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「こまんお〜」が言えない王子

作者: ニコニコひよこ
掲載日:2025/10/09

この国では、補助輪なしで自転車に乗れるレベルのことらしい。

「アルト殿下! もう一度です。せーのっ!」

「こ、こま……おま……こ、ま……」

「違いますっ! “こまんお〜”ですっ! “ん”を抜かさない!」

「んを入れると、変な音になるんだよぉ!」


ネレアは額を押さえた。王族専用の発音教室には、悲鳴と笑い声がこだましている。


この国「コマンオ王国」では、朝のあいさつも、国会の開会宣言も、外交条約の締結もすべて「こまんお〜」で始まる。


言い間違えるなど、国家反逆罪レベルの恥である。


「アルト殿下、これはただの発音訓練ではありません。王の器を問われる一大事です!」

「そんなのわかってる! でも俺の口が勝手に……“おま○○”とか言っちゃうんだ……!」


「放送禁止ですっ!!!」

ネレアは反射的に鐘を鳴らした。


「ピーッ!」と音が鳴る魔法鐘――不適切発言を感知する国家機密アイテムである。

今日だけで20回鳴った。


「はぁ……殿下、もう一度。“こ”を柔らかく。“ま”は優しく。“ん”で止めて、“お〜”で流す。」

「……こ、ま、ん、お〜……?」

「できましたぁぁぁ!!!」


ネレアは涙を流して拍手した。

執事も侍女も兵士も、王城全体が歓声に包まれた。

……しかし翌日。

王城バルコニーから国民に向かって王子が高らかに言う。


「国民の皆! こま……こま……お…ん○〜っ!」

静寂。


そして鐘が鳴る――ピーーーーーーー!!!!!

「アルトおおおおおおおおおお!!!」

ネレアの絶叫が王都に響いた。



***


それから十年。

王子アルトはついに王位についた。

開会の儀で、深呼吸して言う。


「国民の皆、こまんお〜!」

会場がどよめき、拍手喝采。

ネレアは涙ぐみながら、そっとつぶやいた。


「……本当に、立派になりましたね。こまんお〜、陛下。」

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