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カードゲーム世界に転生したけど所持デッキが激ヤバすぎる件  作者: 銀猫


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9/21

勝利を確信した時ほど死亡フラグは立つ

「海底都市ルル・イエの効果、虚無属性のモンスターがフィールドに出た時サイコロを振ってもらう」


 ジョンの前にサイコロが現れる。ジョンはサイコロを軽く掴み振った。出た目は3、ルル・イエのカウントから3取り除かれる。

『海底都市ルル・イエ 99→96』


「次元要塞バルクーエの効果。プレイした次元と名のつくカードは、墓地に置かれる代わりにこのカードの下に置く。バルクーエの下に置かれたカードの合計コストが30以上になった時、バルクーエは解放される」


 バルクーエの下に次元観測が置かれる。残り27コスト。


「ターンエンドです」


 猟犬の出現にプランを崩されたジョン。このまま攻撃しても餌にされるだけの為ターンを開け渡す。


「俺のターン、ドロー、エナジーチャージ」

 

 ウツロのターン。


「虚無3エナジー、月の獣を召喚」

『月の獣 3/3』


 月という名前からは連想されない、灰色の大きなカエルが現れる。カードらしくデフォルメされたカエルだが、瞳からは何か恐ろしい感情を感じさせる。


「ルル・イエの効果だ」


 再びダイスロール。次に出した数値は5。また一つルル・イエの解放が早まる。

『海底都市ルル・イエ 96→91』


「時空の猟犬で攻撃」


 猟犬が駆ける。恐ろしい鉤爪、牙。だが何より恐ろしいのは針のように鋭い棘がチラチラと獲物を狙っている事。


「次元警察マーシーでブロック」


 ジョンと猟犬の間にマーシーが割り込み、猟犬は勢いよくマーシーに噛み付く。


「時空の猟犬の効果。このカードのバトル時、相手モンスターの体力を-3し、この効果で相手モンスターを破壊した時+1/1する」

『時空の猟犬→4/4』


 マーシーのステータスは1/1。猟犬の効果により破壊される。


「マーシーの効果、このカードが破壊された時、フィールドのモンスター1体を指定。指定したモンスターは次の相手ターン終了時まで攻撃できない。破壊されたマーシーはバルクーエの下に」

『次元要塞バルクーエ 27→25』


 大きく口を開けて噛み砕こうとする猟犬から逃げるように、マーシーは後ろに現れた奇妙な亀裂に飛び込んだ。

 亀裂の後ろから複数の鎖が飛び出し、猟犬の体を雁字搦めに締め上げる。


(後半に爆発するタイプのデッキか)


 攻撃を封じ、耐えて耐えて後半爆発するタイプのデッキと見た。

 ウツロのデッキはコントロール寄りのデッキタイプ。速攻はあまり得意ではない。


「ターンエンド」


 ジョンのターン。


「ドロー、エナジーチャージ、水4エナジー」


 猟犬の足元から亀裂が入り、亀裂から氷で出来た鎖がいくつも飛び出すと猟犬を雁字搦めに縛り上げる。


「次元の狙撃手ルーカスを召喚」

『次元の狙撃手ルーカス 4/1』


 大きな狙撃銃を抱え、機械仕掛けの鎧を装着した男が召喚される。


「ルーカスの召喚時効果。山札の1番上を確認。それが次元と名の付くカードだった場合、そのカードを自分のフィールドカードの下に置く」


 確認したカードは、次元護衛ハルク。コストは4。

『次元要塞バルクーエ 25→21』


「この効果で置かれたカードのコストと同じ数のダメージを、相手モンスターに与えます」

 

 ルーカスが狙いを定める。銃口の先にいるのは月の獣。

 発射された銃弾が、月の獣の体に風穴を開ける。


「ターンエンド」


 時空の猟犬を見せている。見せてなお、デッキの確認効果を使用するのは怖いもの知らず、ではないのだろう。

 2体目、3体目の猟犬が出るリスクを取ってでも自分の動きを優先する。勝ちを見据えた迷いのないプレイング。自分の強い動きを通していく意志の強さ。


 月の獣を処理され、猟犬は縛られた。

 フィールド解放もこのままいけば間違いなくジョンが先に開放するだろう。ルル・イエの封印は簡単に解除できるものではない。


「俺のターン」


 ルル・イエは未だ浮上の兆しは見せず、相手は着々と準備を整える。

 もたもたしていれば不利になると言うのなら、こちらも仕掛けるまで。


「虚無5エナジー、スペル、偽書ネクロ・ミルコン」


 猟犬の足元に黒い沼が現れる。沼から這い出てくるのは無数の手。萎びた手が猟犬を冥界に引きずりこむ。


「偽書ネクロ・ミルコンの効果。自分フィールドのモンスターを一体破壊し、そのモンスターよりコストの小さいモンスターを墓地から場に出す」

『月の獣 3/3』


 猟犬が引きずり込まれた沼から、月の獣が勢いよく飛び出す。

 コスト8の猟犬とコスト3の月の獣。スペックを見ても釣り合いは取れないが、この場合猟犬を墓地に送る事が何よりも重要。


「ネクロ・ミルコンの更なる効果。この効果でコスト6以上のモンスターを破壊した場合、次の自分のターン終了時までカードの効果で振られるサイコロの数を+1する」


 月の獣の出現により、二つのサイコロが振られる。

 出た数値はそれぞれ4と6。合計10のカウントがルル・イエから取り除かれた。

 『海底都市ルル・イエ 91→81』


「ターンエンド」


 ルル・イエの解放を早める手段を見せ、猟犬をコストにして盤面を整えた。猟犬が墓地にいる状態で満足に動けるのかとジョンに選択肢を叩きつける。あるかもしれないではなく、絶対に出てくる状態に。

 ここで足踏みするか、ウツロの解放を早めてでも自分の戦略を通すのか。


「水3エナジー、スペル、次元観測」

『次元要塞バルクーエ 21→18』


 デッキという未来を観測し、猟犬が匂いを嗅ぎつける。


「来い、時空の猟犬!」

『時空の猟犬 3/3』


 ネクロ・ミルコンによって振られるダイスは2つ。5と3で8のカウントが進む。

『海底都市ルル・イエ 81→73』


 動きを鈍らせれば、ウツロに主導権が渡る。

 ルル・イエの解放条件が一際重いものなのはジョンも理解した。ステラバトルにおいて、解放条件が重ければ重いほど解放された時のパワーは凄まじい。ここで足踏みをすれば流れで試合ごと持っていかれかねない。

 

 古守ウツロの操るカードには、それだけの圧がある。

 フィールドの解放を狙い、試合が加速する。


 ジョンはウツロよりも早く解放を狙うため、ライフを犠牲に最小限の防御でバルクーエの下にカードを貯めていく。

 ウツロもまた、ジョンの妨害を受けながらモンスターを展開しつつダメージを与えてルル・イエのカウントを進めていく。


「時空の猟犬で攻撃」

「次元護衛ハルクでブロック」

『時空の猟犬 3/3→3/0』

『次元護衛ハルク 3/5→3/0』

「月の獣とジョゴズで攻撃」

『月の獣 3/3』『形なき悪夢ジョゴズ 4/6』

『ジョン・タイラー 12→5』


 2体のモンスターの攻撃で、ジョンのライフが大きく削られる。更にルル・イエの効果で2回のダイスロール。出た目は2と4。


『海底都市ルル・イエ 41→35』


 破壊された次元護衛ハルクが次元要塞バルクーエの下に置かれる。

 ジョゴズと月の獣との戦闘ではハルクは破壊されない。ライフを犠牲に猟犬と相打ちする事で、ハルクを破壊。

 ハルクが下に置かれた事で合計コストは丁度30。これでついに、フィールドの解放条件が達成された。


「私のターン」


 フィールドカードが蒼く煌めく。


「フィールド解放、次元要塞バルクーエ」


 ウツロよりも早く、ジョンのフィールドが解放された。


「水8エナジー、来なさい『次元司令シュトローム』」

『次元司令シュトローム 7/8』


 機械仕掛けの軍服を身に纏った妙齢の男が、銃剣を地面に突き刺す。


「シュトロームの召喚時効果、相手モンスター1体を手札に戻す。対象はジョゴズ」


 シュトロームが銃剣を抜き、ジョゴズに向かって引き金を引く。

 銃剣から放たれた青色のレーザーが、ジョゴズを包み次元の彼方へと弾き飛ばす。


「次元要塞バルクーエの効果!このカードが解放されている状態で次元カードをプレイした時、プレイしたカード以下のコストを持つカードを1枚、バルクーエの下からノーコストで使用してよい」


 バルクーエの下には、合計30コスト以上のカードが置かれている。

 ジョンが払ったコストは8。よってバルクーエの下に置かれている8コスト以下のスペルかモンスターを使用可能。


「更にシュトロームは覚醒効果により、解放されたフィールドカードの効果を使用した時、相手のカードを1枚手札に戻す事ができる。更にこのターン手札に戻したカードの枚数、このカードが受けるダメージをマイナスする」


 ここでジョンはフィールドを確認する。

 ウツロのフィールドには月の獣が1体、墓地には時空の猟犬がいる。ジョンのフィールドもシュトロームのみ。

 ウツロの手札は3枚、内1枚はジョゴズ。ジョンの手札は2枚、これから攻めるには少ない枚数だ。


「次元要塞バルクーエの効果により、次元観測を発動」


 墓地から猟犬が出てくるが、ルル・イエの解放は未だ遠い。盤面は増えるものの猟犬の攻撃によるプレイヤーへのダメージは1に固定されている。ライフ上限削りも既にダメージを受けていればほとんど機能しない。

 よってジョンは手札補充を選択し、次のターンに向けての準備を整える。


「あんたなら、手札補助をすると思っていた」


 それが、致命的なミスとも知らずに。


「――未来を見過ぎだよ」


 猟犬は1匹ではない。

 猟犬が墓地から、そして手札から現れる。ウツロのフィールドに2体の猟犬。猟犬の召喚によりルル・イエの効果が発動、それぞれ2と3の出目を出し合計5のカウントが進む。

『海底都市ルル・イエ 35→30』


「シュトロームの効果、月の獣を手札に」


 シュトロームの効果で月の獣がバウンスされ、フィールドには2体の猟犬のみ。

 予定より1匹多いが、まだ問題じゃないとジョンは結論づける。ルル・イエの解放にはまだまだ猶予がある。後2ターンは解放される事はないだろう。


「ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」


 引いた手札に興味はない。だって、既にリーサルは組んでいるのだから。


「エナジーチャージ、虚無7エナジー、怪鳥シャムタクを召喚!」

『怪鳥シャムタク 4/3』


 一見ドラゴンのように見える体付きをしているが、頭部をよく見れば少しボヤッとしている馬のような顔がある。


「シャムタクは速攻を持っている。更に、召喚時に手札を1枚捨てる事でこのターンブロックされない」


 宇宙を飛ぶ怪鳥を、捕まえる術などない。

 シャムタクの攻撃力は4。場には攻撃可能な2体の猟犬。


「どちらが先にフィールド解放するかのゲーム、そう思っただろ」


 だって、そう思うように仕向けたのだから。

 スペル、偽書ネクロ・ミルコン。あのスペルは本来撃つ必要のないスペルだった。態々5コストのスペルを撃って3コストのモンスターを釣り上げる行為、スペルを撃たずに5コストのモンスターを召喚した方が盤面は強くなる。

 

 スペルを撃ったのは、ウツロがフィールドを早く解放したいのだと印象付ける為。振れるサイコロの数を増やし、猟犬を墓地に送る事でより強く印象付けた。

 ジョンは思った筈だ。ウツロがより早くフィールドを解放しようとしていると。だからジョンも、より早くフィールド解放を目論んだ。


 それこそ、ライフを犠牲にしてでも。


 先程のウツロの攻撃、フィールドの解放を優先して猟犬と相打ちなんてせず、ジョゴズや月の獣の攻撃を防いでいれば、あるいは手札を整えるのではなく盤面を伸ばしていれば勝負は分からなかった。


 手札を整える事を選んだのは、フィールドを解放している自分と解放出来ていないウツロという差が生んだ油断と、常に猟犬が1枚見えている状況に慣れた事。

 その1枚ばかりを警戒して手札にあるかもしれない2枚目の警戒が薄くなった。

 見えている猟犬なら事前に対処できる。そう考えているから、簡単に山札を確認すると思っていた。


 バトラーが最も油断する瞬間は、自分のフィールドが解放された時。

 ステラバトルで最も勝利に近づく方法はフィールドを解放する事であり、ステラバトルの勝利者は先にフィールドを解放したプレイヤーではない。


 ステラバトルの勝利条件は、相手プレイヤーの体力を0にする事。そこにフィールド解放の有無は関係ない。

 フィールド解放ばかり見て、相手プレイヤーを見なければ足元を掬われる。


「……最初から貴方の掌の上だったのですね」

「言ったでしょ」


 怪鳥が、猟犬が、ジョンを襲う。シュトロームでは、猟犬の片方しか止められない。


「未来ばかり見過ぎたんだよ、あんたは」

『ジョン・タイラー 5→0』


 勝者が決まり、結界が消える。

 勝負を終えたジョンは、ぐったりとその場で膝をつく。


「大丈夫ですか?」


 無理矢理勝負を仕掛けられとはいえ、相手はマリアの上司。流石に無碍には出来ないと手を差し伸べる。

 ジョンはウツロの手を掴むと、ゆっくりと立ち上がる。


「この老体にはキツい戦いでした」


 激しいバトルを繰り広げた後なのに、朗らかな雰囲気は崩さない。

 優しい口調も相まって、どうにもこの人相手には調子を崩される。


「何か分かりました?」


 ステラバトルでなければ、ついつい敬語で話してしまう。


「えぇ、貴方がとても優しいということが」


 恨み言の1つでも返ってくるかと思いきや、返ってきたのは予想外の返答。


「もし、貴方が本気で力を振るっていればこの程度の機械など簡単に壊せるでしょう。もちろん私も無事では済まない」


 確かにそうだ。この力を本気で振るえばどうなるんだろうと、考えた事がないと言えば嘘になる。考えたところで後が怖すぎて振るう気などないけれど。


「貴方は本当に優しいのでしょうね。力を抑えるだけでなく、無理矢理勝負を挑んだ私の心配までしてくれる」

「まあ、悪い人ではなさそうだったんで」


 勝負自体は無理矢理だったが、久しぶりに強敵とバトル出来てとても満足している。これだけ満足できたバトル、一体いつぶりだろうか。


「貴方の情報ですが、全て私の所で堰き止めてあります。天乃河さんの事も私しか気づいていません」


 誰にも言うつもりはありません、と言うジョンは真剣な眼差しでウツロを見る。その目に嘘は感じ取れない。


「黙ってくれるなら、それでいいですよ」

「勿論、誰にも言いませんよ」


 遠くから足音が近づいてくる。おそらくお使いから帰ってきたマリアだろう。


「いつでも連絡してください。力になります、今日の埋め合わせもありますしね」


 ジョンから渡されたのは1枚の名刺。裏を見れば手書きで電話番号が書いてある。ウツロはそれを上着のポケットに入れ一息吐く。


 どうにも、イベント塗れの長い長い1日だった。

 帰ってきたマリアを迎え入れ、軽い雑談をして解散する。


 ようやく、長い長い1日が終わった。


今日のカード


フィールド『次元要塞バルクーエ』

解放条件:このカードの下にあるカードの合計コストが30以上。

このカードが解放されていない状態で次元と名のつくカードをプレイした時、そのカードが墓地に行く時代わりにこのカードの下に置いてもよい。

このカードが解放されている状態で次元と名のつくカードをプレイした時、このカードの下からプレイしたカード以下のコストを持つカードをコストを払わずに使用しても良い。


虚無7エナジー『怪鳥シャムタク 4/3』

速攻(召喚したターンに攻撃できる)

このカードの召喚時、手札を1枚墓地に置いても良い。そうした場合、このカードはターン終了時までブロックされない。

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