納得いかない団長
調査団一行はパトリシアの導きで森を出た。パトリシアがただいまと言って屋敷に入ると、すぐにエリナーが駆けつけてきた。
「パトリシア様、よくぞご無事で。いくら修業がお好きとはいえ、森で夜を過ごすなど無謀なことはおやめください!」
「心配させてごめん。どうしても、自分を試してみたくって」
エリナーの気迫に気圧されたパトリシアを見て、ジョナサンは疑問を口にした。
「エリナーさん、あんた、ナチュラルに『修行』と言ったよな。まさか本当のことを知っていて、俺たちに黙っていたのか?」
その言葉にエリナーは恥ずかしそうにうつむいた。
「はい、黙っていたことは謝ります。でもお嬢様が森で修行していたなどと、貴族の体面に関わりますので」
「はあ、そういうもんなのか」
釈然としないジョナサンをよそに、ユキナリは言った。
「私はいいと思うけどな」
「よくありませんよ!お嬢様のこのような趣味のせいで、何度縁談が破談になったと思っているのですか!」
「そうだったか。それはすまない」
髪を振り乱さんばかりのエリナーに対して、ユキナリはそう詫びた。だがエリナーは気持ちが治まらない様子で、頭を抱えている。パトリシアも困惑顔だった。アリーナは一旦、場をしめるように言った。
「エリナーさん。とりあえず成功報酬は1週間以内の支払いで構いません。パトリシアさんの趣味のことは、そちらでなんとかしてくださいね。私たちは、馬車の最終便を逃すわけにいかないので帰ります」
「わかりました。明日、使いの者を向かわせます。リュシストラトス調査団の皆様、本当にご迷惑をおかけしました」
「いえいえ、私たちは自分の仕事をしただけですよ。ほら、皆さん帰りますよ」
「わかった」
ジョナサンは少し不服そうに、そう返した。
一行は再び馬車に乗り込み、ケントルム市へと戻った。到着したころには、もう日が暮れかかっていた。事務所のドアを開けると、メレディスが出迎えてくれた。
「皆さん、お帰りなさい。大丈夫でしたか?」
「ああ、なんとかなった」
ジョナサンはそう答えたが、メレディスは率直な疑問を口にした。
「団長、つかぬことを聞きますが、どうしてそんな顔をしているんですか?眉間にしわが寄っていますよ」
「だってお前、信じられるか?貴族のお嬢様を探して森に入ったら、当の本人はサバイバル生活をしていたんだぜ!」
「ええっ、本当ですか?」
「ああ、火吹き鳥を弓で仕留めてさばいていた。おいおいと思うだろ?」
「はあ……」
「俺さ、勝手に期待していたんだ。森が好きなお嬢様は、きっと童話に出てくるエルフのような可憐な人だと。でも実際はツノイノシシを乗りこなして狩りをする、たくましい姉ちゃんだった。それは眉間にしわも寄るだろ」
「そうだったんですね。それはお疲れさまでした」
メレディスがそうやってジョナサンをたしなめると、グロリアは言った。
「たくましい令嬢、あたしはいいと思いますよ。自立した大人の女性って感じで」
「俺、時代遅れなのかな」
「考えは人によってまちまちですよ。とりあえず、残った仕事を片付けるのが先です」
アリーナにそう言われて、ジョナサンはああと力なく漏らした。




