第15話 優しさという名の凶器
【担当:キース】
脆弱な頭脳で我が肉体を使いこなせるかな?
開戦だ。
王都へ向かう道中、一行は商人の馬車を護衛することになった。
道中、慎也は馬車の御者台に座る初老の男と談笑していた。
「へえ、孫が生まれたばかりなんですか」
「ああ。この商品を売り捌いたら、孫に土産でも買って帰るつもりでね。勇者様がついていてくださるとは心強い」
男の笑顔を見て、慎也は心が温かくなった。
守りたい。この平和な日常を。
自分の力なら、それは容易いことだと思っていた。
――その時、殺気を感じた。
盗賊団だ。総勢二十名ほど。武装した男たちが、道を塞ぐように現れた。
「ヒャッハー! 金目の物を置いていきな!」
典型的な悪党の登場に、ガルドとミナが即座に武器を構える。
「チッ、数が多いな。キース、殲滅するぞ!」
「ま、待ってください!」
慎也はガルドを制した。
(相手は人間だ。魔物じゃない。いきなり殺すなんて……)
日本の高校生としての倫理観が、ブレーキをかけた。
圧倒的な力を見せつければ、相手も逃げるはずだ。話し合いで解決できるなら、それが一番いい。
「僕が出て話をします」
慎也は前に出た。
「君たち、悪いことは言わない。僕はこの通り強い。怪我をしたくなければ、今すぐ立ち去るんだ」
慎也は威嚇のために、地面に向けて剣を振るった。
ズドォォン!
衝撃波が地面を抉る。物理的な説得力は十分なはずだった。
盗賊たちがどよめく。
「ひいっ、化け物か!?」
「兄貴、ありゃヤベェよ! 逃げようぜ!」
(よし、通じた……!)
慎也は安堵し、剣を下げた。
だが、盗賊の頭目は逃げなかった。彼は、慎也の瞳にある「色」を見逃さなかったのだ。
――こいつ、人を殺す覚悟がない目をしていやがる。
「……野郎ども、散開しろ! 挟み撃ちだ!」
「なっ!?」
逃げるどころか、盗賊たちは一気に距離を詰めてきた。
殺意のない攻撃など、歴戦の悪党には隙でしかない。
「キース様! 迎撃してください!」
エリスが叫ぶ。
「で、でも……殺すのは……!」
躊躇した一瞬。その数秒が、運命を分けた。
慎也が攻撃をためらっている隙に、数人の盗賊が彼の脇をすり抜け、馬車へと殺到した。
「勇者様!?」
御者の老人が叫ぶ。
「やめろぉぉぉ!」
慎也は振り返り、手を伸ばした。だが、間に合わない。
ドスッ。
鈍い音が響いた。
老人の胸から、剣の切っ先が突き出ていた。
「――え?」
慎也の思考が白く染まる。
老人は、何が起きたのか分からない顔で慎也を見つめ、そして崩れ落ちた。
手には、孫への土産を買うための金貨が握りしめられていた。
「へっ、甘ちゃんだな勇者様よぉ!」
盗賊が笑う。
「お前がビビってるから、隙だらけだったぜ!」
「……あ……あぁ……」
慎也の喉から、空気だけが漏れた。
殺したくない。傷つけたくない。
その「優しさ」を選んだ結果が、守るべき人の死だった。
「クソッ! ミナ、エリス様を守れ!」
激昂したガルドが斧を振り回し、盗賊を薙ぎ払う。
だが、混乱した馬車の馬が暴れ、荷台が横転する。戦場は混沌を極めた。
慎也は、血の海に沈んだ老人を呆然と見下ろしたまま、動けなかった。
握りしめた最強の聖剣は、あまりにも重く、そして無意味だった。
【総統通達】
読者諸君。我だ。
あの優男(慎也)め、相変わらず理屈っぽい戦い方をしていたな。我ならば一撃で粉砕していただろうに。
まあよい。今回の話に少しでも心が動いたならば、【ブックマーク】および、下部の【★★★★★】にて、我への忠誠を示せ。
良い評価は、次なる戦い(執筆)への糧となる。期待しているぞ。




