第19話 神域での中間報告会
【担当:創造の理】
ここは世界の狭間。二つの魂が触れ合う、聖なる場所……。
しばし、運命の深淵を覗いてみましょう。
【日本、文化祭当日】
「総員、配置につけ! 第一陣(客)が来るぞ! 悲鳴の雨を降らせろ!」
キースラインが段ボールの要塞で号令をかけた、その瞬間。
【異世界、早朝の森】
「演算終了。右、30度!」
慎也が襲いかかる魔狼の首を跳ね飛ばした、その瞬間。
――パチン。
指を鳴らす音が響き、世界が白に染まった。
***
気づけば、二人は再びあの「白い部屋」に立っていた。
目の前には、光り輝く玉座に座る神。
そして、互いの姿。
「……あ?」
キースラインは、ペンキまみれの作業着姿で、手にガムテープを持ったまま固まった。
「……え?」
慎也は、返り血を浴びた鎧姿で、聖剣を構えたまま固まった。
「やっほー。元気してた?」
神が軽い調子で手を振った。
「久しぶりね。ちょっとここらで『中間報告』を聞こうと思って、呼び出してみたわ」
「貴様……!」
キースラインが青筋を立てて詰め寄ろうとする。
「いいところで邪魔をするな! 今まさに我がクラスの威信をかけた作戦(お化け屋敷)が始まるところだったのだぞ!」
「……キース、さん?」
その声に、キースラインは足を止めた。
目の前にいるのは、かつての自分の体。
だが、その雰囲気は第1話で見た時の「怯える小動物」とは別人のように変わっていた。
立ち方は隙がなく、瞳には冷徹な理性の光が宿っている。
「ほう……。少しはマシな面構えになったようだな、貧弱男」
キースラインはニヤリと笑った。
「俺の最強の肉体を使って、芋虫のように這いつくばっていたら殺してやるところだったが……どうやら、それなりに使いこなしているようだな」
「……おかげさまで」
慎也は眼鏡のない目を細めた。
「貴方の体は凄すぎます。最初は振り回されましたが、今はなんとか『制御』していますよ」
慎也もまた、目の前の「自分の体」を見て驚いていた。
猫背で自信のなかった自分が、胸を張り、堂々とした王者の風格を漂わせている。
(僕の顔って、自信を持つとあんなに変わるのか……)
「さて、二人とも」
神がパン、と柏手を打った。
「ぶっちゃけ、どう? そろそろ元の世界が恋しくない? 今なら特別に、元に戻してあげてもいいけど」
神の提案に、二人は顔を見合わせた。
そして、ほぼ同時に口を開いた。
「「断る」」
声が重なった。
神がキョトンとする。
「え? なんで?」
「ふん。俺は今、忙しいのだ」
キースラインは腕を組んだ。
「あの世界は平和ボケしているが、飯は美味いし、文明は面白い。それに……ようやく手に入れた『部下』たちを放り出して帰還するなど、王のすることではない」
彼の脳裏には、慕ってくれるクラスメイトや、弁当を作ってくる参謀(花憐)の顔が浮かんでいた。
「僕もです」
慎也も静かに首を横に振った。
「僕は……まだ、何も成し遂げていません。あっちの世界で、僕は自分の甘さのせいで過ちを犯しました。このまま逃げ帰ったら、一生後悔する」
彼の手は、血に塗れた記憶を忘れていない。
「魔王を倒すまで……いや、僕が『強さ』の本当の意味を知るまでは、帰りません」
二人の返答に、神は目を丸くし――そして、ニヤリと笑った。
「……へぇ。面白いこと言うようになったじゃない」
当初の予定では、泣きを入れた二人を適当なところで戻すつもりだった。
だが、今の二人はどうだ。
それぞれの世界で、新しい「自分」を見つけようとしている。
「分かったわ。なら、続行ね」
神は指を立てた。
「ただし、条件を追加する。……どっちかが『死ぬ』か『心が折れた』時点で、強制終了。二度と戻れないと思いなさい」
「望むところだ」
キースラインは不敵に笑い、
「了解しました」
慎也は覚悟を決めて頷いた。
「あ、そうだキースさん」
消える直前、慎也が声をかけた。
「僕の体、筋肉痛が酷いんですけど……何やってるんですか?」
「筋トレだ。貴様の体が貧弱すぎて話にならんからな」
「えぇ……受験勉強に支障が出ない程度にしてくださいよ……」
「知らん。貴様こそ、俺の体に傷をつけたら承知せんぞ」
言い合う二人の姿が薄れていく。
光に包まれながら、彼らは互いに確信していた。
あいつなら、やってのけるだろう、と。
***
【日本、文化祭会場】
「――よし、総員突撃! 客を恐怖させろ!」
戻ってきたキースラインは、何事もなかったかのように指揮を再開した。
【異世界、森の中】
「……ふぅ。行きますか」
戻ってきた慎也は、聖剣を握り直し、再び魔狼の群れへと飛び込んだ。
それぞれの魂は、今や完全に、その世界の住人として根付き始めていた。
【神託】
世界の真実に触れた旅人(読者)たちよ。
彼らの運命をより良き方向へ導くため、【ブックマーク】という名の加護と、下部の【★★★★★】という名の祈りを捧げなさい。
貴方たちのその想い(ポイント)が、彼らの未来を紡ぐ糸となるのです……。




