嫌な予感
3人を見送ってから、ジョナサンとアリーナは事務室に戻った。そしてグロリアとユキナリに学生たちの依頼を話した。メレディスも、団長の方に向き直って話を聴いていた。
「と、まあそういうわけだ。いつものペット探しだと言いたいけど、ひとつ気になることがある」
「なんですか?」
グロリアが返答を促すかのように尋ねる。
「いくらリーなんとか教授が引きこもっていても」
「リーベカッツェですよ」
アリーナはすかさずツッコミを入れた。ジョナサンは少しムッとしながら続けた。
「話の腰を折るんじゃねえ。まあいい、そのリーベカッツェ教授は、ここよりデカイ調査団に手紙ぐらいは書けるはずだ」
「あたしだって猫ちゃんのためにはそうしますよ。あー、シャロちゃんどうしているかな」
グロリアの言葉に、ジョナサンは少し呆れた。
「シャーロットだっけ。お前も猫に高尚な名前を付けているな。いや今、そんなことはどうでもいい。問題は教授の猫だ」
「ほかの調査団に依頼しないということは、まさか」
アリーナは事の重大さに気づいて息をのんだ。ジョナサンは大きくうなずき、話を続けた。
「ああ、お前の予想は多分当たっている。アリーナ、すぐに大学に行って教授の住所を聞いてきてくれ。もたもたしている場合じゃねえ」
「わかりました」
アリーナはそう返事をすると、さっそく出かける支度を始めた。
「あたしたちはどうすればいいでしょうか?」
グロリアがそう言ったので、ジョナサンは彼女とユキナリをじっと見据えて答えた。
「体力の温存と、武器の手入れだな。こうなりゃ、団員総出だ」
「4人しかいませんけどね」
グロリアのツッコミに、ジョナサンはムッとした。
「うるせえ!あ、そうだ、メレディス、アリーナが帰ってきたら俺たちもすぐ出ていく。そうしたら、事務所はお前ひとりにだから、色々よろしくな」
「わかりました」
メレディスはうなずいた。新人なのにひとりで留守番なんて大丈夫なのだろうかと、内心では不安で仕方なかったが、彼はそれをぐっとこらえた。そうこうするうちに、アリーナがバタバタと事務所から出て行った。残された4人はしばらく沈黙していたが、不意にユキナリが口を開いた。
「体力の温存が必要ならば、ここらで茶でも飲んで待たないか?私がいれてくる」
「ありがとう、ユキナリさん」
「ありがとうございます」
「悪いな、気を使わせちまって」
グロリアとメレディス、ジョナサンのお礼を背中に浴びながら、ユキナリは給湯室へと向かった。
4人が香り高いお茶を飲んでいると、アリーナが軽い足音を立てながら戻って来た。
「アリーナ、お帰り。どうだ、うまいこと聞き出せたか?」
ジョナサンの問いに、アリーナはうなずいた。
「ただいま、ジョナサン。はい、あっさり教えてもらいましたよ。どうやら大学側も困っているようです」
「やっぱり、俺の読み通りみたいだな。よし、みんな聞いてくれ。まずは教授の家に行って確認しよう。だいたいの作戦は立ててある」
そう前置きして、ジョナサンは自分の考えを団員たちに伝えた。アリーナとユキナリ、グロリアは揃ってうなずいた。メレディスは一応、団長の方を向いて真剣に話を聞いていたが、自分はただ傍観することしかできないとぼんやり考えていた。




