森の中
出てきたのは中年の執事だった。ジョナサンがエリナーの名前を出すと、彼は言った。
「では、あなた方が今うわさになっているリュシストラトス調査団なのですね」
「ああ、そうだ。まさかケントルム市以外でうわさになっているとは思わなかったが」
「どうぞ、お入りください」
「じゃ、お言葉に甘えて」
4人は応接室に通された。少し待つと、エリナーが入ってきた。彼女は相変わらず、きっちり着こなした服とは対照的な、浮かない表情をしていた。エリナーは一行の向かいに座り、口を開いた。
「皆さん、ようこそお越しくださいました。そちらの赤い髪の方が、団長さんですか?」
ジョナサンはそう言われて、すぐに答えた。
「はい、始めました。俺がリュシストラトス調査団団長のジョナサンだ。よろしくな。俺が来たからには、安心してくれ」
アリーナはいつものようにジョナサンをけん制しようとしたが、やめた。エリナーが彼を、まるで救い主を崇めるかのような目で見ていたからだ。
「それで、問題の森はどこだ?」
ジョナサンは単刀直入に尋ねた。エリナーは恍惚とした表情のまま、答えた。
「屋敷のすぐ裏手でございます。入り口までは、私がご案内いたします。それと探索には時間がかかるでしょうから、軽食をご用意いたします」
「おお、ありがとさん」
ジョナサンは鷹揚にそう言った。彼の態度を補足するかのように、アリーナは礼を述べた。
「本当になにからなにまで、ありがとうございます。全力を尽くして、ご令嬢をお探しいたします」
エリナーの導きで、ジョナサンたちは森の入り口にたどり着いた。森はそこまで暗い雰囲気ではなかった。モンスターが奥にいると聞かされていなければ、普通にピクニックをしてもよさそうな感じだった。
「それでは行ってらっしゃいませ。どうぞお気をつけください」
エリナーは別れ際にそう言った。ジョナサンは彼女に手を振りながら、任せろと言った。アリーナとユキナリ、グロリアもそれぞれ手を振って、森に足を踏み入れた。
森の内部にも特に変わった様子はなかった。モンスターらしい声や影もなかった。令嬢が足を踏みいれた形跡も、落ち葉のせいで見当たらなかった。だが細いながらも道らしい道がひとつあったので、一行はそれに沿って捜索をすることにした。
「なんか、思っていたよりも普通。エリナーさん、自分たちで探したくないから、話を持ったのかな?」
グロリアは率直な疑問を口にした。アリーナは少し考えて答えた。
「でもそのためにわざわざ、ケントルム市まで出向くでしょうか」
その言葉に、ジョナサンも同調した。
「アリーナの言う通りだ。いくらアームストロング家に金があるからって、そこまではしないと思うぜ。まあ、貴族に仕える者の道楽で駆り出されたんじゃ、たまったもんじゃねぇけどな」
「じゃあ、どうしてですかね?」
ジョナサンはあごに手を当てて答えた。
「俺にもわかんねえよ。だから今、こうして探してんだろ」
「わかりましたよー!」
そう言ってグロリアは、口を尖らせながら歩いた。




