突発激突衝突
暗闇に覆われた空間。閉ざされていた天蓋が割れ、純白の極光が世界を照らす。
割れた頭上から白光と共に純白の竜が舞い降りた。しなやかな巨体は、鱗の一つにいたるまで白く染め上げられ、降り注ぐ光と共に神々しさを感じさせる。
どこかヒカリが使うモンスター達と似た気配を感じるが、決定的に違うと本能が告げてくる。
清廉で潔白、暖かな光と神々しさを兼ね備えるヒカリと違い、見た目は神々しく感じるが、他者を一切寄せ付けない排他的な光に、中身を感じさせない空っぽな白。
虚白と言う名前がまさに本質を示している。
「アルビオンの召喚時効果発動。このカードよりもコストの低い相手モンスターは全て、自らが持っている能力を失う」
白き竜が纏う極光が輝きを増す。
「全てを虚無に染め上げろ!バニッシュメントレイ!!」
虚無を内包する幾筋もの極光が、ホムラのモンスター達に突き刺さる。
極光が突き刺さったモンスター達は苦悶の咆哮を上げながら、自らの輝きを失い、虚ろな白色に染め上げられた。
「ヴァ、ヴァーミリオン!!!!」
「君のモンスター達が能力を失った事で、ボクのフィールドが真の力を発揮する」
虚白竜ドラグ・アルビオンの効果をトリガーに、フィールドの効果が発揮される。
「自分のターンに一度、相手フィールドに存在する効果を持たないモンスターの数だけこのカードにカウンターを乗せ、カウンターの合計が5個以上になった時、このフィールドは解放される!!」
ホムラのフィールドには、アルビオンによって効果を失ったモンスターが合計で5体。フィールドに乗るカウンターの数は、5。
「フィールド解放、虚空神殿!!」
フィールドが解放されると同時に、地面から数本の鎖が現れ、ホムラのモンスター達を縛り上げた。
「虚空神殿の解放効果。このカードが解放されている間、お互いの効果を持たないモンスターは攻撃する事ができない」
バニラモンスター限定かつお互いを対象にする代わりに発揮される強力なロック効果。アルビオンの効果によりホムラのモンスターは能力を失った為、全てのモンスターが虚空神殿に囚われた。
「ボクはこれでターンエンド」
「くっ……!俺のターン!!」
数の優位性は崩された。ホムラの盤面に並んだモンスターでは勝負を決められない。残された1のライフが、酷く遠い。
「ドロー、エナジーチャージ」
ホムラの手札は2枚。
「俺は炎5エナジーで竜剣士バーズを召喚。バーズの召喚時時効果で虚白竜ドラグ・アルビオンに3点のダメージを与える!」
『竜剣士バーズ 4/3』
『虚白竜ドラグ・アルビオン7/6→7/3』
ホムラの手札には、出してすぐ攻撃できる速攻持ちのモンスターがいる。だが、ステータスが低く、アルビオンを超えられない。また、コストの関係から竜剣士バーズと同時に出す事はできないため、ここは一度準備して次のターンに仕掛ける。
「俺はターンエンドだ」
「ボクのターン」
希望はある。
だが、あまりに儚い希望。超攻撃的デッキであるホムラが後手に回ってしまったのは、致命的に他ならない。
「虚無5エナジー、スペル虚無の後光を発動。自分モンスターを一体選び、そのモンスターよりコストの低い相手モンスター一体の持つ能力を全て失わせる」
アルビオンから刺す後光が、竜剣士バーズを虚無に染め上げる。
バーズが能力を失った事で、虚無神殿の鎖に囚われてしまった。
「くっ……!」
「バトル、虚白竜ドラグ・アルビオンで攻撃」
白の男が右手を上げると、背後のアルビオンもまた同じように右手をあげる。すると、アルビオンの右手に白の極光が集い始めた。
「アルビオンの覚醒効果。自分の虚無属性のフィールドが解放されている時、アルビオンが攻撃する際に相手の効果を持たないモンスターは必ずブロックしなければならない」
「ボムリザードでブロック!」
「アルビオンは効果を持たないモンスターと戦闘する時、そのモンスターを破壊する!!ジャッジメントレイ!!」
アルビオンが放つ光が、迎え撃とうとしたボムリザードを一方的に打ち砕く。
「虚白竜ドラグ・アルビオンのもう一つの覚醒効果。このカードの効果によって効果を持たない相手モンスターを破壊した時、相手リーダーに1点のダメージを与え、このカードは再度攻撃可能となる」
『朱星ホムラ 13→12』
全てを虚無の地平線へと導く白竜。
放たれる極光は、皆平等に虚無へと染め上げ破壊する。
既に虚無に染め上げられたホムラのモンスター達では、太刀打ちできるはずがない。
「再び攻撃だ、アルビオン」
「竜剣士バーズでブロック!!」
「攻撃」
「ブロック!!」
「攻撃」
「ブロック……!!」
「攻撃」
「ブ、ロック……!!」
『朱星ホムラ ライフ8』
アルビオンが極光を放つ度、ホムラのモンスター達が破壊されライフを削られる。
ホムラに残されたモンスターは相棒のヴァーミリオン一体。
「穿て、アルビオン」
「炎竜王ヴァーミリオンVでブロック……!!」
相棒たる炎竜王は既に、虚無の光に染め上げれている。白竜の放つ極光から逃れる術は、ない。
あっけなく、ヴァーミリオンは極光に撃ち抜かれた。
『朱星ホムラ 8→7』
「止めだ、アルビオン!」
一際大きな光が、アルビオンの口に収束する。
ホムラを守るモンスターはおらず、耐え切れるだけのライフもない。
「ジャッジメントレイ!!」
「うわぁぁぁーー!!」
『朱星ホムラ 7→0』
アルビオンが放った極光が、ホムラを飲み込む。
ライフを全て失い、結界によりホムラ自身も実体化に伴うダメージを受け、大きく後ろに吹き飛んだ。
「へぇ、随分と精霊に好かれているみたいですね」
「うぐ……!」
見た目こそボロボロであるが、実際は見た目ほど大きなダメージはない。
ホムラに憑いている精霊達が、精一杯ダメージを軽減したおかげだ。
「まあいい、勝負はボクの勝ちだ。君の持つ精霊をいただこう」
白い男がホムラに右手を向けると、手に光が宿る。
どんな意味があるのかは分からないが、このままではホムラのカードが奪われてしまう。
勝負は神聖なモノだ。一人のカードゲーマーとして極力割り込むような事はしたくない。対戦している本人達が最後まで諦めていないなら尚更だ。
だが、勝負が終わった後のコレは話がまるで違う。
「待ーー」
「見つけたぞ……!!」
白い男がホムラに到着する前に、なんとか割って入ろうと走り出したウツロだったが、ウツロが到着するよりも前に黒い影が白い男に襲いかかる。
「貴様は……!」
「久しぶりだなクソ教団……!!」
黒い影が振り下ろした拳を、白い男は大きく後ろに下がる事で避けた。
ゆっくりと顔を上げる黒い人影は、先ほど出会った朧月カゲフミ。
「黒の復讐者か」
「今日こそ返してもらうぞ、あいつから奪ったカードを!!」
二人が睨み合っている中、一歩遅れてウツロとヒカリがホムラの元に辿り着く。
「大丈夫かホムラ!」
「……、安心してください。見た目はボロボロですが、大きな外傷はないようです」
ヒカリとウツロ、新たな乱入者に顔を歪めた白い男だったが、二人の顔を見ると更に大きく顔を歪める。
「白の代行者に、異神使い……!!」
男がウツロに向ける視線には、これでもかと言わんばかりの憎しみが込められている。
強い強い怒りが男の体から溢れ出し、両手をこれでもかと握りしめたかと思うと、無理矢理怒りを体から排出する為に、大きな息を吐き出した。
「命拾いしたな朱星ホムラ」
「アァ?テメェ、逃げる気かァ?」
「勘違いするな。貴様からではない」
白い男が指笛を鳴らすと、虚空より大きなフードで顔を隠した二人組が現れた。
「今はまだ白とは戦いたくない。それ以上に、異神とは戦うなと強く言われている」
「おい!テメェ!!」
「後はお前達が相手しろ」
男の命により襲いかかる二人組。
二人組に後を任せ、白い男はこの場から逃げだそうとしている。
男を追いかけたい所だが、二人組は明らかにホムラを狙ってきている。逃げようとしている白い男を追うよりも、弱っているホムラを守ることの方が先決だ。
男を優先してホムラを無視する訳にはいかない。
「邪魔だクソ野郎ォ!!」
二人組の内、片方がカゲフミと激突する。
「ウツロ君はここに。残りは私が片付けます」
残った片方の前に、ヒカリが立ち塞がる。
「「フィールドセット、虚空神殿」」
ホムラとウツロを残し、ヒカリとカゲフミは二人組が展開した隔離結界に飲み込まれる。白の男は、今の一瞬を利用して何処かに逃げ去ってしまっていた。
ひとまずホムラを襲う脅威はなくなった。
残されたウツロは、ホムラを守りながら今から戦う二人に目を向ける。
ヒカリの強さは知っている為心配はない。ウツロはもう片方のカゲフミの戦場を見る事にした。
「教団は全部俺が叩き潰す!!フィールドセット!!無限墓標ォ!!」




