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カードゲーム世界に転生したけど所持デッキが激ヤバすぎる件  作者: 銀猫


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3/21

天体観測。あるいは白の依代から見た彼

 窓の外。流れ映る建物をぼんやりと眺める。建物から漏れる暖かい光が、反対車線の車に遮られる回数が増えていく。映る景色が少女の瞳を彩るも、彼女が見るのは記憶の一ページ。


「よろしかったのですか?」 


 低い声音。車を運転する老執事からの問い。

 後部座席に座る少女。天之河ヒカリは曖昧な問いにはっきりと答える。


「えぇ、まだその時ではありませんから」


 思いを馳せるのは、先刻会った男性。古守ウツロ。

 改めて思い出す。彼と私の物語。


 古守ウツロは、天之河ヒカリの恩人である。


 天之河家は精霊の血を引いている。遠い遠いご先祖様は、精霊を愛し子を育んだ。

 精霊の血は、天之河の一族に特別な力をもたらし、一族は大きく発展した。そうして代を重ねる毎に、血は薄まり、力も同様に薄まっていった。現代において、天之河の血は力を持たない。天之河ヒカリを除いて。


 隔世遺伝。もはや只人と変わらない天之河一族の中で、天之河ヒカリは精霊の血が半分流れている。しかし、一族に繁栄をもたらせた祝福は、長い時をかけて呪いに変わっていた。

 ヒカリの体が精霊の力に耐えきれなかった。流れる血の半分が精霊のモノでも、器たる身体は100パーセント人間。精霊の母体から生まれた優れた肉体ではない。強すぎる力に脆い体。酷く不安定な状況が長く続き、一年の大半をベッドの上で過ごす。そんな娘を助けようと、ヒカリを溺愛する父が狂気に走るのは無理のない事だった。


 父は考えた。流れる血はどうにもできない。だから、脆い器をどうにかしようと、父はある組織と手を組んだ。組織と父は精霊を宿すカードを集め、精霊の力を吸い出し、その力でヒカリを精霊に変える計画を立てた。精霊のカードを集めるため、会社の力と組織の力を使ったカード狩りは、多くの被害者を生んだ。

 カード狩りを止めるため、沢山のバトラーが動き、ついに父の企は暴かれた。が、父は最後の抵抗で集めた全エネルギーをヒカリに注いだ。

 結果、ヒカリの肉体は精霊へと近づいた。天使のような輪が頭上に現れ、光り輝く6つの羽根で宙に浮く。その姿は天使のようで、神話に語り継がれた白の神の使徒そっくりだった。だが、完全変化には圧倒的にエネルギー不足だった。足りないエネルギーを集めるため無作為に暴れ回る暴走状態。


 もし、この世界に本筋というものがあったとすれば、暴走したヒカリと戦うのは朱星ホムラだった。

 囚われた精霊達を開放し、彼らの力を借り暴走したヒカリとバトル。ギリギリの勝負に見事勝利し、ヒカリの内包する力を削り、弱まった力を精霊達の力を借りて白紙のカードに封印することで事件を解決した。

 そんな、あり得た筈の世界。しかし、そうはならなかった。


 暴走したヒカリはエネルギーを求めて襲い掛かる。その特性を利用し、多数の精霊の力を借りたホムラがヒカリと対峙する。自分を囮にした作戦は、成功したかに見えた。エネルギーを囮にヒカリを誘い込み、いざバトルが始まると思った瞬間、ヒカリはホムラから視線を外し、超スピードでどこかに飛んで行った。

 成功したかに見えたホムラの作戦。それに一つ見落としがあったとすれば、沢山の精霊の力を借りたホムラ。そのエネルギーを大きく上回るエネルギーを宿したバトラーがいた他にいたこと。

 そう、ウツロである。


 暴走した時の記憶を、ヒカリはあまり覚えていない。

 だが、あのバトルだけははっきりと記憶に刻んでいる。


『天翼の守護者ハクアで攻撃』

『無形なるモノでブロック』


 モンスター同士の激突。その余波で傷つくウツロの体。負ければ命も危ない闇のバトル。


『そんなにエネルギーが欲しいなら、好きなだけ食わせてやる』


 ホムラは精霊達の力を借り、自身のエネルギーをヒカリのエネルギーと正反対の性質に変化させ、ぶつけることでヒカリの力を削いだ。

 ウツロはその逆。自身のあふれ出るエネルギーをたらふく食わせることで、ヒカリの器を完成させようとした。


『 超覚醒 』


 ソレは、宇宙の始まり。


『目覚めろ――』


 ソレは、万物の王


『――白痴魔皇アザ・トール』


 ヒカリは忘れない。

 現れるは無限の渦。その中心にあるのは玉座。そこに座すり眠る暗黒を纏う魔王。ソレは人型に見えた。だが、決してヒトではないナニか。魔王という陳腐な言葉では表せない圧倒的な存在。暗黒を鎧として纏い、混沌を王冠として頂く無限の擬人化。

 冒涜なまでに美しいフルートの音が魔王の目を覚ます。狂気を宿す瞳が、開かれた。


 天之河ヒカリは忘れない。

 宇宙を滅ぼしえる魔王の姿を。

 それを操る、古守ウツロの姿を。

 ――命を懸けたバトルの中であっても、ステラバトルを純粋に楽しむウツロの顔を。その笑みを。


「……」


 移り変わる窓の外。決して変わらぬかつての光景。

 今でも思い出せる、ヒカリを救ったバトルの全て。


 あのバトル。ウツロの勝利で終わったバトルで、天之河ヒカリは完成した。

 無限に思えるエネルギーをこれでもかと与えられたヒカリの器は進化、内包するエネルギーにもはや負けることはない。


 ただし、その肉体は父や組織が描いたモノに非ず。


 外なる神の力は、常識の外にあり。

 彼らが思い描いた計画は、最後の最後で致命的な出目を出した。人工精霊計画初めての成功例になるはずの少女は、その肉体を人の領域を外れぬまま完成に至る。

 人の領域を外れず、されど内に宿すのは精霊を超える力。そのあり方を人は矛盾と呼び、混沌と表した。

 或いは願い。ウツロの願い。人として生きてほしいという希望。その結果が今のヒカリである。


 古守ウツロは、天之河ヒカリの恩人である。

 だから、今度はヒカリが助けるのだ。彼が、大好きなステラバトルをいつでもできるように。彼の笑みが枯れないように。


「いえ、その事ではなく」

 

 決心を新たにするヒカリに、老執事はバックミラー越しに微笑ましい視線を向ける。

 

「老婆心ながら、お嬢様はもっと我儘になってよろしいかと」


 未だ意味の中心が分からない。首を傾げるヒカリに、老執事はくすりと笑み零す。


「使命など関係なく、お会いになってもよろしいのではと、じいやは思います」


 ボフッ、とヒカリの顔から湯気が吹く。真っ赤に染まった顔を、誰にも見せない様に俯かせる。例え僅か一瞬のうちにすれ違う車にも、この顔は見せたくなかった。

 

「い、いずれ、いずれです、そ、それは…」


 古守ウツロは天之河ヒカリの恩人である。それ以上に、


 ――古守ウツロは、天之河ヒカリの想い人である。天之河ヒカリはどうしようもなく、古守ウツロに恋しているのだ。


 故に、これは使命ではなく。

 好きな人の笑顔を見たいという、ヒカリの欲求なのだ。


本日のカード


光8エナジー『天翼の守護者てんよくのパラディオンハクア』 7/7

このカードの召喚時、自分フィールドの全てのモンスターと自分プレイヤーの体力を5回復する。(元の数値は超えない)

自分のターン終了時、このカードはアンタップする。

『覚醒』

光のフィールドが解放されている場合、このカードは以下の効果を持つ。

このカードはダメージを受けず、効果で破壊されない。

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