ふたたび冷や汗の依頼人
後日、事件解決の一報を聞いたアマーストは、調査団事務所を訪れていた。
「そういうわけで、イベントサークル『青春の酌』は解散。メンバー全員に停学が言い渡されました。彼らも反省したでしょうから、また誰かを脅かそうなんて思わないでしょう。ですので、もう幽霊に怯えなくて大丈夫ですよ」
そう説明しながら、アリーナは満面の笑みを浮かべていた。アマーストはそれをうなずきながら聞き、礼を言った。
「いやあ、まさか解決していただけるとは思いませんでした。半信半疑だった自分が情けないです。会社のみんなにも、この調査団のことを話しますよ」
「宣伝していただけるのですか?こちらこそありがとうございます」
そう言うアリーナの横に座ったジョナサンは、冷ややかな目でアリーナを見ていた。そしておもむろに口を開いた。
「相変わらず容赦ねぇな、アリーナは。そういえば昔、『氷の女』と呼ばれていたっけ」
「あら、今回の件は悪ふざけをしていた学生たちに非がありますよ。もしかしてあなたは、幽霊を信じていたのですか?」
アリーナの疑問に、ジョナサンはムッとした。
「馬鹿を言え。俺はそんなの信じていないし、怖くもないぞ。むしろアリーナの方がよっぽど怖い」
ジョナサンの言葉に、アリーナはさらに笑みを増した。ジョナサンは後悔したが遅かった。
「なるほど、あなたは私のことをそのように思っていたのですね」
「悪い、言い過ぎた!許してくれ!」
「謝るだけで済むのなら、警察も軍隊もいりません。今お客様がいらしていますから、後でじっくりとお話をしましょうか」
「お願いだ!助けてくれ!」
ジョナサンはそう言って、応接室を飛び出した。アリーナはすみませんねと謝りながらも、笑みを崩さなかった。アマーストはどうすることもできず、ただ冷や汗を拭うばかりだった。