立つ鳥跡を濁すべからず
「自分フィールドのモンスター1体を選び、破壊する!!俺は無限龍ウルボロスを破壊!!」
無限に連なる墓標に、また1つ新たな名前が刻まれた。
破壊されたウルボロスは、大地に潜り輪廻の輪に還る。
「ウルボロスを破壊したことで、俺はデッキの上から8枚のカードを墓地に送る!!」
8コストのウルボロスが破壊された事で、デッキの上から8枚のカードが墓地に送られた。
カゲフミのデッキ残り枚数は少なく、墓地の総数はデッキの残り枚数を上回っている。
「これで、オレの墓地のカードは20枚を超えたァ!」
カゲフミのフィールドが、黒い光に包まれる。夜の様に明るく、闇の様に濃い影色の光。
「オレの墓地が20枚を超えた事で、フィールド無限墓標が解放される!!」
死者の名前を刻むだけだった墓標から、埋葬された死者達の力が溢れ出す。
フィールドが解放された事で力を取り戻した無限墓標だけでなく、もう1枚のカードもまた真の力を発揮する。
「無限龍ウルボロスの覚醒効果ァ!!」
墓地に眠るカゲフミの切り札。無限を冠する黒い蛇龍の心臓が、鼓動する。
「自分の黒のフィールドが解放されている場合、このカードは墓地から召喚できる!!さらに!!オレのフィールドのモンスターを好きな数破壊する事で、破壊したモンスター1枚につき、このカードの召喚コストを1下げる事ができる!!オレはフィールドに残された4体全て破壊!!」
虚無神殿に繋がれたモンスター達が、冥府より現れた手によって引きずり込まれた。
「無限の輪廻より再び来たれ!!ウルボロスゥ!!!!」
自分のモンスター達を生贄に、黒き蛇龍が再び現世に舞い戻る。
「ウルボロスの効果!!虚光の大神官を破壊!!」
一度破壊され墓地に送られた事で、ウルボロスは自身の能力を取り戻した。
蛇龍を拘束していた虚無の鎖は存在しない。
「ワールドデストラクション!!」
ウルボロスの放った破壊の光が、大神官を飲み込む冥府に叩き込む。
虚光の大神官が破壊された事で、男のフィードはガラ空き。
「闇4エナジー!!スペル!!ゾンビアサルトを発動ォ!!!!」
ウルボロスの覚醒効果により、自分フィールドのモンスターを生贄にコスト軽減を行った事で、カゲフミはスペルを撃つだけのエナジーを確保している。
「このターン墓地から蘇生したモンスターは相手プレイヤーを攻撃できる!!ただし、このターン攻撃したモンスターは攻撃終了時に破壊される!!」
スペル、ゾンビアサルトの効果により、召喚されたばかりのウルボロスでも、自壊効果と引き換えに相手プレイヤーの攻撃が可能となった。
「バトルだァ!!無限龍ウルボロスで相手プレイヤーを攻撃!!タナトスエンドォ!!!!」
ウルボロスが天に吠える。
黒き蛇龍に呼応し、教団の男の足元に黒い魔法陣が展開されると、冥界に引き摺り込まんと重圧と紫電が降り注ぐ。
「グッ!?」
『虚教団の男 15→7』
大きなダメージを受けた筈の男だが、本体には思ったほどのダメージが入っていない。
どうやら結界が細工されており、結界を展開した男に対するダメージは少なくなるようだ。
「攻撃終了時、ゾンビアサルトの効果でウルボロスが破壊される」
プレイヤーへの攻撃と引き換えに、スペルの反動でウルボロスが破壊される。
これでカゲフミのフィールドも空っぽ。攻撃できるモンスターはなく、カゲフミにできる行動は、ただ1枚を残してない。
「まだだ、まだ、オレの攻撃は終わってねェ!!無限墓標の解放効果ァ!!!!」
解放されたフィールド、無限墓標がここにきてようやく解放効果を発揮する。
「1ターンに1度、自分モンスターが破壊された時に発動できる!!破壊されたモンスターのコストの2倍の枚数、墓地からデッキの下に戻す事で、破壊されたモンスターをフィールドに呼び戻す!!」
ウルボロスのコストは8。よって16枚ものカードが墓地から山札に戻り、フィールド無限墓標の効果が起動。
「三度現れよ、無限龍ウルボロス!!!!!!」
無限を司る龍に終わりはない。
例え何度破壊されようとも、冥界の魂すら糧に変え、黒き蛇龍は幾度でも現世に帰還する。
「ゾンビアサルトの効果は依然継続中。よってウルボロスの攻撃は可能!!バトルだァ!!!!」
ゾンビアサルトの効果で墓地から現れたウルボロスは攻撃が可能となり、男のフィールドにらモンスターが存在しない。
「消し飛ばせ!!ウルボロス!!!!タナトス、エンドォ!!!!」
「ーーーーッ!!」
『虚教団の男 7→0』
ウルボロスの咆哮と共に放たれた重力と紫電の嵐が、男の残されたライフを削り取る。
勝敗が決まり、隔離結界が解除されると同時に男が大きく後ろに吹き飛んだ。
「チッ!手こずらせやがって」
少しハラハラしたが、見事勝利したカゲフミ。
ウツロはふぅ、と安堵の息を吐き出しながら、もう片方のヒカリに視線を移す。
ヒカリもまた、勝負が佳境に入る所だった。
「虚炎の武神官で攻撃」
「天空騎士レイナでブロック」
虚炎の武神官の猛攻を、純白の盾と剣を持つ女騎士が受け止める。
「攻撃」
「ブロック」
届かない。
「攻撃」
「ブロック」
届かない。
「攻撃!!」
「ブロック」
男の攻撃は、届かない。
「ターン、エンド」
『虚教団の男 10』
虚教団の男の攻撃を涼しい顔で防ぎ切ったヒカリ。
「私のターンです」
『天乃河ヒカリ 20』
何より驚くべきは、2人のライフ差。
今の攻撃だけじゃない。男の攻撃は1度足りたも、ヒカリにダメージを与えていないのだ。
「ドロー、エナジーチャージ」
2人の間にあるのはライフ差だけにあらず。
ただ、圧倒的なまでの実力差。悲しいほどの差が、ライフ差に直接現れているに過ぎない。
「光8エナジー」
教団の男が放つ攻撃では、ヒカリの肌に一筋だろうと傷を残す事が許されない。どんな一撃であろうと、純白の守りで防ぎ切る。
天乃河ヒカリは誰にも負けるつもりはない。たった1人を除いて。
「絶対の守護、光と共に、天翼の守護者ハクアを召喚」
『天翼の守護者ハクア 8/8』
天乃河ヒカリの切り札が降臨する。
絶対の守護者にして、悪しき者を斬り伏せる断罪の剣。
「私、結構怒ってるんです」
ウツロからはヒカリの後ろ姿しか見えない。ヒカリが今どんな表情をしているか分かるのは、対面している男だけ。
だが、見なくても分かる事がある。ヒカリが吐き出す言葉の一つ一つには、静かで、けれど確かな怒りが込められている。
「楽しい1日だったんです。楽しくて、幸せで、今日の思い出が、どんな宝石よりも綺麗な宝物になる筈だったのに、最後の最後であなた達に汚された」
これまで歩んできた人生でもトップクラスで幸せな1日になる予定だった。いや、なっていたのだ。
だが、邪な乱入者のせいで最後の最後にケチをつけられた。
無粋な邪魔者に対する怒りは、今もなお高まり続けている。
「足掻いて見せなさい。その尽くを、叩き潰してあげましょう」




