第25話 中間考査という名の知略戦
【担当:慎也】
僕の日常がこれ以上壊れませんように……。
本編スタートです。
季節は秋。学園に「中間考査」という戦乱の時期が訪れた。
教室はピリピリとした緊張感に包まれている。
「ふん……。良い殺気だ」
キースラインは、配られた解答用紙を前に不敵に笑った。
周囲の生徒が青ざめている中、彼だけが戦場に立つ将軍のように余裕綽々である。
これまでの授業で分かったことがある。
この世界の学問とは、要するに「世界の理を記述した魔導書」の解読だ。
特に『数学』と『物理』。これは魔法陣の術式構築と何ら変わりない。
『歴史』は過去の英雄たちの戦術データ。『古文』は古代語の解読。
魔王軍の暗号を解き、作戦を立案してきた俺にとって、これしきの問題など児戯に等しい!
「始め!」
チャイムと共に、試験官の号令が下る。
その瞬間、キースラインの鉛筆が走った。
1時間目:数学
(問:点Pが毎秒xcmで移動する時、点Qとの距離が最小になる時間を求めよ)
(ほう……動く標的への偏差射撃か。風向き(外部要因)の記載はなし。ならば、この関数という軌道予測を使えば、必中させるのは容易い!)
カリカリカリカリッ!!
鉛筆が折れんばかりの勢いで、キースラインは数式(術式)を組み上げていく。
その計算速度は、スパコン並みの直感に裏打ちされていた。
2時間目:現代文
(問:傍線部における主人公の心情を答えよ)
(簡単だ。この文脈から察するに、敵将(筆者)は心理戦を仕掛けている。この場面での最適な心理状態は『油断を誘うための偽りの悲哀』。……いや、待てよ? 人間関係の記述からして、これは『部下への裏切りに対する憤怒』か?)
キースラインは、歴戦の経験から「人間のどす黒い感情」を読み取ることに長けていた。
結果、模範解答よりも深い、人生の深淵を覗くような解答を書き殴った。
3時間目:英語
(神の翻訳チートにより、全ての英文が日本語に見える)
(……なぜ同じ言語をわざわざ翻訳させる? まあいい、敵の暗号文を平文に直すだけの作業だ)
秒殺。
***
試験終了後。
「さ、齋藤くん……どうだった?」
天道花憐が、不安そうな顔で話しかけてきた。彼女にとって、テストは絶対に負けられない聖域だ。
しかし、キースラインは窓の外を眺めながら、ニヤリと笑った。
「敵(問題)の包囲網は脆弱だった。……全滅(全問正解)させてやったぞ」
「ぜ、全滅って……」
数日後。順位発表。
廊下に張り出されたランキング表の前で、生徒たちがどよめいていた。
1位:齋藤 慎也 (合計点:498点)
2位:天道 花憐 (合計点:495点)
「う、嘘……!?」
花憐が絶句した。
不動の1位だった彼女が、ついに陥落したのだ。
しかも、齋藤慎也の回答用紙(特に現代文)には、採点した教師からのコメントが赤ペンで書かれていた。
『筆者の意図を超えた鋭い洞察力。君の人生観に戦慄した』と。
「勝った……。俺が、勝者だ」
キースラインは掲示板の前で高らかに宣言した。
それは魔王を倒した時のようなドヤ顔だった。
「くっ……!」
花憐は悔しさに唇を噛んだ。
だが同時に、彼女の胸に熱いものが込み上げていた。
(すごい……。今まで私の後ろをついてくるだけだった齋藤くんが、ついに私を追い越した……。私と対等に、ううん、それ以上の力で張り合ってくれるなんて……!)
悔しい。けれど、嬉しい。
自分を脅かすほど強いオス(男)への本能的なときめき。
「……次は負けないから! 期末テストでリベンジよ、齋藤くん!」
花憐はビシッと指を突きつけた。
「望むところだ。何度挑んでも返り討ちにしてやる。……その代わり」
キースラインは、ふと真面目な顔になった。
「俺の知識に穴があれば、また貴様が埋めろ(勉強を教えろ)。……貴様の教え方は、悪くない」
「っ……///」
花憐は顔を真っ赤にして、コクンと頷いた。
こうして、「勉強」すらも二人の愛(?)を育む燃料となり、キースラインの学園支配は盤石なものとなったのだった。
ただ一つ、美術のテストで「自画像」を描かせた際、鏡を見ずに「筋骨隆々の金髪の戦士」を描いてしまい、教師を困惑させたことを除けば。
【事後分析報告】
読んでくれてありがとうございます。慎也です。
また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?
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