第14話 学園の支配者と、愛妻弁当
【担当:慎也】
僕の日常がこれ以上壊れませんように……。
本編スタートです。
翌日、登校したキースラインは、教室の空気が変わっていることに気づいた。
畏怖。尊敬。そして困惑。
クラスメイトたちが、遠巻きにヒソヒソと噂話をしている。
「おい、聞いたか? 昨日の図書室の件……」
「ああ。あの『天道花憐』が、顔を真っ赤にして齋藤に迫られてたって……」
「しかも『俺のモノになれ』って言ったらしいぞ」
「マジかよ……齋藤のやつ、いつからあんな肉食系に?」
(ふむ。俺の覇気が隠しきれなくなってきたか)
キースラインは席に座り、不敵に笑った。
凡人どもめ、気づくのが遅い。俺は既に、この学園の頂点(成績トップ)を手中に収めたのだ。
「よ、よお慎也……」
友人のタカシが、恐る恐る近づいてきた。
「お前さ……まさかとは思うけど、天道さんと付き合ってんのか?」
「付き合う?」
キースラインは眉をひそめた。その単語の正確な意味(交際)は不明だが、関係性について問われているのだろう。
「ああ。昨日、契約を交わした」
「け、契約ぅ!?」
「彼女の能力は素晴らしいからな。俺の覇道に必要だと判断し、勧誘したのだ。最初は抵抗していたが、最後は俺の熱意に折れて承諾したぞ」
教室がざわめいた。
『勧誘』『抵抗』『熱意に折れて承諾』。
キースラインの語彙が軍事的すぎるせいで、周囲には「強引なアプローチで口説き落とした」という意味に変換されて伝わっていた。
「すげぇ……あの高嶺の花を……」
「やるな齋藤、見直したぞ!」
その時だった。
教室の入り口に、人影が現れた。
天道花憐である。
彼女は少し恥ずかしそうに俯きながら、一直線にキースラインの席へと歩み寄ってきた。手には可愛らしい包みを持っている。
「……齋藤くん」
「む? どうした、参謀殿」
「さ、参謀って呼ばないでよ……!」
花憐は顔を赤らめて抗議しつつ、包みを机の上に置いた。
「これ……お昼。作りすぎちゃったから、あげる」
「ほう?」
キースラインは包みを解いた。
中から現れたのは、彩り豊かな弁当だった。タコさんウィンナー、ハート型の卵焼き、そして栄養バランスを考慮した野菜たち。
どう見ても「作りすぎた余り物」ではない。気合の入った手作り弁当だ。
「供物か。殊勝な心がけだ」
キースラインは躊躇なく箸をつけ、卵焼きを口に放り込んだ。
「……うまい」
素直な感想だった。母のハンバーグも美味かったが、この繊細な味付けも悪くない。
「貴様、計算能力だけでなく調理スキルもSランクか。有能すぎるぞ」
「べ、別に……普通よ、それくらい」
花憐はそっぽを向いたが、その口元は嬉しそうに緩んでいる。
「……あとで、昨日の続き(勉強)、教えてあげるから。放課後、待ってなさいよね」
そう言い捨てて、彼女は風のように去っていった。
残された教室は、静寂に包まれていた。
そして次の瞬間、爆発した。
「うおおおお! マジだ! 完全に餌付けされてる!」
「あのツンデレな天道さんがデレたぞ!」
「齋藤師匠! 俺にも攻略法を教えてください!」
タカシや男子生徒たちが拝むように集まってくる。
(……? なぜこいつらは、俺が飯を食っただけで騒いでいるのだ?)
キースラインは首を傾げつつ、タコさんウィンナーを咀嚼した。
どうやらこの世界での「支配」は、剣を振るうよりも容易いのかもしれない。
ただ一つ誤算があるとすれば、「彼女が何故か俺のことを好きだと思っている」という致命的なすれ違いだけだが、それに気づくのはまだ先の話だ。
【事後分析報告】
読んでくれてありがとうございます。慎也です。
また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?
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