表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/43

第33話 白銀の機動演習と、氷雪の幻影

【担当:慎也】

僕の日常がこれ以上壊れませんように……。

本編スタートです。



 冬休みも残りわずか。

 キースラインと天道花憐は、スキーリゾートに来ていた。

 もちろん、宿題は初日で殲滅済みである。


「見て、齋藤くん! 一面の銀世界よ!」


 カラフルなウェアに身を包んだ花憐がはしゃぐ。


「うむ。視界不良かつ足場は不安定。……だが見晴らしはいい。敵の接近を察知しやすい地形だ」


 キースラインは純白のウェア(迷彩のつもり)で、鋭い眼光を放っていた。彼にとってスキーとは、「雪上高速機動訓練」以外の何物でもない。


 リフトで山頂へ。

 そこから二人は滑り出した。


「わぁっ! 齋藤くん、速い!?」


 花憐が驚くのも無理はない。

 キースラインは直滑降チョカリで、弾丸のように斜面を駆け抜けていく。


 体重移動とエッジの角度を完璧に制御し、空気抵抗を最小限にする姿勢。それはオリンピック選手も裸足で逃げ出すレベルの機動だった。


「遅いぞ、参謀! 雪上での遅れは死に直結する!」

「待ってよぉ~! デートなんだからゆっくり滑ろうよぉ!」


 ***


 夕暮れ時。

 天候が急変し、吹雪いてきた。

 コースアウトしたわけではないが、視界が悪くなり、周囲に他の客の姿はない。


「さ、寒い……。急に気温が下がったみたい」


 花憐が震えだす。

 キースラインは眉をひそめた。


(……不自然だ。ただの気象変化ではない。この冷気……魔力を帯びている?)

 ふと、脳内に神の声が響く。

 ――『あーあ。あんた、またやっちゃったわね』


(神か。何の話だ?)

 ――『この山には昔から「雪女」の伝承があるのよ。客たちの「遭難したらどうしよう」「怖い」っていう畏怖の念が、あんたのダダ漏れ魔力と反応して……ほら、出たわよ』


 ヒュオオオオ……。

 風の音が、女の悲鳴のように聞こえる。

 そして、舞い上がる雪が人の形を成し始めた。

 透き通るような白い肌、長い黒髪、そして着物姿の美女。


 【雪女(魔力製)】の顕現である。


「う、うそ……幽霊!?」


 花憐が悲鳴を上げて腰を抜かす。

 雪女は虚ろな瞳で二人を見つめ、氷のように冷たい息を吐いた。


『……寒イ……デショ……? 眠リナサイ……永遠ニ……』

 周囲の空気が凍結し、樹木が瞬時に氷漬けになる。

 本物の怪異だ。花憐のような一般人が触れれば、心臓麻痺を起こしかねない。


 だが、キースラインは動じなかった。

 彼はスキー板を外し、雪女に向かってザッザッと歩み寄った。


「おい、貴様」


 キースラインは、雪女の目の前で仁王立ちした。


『……?』

「装備はどうした?」

『……ハ?』

「その薄着だ。気温マイナス10度の雪山で、着物一枚とは何事だ。低体温症で死にたいのか?」


 まさかの説教。

 雪女(の形をした魔力)が、困惑で点滅する。

 花憐もポカンとしている。


「それに、民間人がこんな吹雪の中を徘徊するな。遭難救助隊の手を煩わせる気か」


 キースラインは、自分が着ていたダウンジャケットを脱ぐと、バサッと雪女に被せた。


「貸してやる。ふもとのロッジまで送ってやるから、大人しくついてこい」

『……ア……タタカイ……』


 雪女が目を見開いた。

 ジャケットに残っていたキースラインの体温――いや、「あふれ出る生命エネルギー(魂の熱量)」。

 それが、冷たい魔力だけで構成されていた彼女のコアを、内側から温めたのだ。


 シュゥゥゥ……。

 雪女の体が、湯気を立てて溶け始めた。

 退治されたのではない。「満足」してしまったのだ。

 強大な陽のエネルギーに触れ、陰の存在が中和され、昇華していく。


『……アリガトウ……強キ……オ方……』


 雪女は頬を染めて微笑み、光の粒子となって消滅した。

 後には、キースラインのジャケットだけが雪の上に残された。


「……消えた?」


 キースラインは首を傾げた。


「逃げ足の速い女だ。礼も言わずに行くとは」

「……齋藤くん」


 花憐が、震える声で呼びかけた。


「今の人……絶対、この世の人じゃないよね……?」

「ん? そうなのか? ただの遭難者に見えたが」

「遭難者が空中に消えたりしないから!!」


 花憐は涙目になりながら、ジャケット一枚(下は薄着)になったキースラインに抱きついた。


「バカ! 風邪ひくでしょ! なんで幽霊に上着貸しちゃうのよ!」

「む……貴様がいるから寒くない」

「えっ……?」

「貴様の体温が高いからだ。……カイロ代わりになる」


 キースラインは悪気なく言ったが、花憐の顔はさらに沸騰した。


「……もう! バカ! 大好き!」


 結局、キースラインは「雪山で謎の美女に上着を貸して消えられた男」という新たな都市伝説を作り、花憐との熱い抱擁で暖を取りながら下山した。


 雪女すらも惚れさせ(成仏させ)、ヒロインとの仲も深める。

 元勇者の機動演習は、今回も完全勝利(Sランク評価)で幕を閉じた。


【事後分析報告】

読んでくれてありがとうございます。慎也です。

また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?


今後のデータの参考にするため、よろしければ「ブックマーク」と、下にある【★★★★★】で評価を入力していただけると助かります。


皆さんの応援エネルギーが、僕たちの生存確率を上げます。よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ