申請です」
「却下だ」
キースラインは冷酷に切り捨てた。
「茶道部は先日の文化祭での集客率が低かった。兵站(予算)は成果に比例して分配されるべきだ。まずは既存の物資で結果を出せと伝えろ」
次々とさばかれていく案件。
その判断基準は「教育的配慮」ではなく、完全に「軍事的有用性」と「費用対効果」だった。
だが、その即断即決ぶりは、優柔不断な前生徒会とは比べ物にならないほど効率的だった。
休憩時間。
テラスで紅茶を飲みながら、キースラインは庭園を眺めていた。
「……悪くない指揮所だ。天道家、見事な領地を持っているな」
「気に入ってくれた? 齋藤くん」
花憐が砂糖壺を持って隣に座る。
「うむ。静寂とセキュリティが確保されている。……ところで参謀、例の件はどうなった?」
「『校則改正案』のことね?」
花憐は分厚いファイルを差し出した。
「齋藤くんの要望通り、曖昧だった部分を明文化しておいたわ」
キースラインはページをめくった。
【改正案:第8条 遅刻に関する罰則】
旧:反省文の提出
新:校庭10周のランニング(基礎体力の向上および遅延による損害の体感)
【改正案:第12条 服装規定】
旧:風紀を乱さない服装
新:戦闘(授業)に支障をきたさない機能的な服装。ただし、防具(サポーター等)の着用は推奨する
「……完璧だ」
キースラインはニヤリと笑った。
「よく私の意図を言語化した。さすがは俺の副官だ」
「ふふ、これくらいお安い御用よ。……それに、齋藤くんの作る『強い学園』、私嫌いじゃないし」
二人が見つめ合い、優雅に紅茶を飲む。
その様子を、遠くから別荘の管理人(花憐の実家の使用人)が見ていた。
「……お嬢様があんなに楽しそうに仕事をしておられる」
「あの少年、只者ではありませんな。まるで若き日の旦那様(当主)を見ているようだ」
「次期当主候補……ということでしょうか?」
「間違いないでしょう。この合宿は、事実上の『お世継ぎ教育』ですぞ」
使用人たちの間で、キースラインの評価が勝手に「未来の旦那様」で固定されていく。
夜。
すべての議題を片付けたキースラインは、疲れも見せず、満足げに書類の山を見下ろしていた。
「終わったな。……これで新学期の統治基盤は固まった」
「お疲れ様、会長」
花憐が悪戯っぽく呼びかけると、キースラインはふっと笑った。
「貴様もな、副会長。……この国の頂点(総理)への道はまだ遠いが、まずはこの学園を日本一の『精鋭部隊』に育て上げるぞ」
「はい! どこまでもついていきます!」
ゴールデンウィークの夜空の下、若き独裁者と才色兼備の参謀は、学園の未来(と二人の将来)について熱く語り合った。
新学期明け、生徒たちが「校則が厳しくなったけど、学食が美味くなった」と戸惑いながらもキースラインを支持するのは、もう少し先の話である。
【事後分析報告】
読んでくれてありがとうございます。慎也です。
また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?
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