確信した団長と不安な事務員
「以上が、依頼の内容というわけだ」
ジョナサンはグロリアとユキナリを前に、アマーストの依頼について話した。彼の傍らにはアリーナが立っていた。メレディスも事務椅子に座ったままそちらに体を向けていた。
「ああ、『オカルト関係』ってそういうことだったんですね」
グロリアがうなずきながら言うと、ジョナサンは驚いた。
「えっ?グロリア、知っていたのか?」
「依頼人のアマーストさんにチラシを渡したのは、あたしですよ。『オカルト関係でも大丈夫ですか』とだけ尋ねられて、詳しい話は聞きませんでしたが」
「なるほど、そうだったか」
「でも団長、大丈夫なんですか?あたしたちの中に霊媒師なんていませんよ?」
「心配するな。多分依頼人が見たのは、幽霊なんかじゃない」
「そんな、話だけで確証を持っていいんですか?あたしはお化けなんて大の苦手ですからね」
「ああ、お前には話していなかったか。俺の友達にオカルト雑誌の編集長がいるんだが、そいつの話では、いわゆる『見える』やつは、あんなに動揺しないものらしい」
ジョナサンは自信ありげにそう話したが、グロリアは反論した。
「根拠はそれだけですか?なんか頼りなくありませんか?」
「依頼人は初めて幽霊を見たって言っていたから、霊感はないと思う。そんな人間が急に幽霊を見るようになったとは、ちょっと考えにくい」
「じゃあ、アマーストさんはなにを見たって言うんですか?」
「それを確かめるのが、俺たちの仕事だ。もう日が落ちた。さっそく出かけるぞ」
ジョナサンの言葉に、アリーナはぎょっとした。
「今からですか?急すぎませんか?」
「善は急げだ。いいな、みんな?」
アリーナとグロリアは、渋々うなずいた。ユキナリは無表情を崩さず、首を縦に振った。
「仕方ありませんね。メレディス、そういうわけなので留守番をお願いします。残業代は出しますので」
「わかりました。皆さん、お気をつけて」
メレディスはアリーナの言葉に事務的な返事をしたが、内心は不安だった。この古い建物にひとり取り残されて、万が一なにかあったらと少し寒気さえ覚えたからである。風でガタリと鳴った窓枠が、余計に怖さを倍増させた。
ジョナサンたちを見送った後、急に事務所はしんとした。メレディスは仕事に集中しようとしたが、ギャアという鳥らしき声が聞こえて、思わず自分自身を強く抱きしめた。




