ビリジアン市へ
翌朝7時に調査団のメンバーは事務所に集合した。メレディスは少し早く来ていて、今回の旅費を経費にする計算をしていた。彼はジョナサンたちにあいさつした。
「団長、それに皆さん、おはようございます」
「おお、おはようさん。じゃあ、留守番よろしくな」
「はい、行ってらっしゃい。皆さんお気をつけて」
そう言ったメレディスの声は、少し元気がなかった。
ジョナサンとアリーナ、グロリア、ユキナリは馬車の停車場に到着した。4人は万が一のことを考えて、それぞれ武器を持ってきていた。停留所に先客はいなかった。
「団長、弓を持ってくるなんて珍しいですね」
そう尋ねたグロリアに、ジョナサンは自信ありげに答えた。
「いや、そうでもないぜ。最近出番がなかっただけだ。遠くからモンスターを仕留めるには、うってつけだろ?そういうお前も、久々にそのグローブを見たな」
「ええ。人間相手ならば素手で十分なんですけど、さすがにモンスター相手ですから、一応です」
ユキナリはその会話を、刀の柄をなでながら聞いていた。
「皆さん、馬車が来ましたよ。武器を隠してください」
アリーナの言葉を聞いて、各々武器をカバンにしまった。
馬車は朝早いとあって空いていた。車内を朝日が照らしていたが、アリーナは気が気ではなかった。令嬢の安否を思うと、内心では不安で仕方なかった。彼女とは対照的にジョナサンとグロリアは車窓の景色を眺め、ユキナリは表情の読めない顔で天井の一点を見つめていた。
しばらく走ると馬車は自然豊かな土地に入り、ガタガタと揺れた。乗客たちも、容赦なく揺さぶられた。
「今、『ここから先、ビリジアン市』って看板が見えたな」
「もうすぐ着きますかね?あたし、おしりが痛くなってきちゃった」
ジョナサンとグロリアは、そんな会話を交わしていた。アリーナとユキナリは相変わらず黙ったままだった。そんなことなどお構いなしに馬車は走り続け、農地を抜けてさらに進んだ。そうして一同が座っているのもつらくなってきたころ、ビリジアン市の停車場に到着した。
アリーナは事前にアームストロング家別邸の住所をエリナーから聞いていたが、その必要はなかったと悟った。町のはずれに、周囲とは明らかに格が違うであろう屋敷が建っていたからだ。4人は屋敷の方に向かい、正面の門にたどり着いた。門番にはエリナーの依頼できたことを話したので、一行は快く迎え入れられた。
門の向こうには、きちんと手入れされた庭園が広がっていた。低木はきちんと刈り込まれ、全体で幾何学的な模様を作っている。さらにそこかしこには。季節の花々が咲き誇っていた。散策するだけでも丸一日かかりそうなほど庭園は広かった。だがジョナサンたちは庭園に見向きもせず。まっすぐ屋敷の玄関に向かった。その屋敷も見事なものだった。高価そうな木材を使った重厚なドアを中心に真っ白な壁が広がり、規則的に凝った文様を施した窓が配置されている。2階以上の明り取りの窓には、さまざまな色を組み合わせたガラスがはめ込まれていた。ジョナサンはその様子に唖然としたが、すぐに気を取り直してドアノッカーを鳴らした。




