表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/37

第3話 丁寧すぎる勇者

【担当:キース】

脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?

開戦だ。



「――模試の続きがぁぁぁ!」


 絶叫と共に、齋藤慎也の意識は覚醒した。

 ガバッ、と勢いよく顔を上げる。


「はっ……! すみません、寝てしまいました! 解答用紙は……!」


 反射的に謝罪の言葉を口にしながら、慎也は手元を探った。

 しかし、そこにマークシートはない。

 あるのは――血濡れた巨大な『大剣』の柄だった。


「……え?」


 慎也は瞬きをした。

 いつもの癖で、眼鏡のブリッジを上げようと指を動かす。だが、指先は虚しく空を切った。眼鏡がない。それなのに、視界は恐ろしいほどクリアだった。


 教室の壁も、黒板も、友人たちも消え失せている。

 目の前に広がっていたのは、赤茶けた荒野と、ひっくり返った巨大な怪物ギガントスの死骸。


 そして、鼻をつく焦げ臭い匂い。


「き、キース様……?」


 怯えたような、鈴を転がすような声が聞こえた。

 恐る恐る振り返ると、そこにはファンタジー映画から抜け出てきたような、ローブ姿の美少女が立っていた。手には杖を持っている。僧侶だろうか。


 彼女は青ざめた顔で、ガタガタと震えていた。


(あ……そっか。僕、入れ替わったんだ)

 神の言葉が脳裏に蘇る。


 『キースラインの体に入って、魔王を倒してもらう』。

 夢じゃなかった。


 慎也は自分の体を見下ろした。丸太のように太い腕、傷だらけの無骨な手、全身を覆う鈍色の鎧。


 あのもやしっ子だった自分の体とは、エンジンの排気量が違うことが感覚でわかる。全身に力が満ち溢れていて、重いはずの大剣が羽根のように軽い。


「あの……キース様? お怒りになられているのですか……?」


 黙り込む慎也を見て、僧侶の少女が悲鳴を上げんばかりに身を縮こまらせた。


 ハッとして、慎也は彼女に向き直った。

 そうだ、元の持ちキースラインは乱暴者だったらしい。なら、まずは仲間を安心させなければ。


 慎也は努めて穏やかな表情を作り、背筋を伸ばした。


「いえ、怒ってなんかいませんよ。ご心配をおかけして申し訳ありません」


 ペコリ、と。

 歴戦の勇者(の外見)が、直角に近い角度で綺麗な御辞儀をした。


「…………へ?」


 少女の思考が停止した音が聞こえた気がした。

 彼女だけではない。後ろに控えていた軽装の盗賊らしき男と、髭面の重戦士も、口をあんぐりと開けて固まっている。


「あ、急に黙り込んでしまってすみません。少し、考え事をしていて……。怪我はありませんか? 皆さん」


 慎也は至って真面目に、クラス委員長のような口調で気遣った。

 しかし、その言葉は彼らにとって、ドラゴンの咆哮よりも恐ろしいものだったらしい。


「ひっ……!?」


 盗賊の男が腰を抜かした。


「あ、謝った……? あのキースが? 頭を下げたぞ!?」

「おい、まずいぞ! ギガントスの毒でも食らったか!? それとも、これは新しい処刑の前触れか!?」

「キ、キース様! お気を確かに! 私がすぐに浄化魔法を……!」


 大パニックだった。

 少女が涙目で杖を構え、男たちが武器に手をかける。


(ええ……どういうこと? 僕、普通に接してるだけなのに……)

 慎也は困惑した。

 この体の持ち主は、一体どれだけ普段の行いが悪かったのだろうか。


「あー……皆さん、落ち着いてください」


 慎也はなだめようと、一歩足を踏み出した。


 ドォォォン!!

 ただの一歩。それだけで、足元の岩盤が蜘蛛の巣状に砕け散った。


「うわっ!?」


 慌てて体勢を立て直そうと手を振ると、その風圧だけで近くの岩が吹き飛んだ。


「ひいいい! やっぱりお怒りだぁぁぁ!」

「ち、違うんです! 力加減がわからなくて!」


 最強のステータスと、一般人の精神。

 そのアンバランスさが生む恐怖と混乱の渦中で、元優等生の冒険が幕を開けた。


【総統通達】

読者諸君。我だ。

あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。


まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。


良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ