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第42話 魔王の演算、勇者の追放

【担当:キース】

脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?

開戦だ。



 四天王最強のグランツを倒し、一行はついに魔王城の最上階、玉座の間へと足を踏み入れた。


 重厚な扉を開くと、そこには広大な闇が広がっていた。

 その最奥に、一人の存在が玉座に肘をついて座っている。


「……遅かったな、勇者一行」


 響いてきたのは、男女の区別がつかない、しかし絶対的な威厳を含んだ声だった。


 魔王ゼノン。

 漆黒のローブを纏い、その顔は深い影に隠れて見えない。


「貴様が魔王か」


 慎也は聖剣を構え、即座に「解析」を開始した。


(……身長180前後。質量反応……不明? 重力場が歪んでいる? 数値化できない……!)

 慎也の物理アイを持ってしても、魔王の周囲の空間はノイズが走ったように読み取れない。ブラックホールのように、光や情報を吸い込んでいるようだ。


「……ほう」


 ゼノンがわずかに身を乗り出した。


「以前のキースラインとは、随分と『色』が変わったな。……殺気が消え、代わりに奇妙な『ことわり』を纏っている」

「お喋りは終わりだ!」


 ガルドが先陣を切って飛び出した。


「オラァァァ!!」


 渾身の斧の一撃。だが、玉座の数メートル手前で、斧がピタリと空中で静止した。


「なっ!?」

「……騒々しい」


 ゼノンが指を一本動かしただけで、ガルドは弾き飛ばされ、壁に激突した。

 物理的な障壁ではない。空間そのものが拒絶したような動きだ。


「ガルドさん!」


 エリスが回復魔法を構えるが、ゼノンの視線だけで体が動かなくなる。


「聖女か。……貴様の祈りなど、ここでは小鳥の囀りにも劣る」


 慎也は冷や汗を流した。

 強い。次元が違う。

 だが、ここで退くわけにはいかない。


「……行きます」


 慎也は地面を蹴った。

 物理演算フル稼働。空間の歪みを「摩擦ゼロの流体」と仮定し、その隙間を縫うような超高速機動。

 一瞬で魔王の懐に入り込み、聖剣を突き出す。


 「慣性制御・神速突き!」


 シュッ!

 切っ先がゼノンのローブを掠め、頬に薄い傷をつけた。

 


「……!」


 ゼノンが目を見開いた。

 傷ついた頬から、紫色の血が一滴、流れ落ちる。


「……面白い」


 魔王は、傷ついた頬を指で拭った。

 その瞳が、爬虫類のように細まり、慎也を凝視した。


(魔法ではない。気功でもない。……この世界の法則とは異なる、別の『ルール』で動いている?)

 魔王の脳内で、瞬時に億単位の計算が走った。


 未知数。データ不足。

 このまま戦えば勝てるだろうが、この異質な力を完全に理解しないまま殺すのは惜しい。いや、危険だ。


「……興が削がれた」


 ゼノンはふいに立ち上がり、あくびをするように手を振った。


「貴様らごとき、我が直接手を下すまでもない」

「なっ……逃げる気か!?」


 慎也が追撃しようとするが、足元の床が突如として光り輝いた。

 魔法陣だ。しかし、攻撃魔法ではない。


「世界の果てで、もう少し足掻いてみせよ。……その『奇妙な力』の底、見極めさせてもらうぞ」


 表向きは傲慢な追放宣告。

 だが、その瞳の奥には、研究者が未知のサンプルを見るような、冷徹な観察眼が光っていた。


 「次元転移ディメンション・バニッシュ


 カッッッ!!!

 視界が真っ白に染まる。


「しまっ――」


 慎也の思考が途切れる。

 抵抗する間もなく、三人の体は光の中に吸い込まれ、玉座の間から消失した。


 ***


 静寂が戻った玉座の間。

 魔王ゼノンは、再び玉座に深く腰掛けた。

 彼は、頬の傷を治癒魔法で塞ぐことなく、愛おしそうに撫でた。


「……物理、と言ったか。あの世界の理ではないな」


 ゼノンは空中に指で複雑な数式(魔術式)を描き始めた。


「解析が必要だ。奴を泳がせ、その戦い方を全てデータ化する。……フフ、退屈しのぎにはなりそうだ」


 勇者一行は、魔王城というゴール目前で、盤面から弾き出されてしまった。

 彼らが飛ばされた先は、地図にも載っていない極寒の地か、灼熱の砂漠か、あるいは――。


【総統通達】

読者諸君。我だ。

あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。


まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。


良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。


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