第10話 俺の女(部下)になれ
【担当:慎也】
僕の日常がこれ以上壊れませんように……。
本編スタートです。
放課後の図書室。
そこは、この学校における「知識の宝庫」であり、キースラインが次に征服すべき場所だった。
「……ふむ。この世界の歴史、経済、そして『物理法則』……。興味深い」
キースラインは、積み上げた専門書の山を前に唸っていた。
神の翻訳チートのおかげで、活字中毒のように知識を吸収しているのだ。
だが、独学には限界がある。効率よくこの世界を支配するには、案内人が必要だ。
その時、視界の端に一人の女子生徒が映った。
窓際の席で、優雅に洋書を読んでいる黒髪の少女。
天道花憐。
この学園で唯一、齋藤慎也(の体)と互角以上の成績を誇る、学年トップの秀才だ。
(ほう……。あの女、いい魔力(知性)の目をしている)
キースラインは直感した。
彼女ならば、俺の覇道の助け(要するに辞書代わり)になるだろう、と。
キースラインは迷わず彼女の席へと歩み寄った。
そして、ドンッ! と彼女の机に両手をつき、上から覗き込んだ。
「……っ!?」
花憐がビクッとして顔を上げる。
「さ、齋藤くん……? なに、急に……」
「おい、女」
キースラインは、至近距離で彼女の目を射抜いた。
「貴様、俺のモノになれ」
「は――――――――!?」
図書室の空気が止まった。
花憐の顔が、ゆでダコのように真っ赤に染まる。
「な、ななな、何を言って……!?」
「言葉通りの意味だ。俺には貴様の頭脳が必要だ。黙って俺についてこい」
キースラインは真剣そのものだった。
この世界で生き抜くための「参謀」として勧誘しただけだ。
だが、翻訳が致命的に足りていなかった。
(ちょ、ちょっと待って……! 齋藤くんって、こんなキャラだったっけ!?)
花憐は大混乱していた。
いつもは目を合わせようともせず、ボソボソと挨拶するだけの陰キャだったはず。
それが、どうだ。
眼鏡の奥から覗く瞳は、肉食獣のように鋭く、有無を言わせぬ支配者のオーラを放っている。
(強引……! でも、私を必要だなんて、こんな真っ直ぐな目で……!)
勉強ばかりで恋愛免疫ゼロの優等生には、刺激が強すぎた。
「お、お断りよ! あなたなんかのモノになんて……!」
花憐は震える声で精一杯の拒絶をした。
だが、キースラインは引かない。
「拒否権などない。俺が選んだのだ。光栄に思え」
グイッ、と彼女の顎を持ち上げる(※ただ顔をよく見たかっただけ)。
「ひゃうっ!?」
「ふん、悪くない顔だ。貴様なら俺の隣に立つ資格があるだろう」
――『はい、そこまで』
お馴染みの神の声と共に、強烈な頭痛が走った。
「ぐっ……!?」
(ナンパ禁止。あと顎クイ禁止。セクハラで訴えられたら、お前の高校生活そこで終了よ?)
「……チッ」
キースラインは舌打ちをして手を離した。
まだ交渉の途中だというのに。
「……まあいい。今日はここまでにしておいてやる」
キースラインは踵を返した。
「だが、俺は諦めんぞ。貴様の知識、骨の髄までしゃぶり尽くしてやるから覚悟しておけ」
捨て台詞(※勉強教えてねの意味)を残し、元勇者は風のように去っていった。
残されたのは、腰が抜けて椅子にへたり込んだ花憐だけ。
「……なによ、あれ……」
彼女は熱くなった頬を両手で押さえた。
「いきなりあんな……バカじゃないの……」
口では悪態をついているが、その心臓の鼓動は、人生で一番激しく鳴り響いていた。
こうしてキースラインは、意図せずして「学園の女帝」を攻略ルートに乗せてしまったのだった。
【事後分析報告】
読んでくれてありがとうございます。慎也です。
また僕の体が物理法則を無視した動きをしていたようですが……楽しんでいただけたでしょうか?
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