表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/12

幽霊の正体

 夜はさらに更けていき、若者たちの騒ぐ声も聞こえなくなった。不意に公園に近づく足音が聞こえてきた。その音を聞きつけ、幽霊と多数の人魂が公園の入口にふらりと現れた。グロリアはその様子を呆然と眺めていたが、我に返ってすぐ笛を吹いた。その音に幽霊と人魂は気づき、彼女がいる角に近づいてきた。

「うわあああ、助けて!」

 そう叫んでグロリアは、頭を抱えてうずくまった。彼女は恐怖心に支配され、パニック状態だった。


 グロリアの笛の音に気づき、ユキナリは彼女の方に向かった。ジョナサンも茂みをかき分けて、同じ方へ急いだ。ふたりがグロリアに近づこうとすると、ワンドを構えた人影がグロリアの前に立った。

「真実よ、明るみに出ろ、リビール!」

 見るとアリーナがそう詠唱していた。呪文とともに人魂は消え失せ、幽霊は人間の姿になった。

「アリーナさん、ありがとうございます」

 グロリアはほっとしてアリーナを見上げ、さらにつづけた。

「さっきの魔法、なんなんですか?」

「強い魔力を感じたので、打ち消しました。幽霊は魔力をまとった人間で、人魂は魔法で作った偽物だったのです。それよりもグロリア、けがはないですか?」

「はい、大丈夫です」

 グロリアは、肩で息をしながらそう答えた。


「みな、無事だったようだな。一体、誰が幽霊に化けていたのだ?」

 ユキナリは落ち着き払って、魔法が解かれた人の方を見た。彼は黙り、口をへの字に曲げた。ほかの3人は、彼の視線を追った。

「オイ!なんだ、これ!」

 ジョナサンは思わず叫んだ。グロリアは顔を両手で覆い、アリーナはスッと目を背けた。さっきまで幽霊がいた場所には、全裸の若い男性が立っていた。


「おぬし、なぜそのような格好を?」

 ユキナリは平然と、男性にそう尋ねた。

「ご、ごめんなさい!」

 彼は土下座しそうな勢いだった。ジョナサンは眉をひそめて尋ねた。

「そもそも誰だ、お前?ケントルム大学の学生か?」

「はい、そうです。俺はカイル・レッドフォード、魔法学部1年生です」

「全裸でなにをしていた?」

「ええっと、サークルのみんなで飲んで、ノリで通りすがりの人を脅していました」

「サークル?なんのサークルだ?」

「えっと、『青春の酌』というイベントサークルです。まあ、ほとんど飲みサークルですけど」

「なにやってる、お前。していいことと、悪いことがあるだろ」

「すみません!まさか魔法を解かれるとは思わなくて」

「残念ながら、魔法使いがいるのは大学の中だけではないのですよ」

 気分を取り直したアリーナが、割って入って来た。

「す、すみません!二度としません!」

「一度でも許されませんよ。今回のことは、大学に報告させていただきます」

「ええ、俺、どうなりますか?せっかく二浪して入ったのに」

「だったらいい大人のはずですよね。自分の行ないに、きちんと向き合ってください」

カイルは反論できず、そのままうなだれた。

「とりあえず、服を取ってこい。俺がついて行く。3人はここにいて、サークルのほかの連中が逃げないように見張っていてくれ」

「わかりました」

 そう言ったアリーナと、ユキナリ、グロリアの3人はうなずいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ