表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/36

第28話 聖女の沐浴と、思春期の不可抗力

【担当:キース】

脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?

開戦だ。



 魔将軍メフィストとの知恵比べを制した夜。

 一行は湖畔から少し離れた森の中で野営をしていた。


 深夜。見張り番は慎也の担当だった。

 焚き火の爆ぜる音と、ガルドの豪快なイビキだけが響いている。

 慎也は膝の上で医学書を広げていたが、内容は頭に入ってこなかった。


(……眠い。それに、少し蒸し暑いな)

 魔王領に近いこの森は、夜でも湿気が多い。

 慎也は顔を洗って目を覚まそうと、静かに立ち上がった。


 近くに小さな湧き水があったはずだ。

 草木をかき分け、水音がする方へと歩く。

 月明かりが差し込む、小さな泉に出た。

 そこで、慎也は見てしまった。


「~~♪」


 美しい鼻歌。

 そして、月光を反射して白く輝く、滑らかな背中。


「……っ!?」


 慎也の思考回路(CPU)が、一瞬でフリーズした。


 聖女エリスだ。

 彼女は法衣を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿で泉に浸かり、身体を清めていたのだ。


(あ……あ……)

 逃げなければならない。理性はそう叫んでいる。

 だが、本能が目を離させてくれない。


 濡れた金髪が肌に張り付き、水滴が鎖骨から豊かな胸のラインへと滑り落ちる。

 その光景は、どんな芸術品よりも美しく、そして破壊的だった。


(物理演算不能。……美しさの数値化、エラー発生……!)

 日本の高校生にとって、刺激が強すぎた。

 心拍数が急上昇し、顔から火が出るほどの熱が集まる。


 その時。

 バキッ。

 慎也の足が、乾燥した枝を踏み抜いた。

 静寂な森に、乾いた音が響き渡る。


「――誰!?」


 エリスが弾かれたように振り返った。

 バッ! と咄嗟に胸元を腕で隠すが、その恥じらいのポーズが余計に艶めかしい。


 視線が交差する。

 固まる慎也。

 目を見開くエリス。

 数秒の沈黙の後、慎也は日本人の本能に従って動いた。


 ザザァァァーッ!!(スライディング土下座)


「も、申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!」


 慎也は地面に額を擦り付けた。かつてない速度とキレの土下座だった。


「ち、違うんです! 決して覗くつもりでは! 顔を洗いに来たら、その、偶然……!」

「……キース、ライン……?」


 エリスの声が震えている。羞恥と、混乱で。

 通常なら、ここで悲鳴を上げるか、魔法で黒焦げにするところだ。


 だが、最強の勇者が、地面にめり込む勢いで震えている姿を見て、彼女は毒気を抜かれてしまった。


(この人……本当に覗くつもりじゃなかったのね)

 かつてのキースラインなら、「減るもんじゃなし、見せろ」と堂々と近づいてきただろう。


 だが今の彼は、耳まで真っ赤にして、生まれたての子鹿のように震えている。

 その姿は、歴戦の勇者というよりは――まるで、ウブな少年のようだった。


「……顔を上げないでくださいね」


 エリスは努めて冷静な声を出した。


「今、上がりますから。……絶対に、見ないでくださいよ?」

「は、はい! 誓って! 網膜を閉じます!」

まぶたを閉じてください」


 水音がし、衣擦れの音が響く。

 慎也にとっては、その「音」だけで想像力が掻き立てられ、拷問に近い時間だった。


(神様……これも試練ですか……。刺激が強すぎて、寿命が縮んだ気がします……)


「……もういいですよ」


 ようやく声がかかり、慎也は恐る恐る顔を上げた。

 そこには、法衣を急いで着込み、髪を濡らしたままのエリスが立っていた。


 月明かりの下、彼女の頬もまた、林檎のように赤く染まっている。


「……あの、その。……お肌、綺麗でした」


 極限のパニック状態で、慎也の口から最低かつ正直な感想が漏れた。


「っ……! バカ!」


 バシャッ!

 エリスは泉の水を慎也にひっかけ、逃げるように走り去っていった。


「もう! 先に寝ますからね!」


 残された慎也は、冷たい水を浴びて呆然としていた。

 だが不思議と、嫌な気分ではなかった。


 殺伐とした異世界で、初めて「命のやり取り」ではない、人間らしい(男らしい)動揺を味わったからかもしれない。


 翌朝。

 腫れぼったい目のエリスと、挙動不審な慎也。

 何も知らないガルドだけが、「お前ら、なんか雰囲気変わったな?」と能天気に笑っていた。


 二人の間には、昨日までとは違う、少し甘酸っぱい「共犯関係」が生まれていた。


【総統通達】

読者諸君。我だ。

あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。


まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。


良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ