1.異世界転移でした
「はぁ~」
深いため息を吐く。大学4年生の俺、内無限は就職活動に勤しむこと1年、成果が出ずに現実逃避をしている。いわゆる無い内定というやつだ。この10月という時期に内定の無い大学生は周りでも少ない。いやいないに等しい。
「やってられるかよ!」
飲み終わった空き缶を投げて我に返る。就活前には、お酒などほとんど飲んでいなかったが周りが内定を決める中で一人内定の決まらないストレスで最近は飲む量が増えている。このままではいけないと思うが、思考を放棄する以外に選択肢が浮かばなかった。
「明日も面接だしそろそろ寝るか」
お酒を飲み終えたので早めに寝ることにした。面接の準備など、ろくにしていないので明日の結果もわかりきっているのだが。
ぱっと目を開けると、そこは見知らぬ街に立っていた。周りを見回すと俺と同様に戸惑う男女が4人立っていた。
女A:「ここどこ!?いきなりなんなのよ!」
金髪のギャルのような風貌の女が慌て付ためていている。丈の短いスカートやシャツの着こなしを見てもギャルだ。前世はギャルに違いない。
男A:「俺が知るかよ!」
高身長のいかにもやんちゃしてます、というような男が女に対して声を荒げる。
なぜアクセサリーまでついているんだ?
ヤンキーすぎるだろというツッコミはしないでおこう。
謎の老人:「あーー。こほん。皆、静まりたまえ。」
気がつくと俺等の前に一人の白髪の老人が立っていた。
謎の老人:「わしの名前はアルベルト・ホワイトと言う。ここの町長じゃ。」
アルベルトという老人は、俺の予想通り、俺等が異世界転移したことや何年に一度、異世界転移者が各町で現れること、転移者が元の世界に戻るすべはない解明されてないこと、この町の名前がファジカスであることなどを教えてくれた。
無限:「なるほど。では俺等以外にも転移者がこの世界の何処かでいるのか。」
アルベルト:「そうじゃ!おぬし物わかりが早いのう。流石この町の四勇者候補じゃ。ん?5人?今回の転移者はいつもより多いのう。」
男B:「アルベルトさん。四勇者候補というのは何でしょうか?」
見た目から好青年の男が丁寧な聞き返しをした。
アルベルト:「そうじゃ!大事なことを伝え忘れとってわい。」
アルベルトいわく、4つの町で転移したものの中から実力の高い4人を四勇者とし、時期生まれる魔王を討伐しなければいけないらしい。なんでも一度、魔王討伐に失敗した4人の勇者が実力不足だったため敗北した。そのため転移者を切磋琢磨させるべく4人よりも多く転移者を呼び出すことにしたらしい。全く現代の社会構造らしくて少し腹立たしい。
女B:「四勇者に選ばれなかった候補者はどうなるのですか?」
メガネをかけた三つ編みの女が不安そうに尋ねる。こっちの前世は文学少女だろうな。
にしても皆、キャラが立ちすぎていないか?
アルベルト:「四勇者と同じく魔王討伐に参加して貰う。だが、四勇者のように神器がないため死ぬものが多いがのう。」
女A:「死ぬ!?冗談じゃない!いきなり理由のわからない場所に連れてこられてなんで魔王なんか倒さなきゃいけないわけ!?」
この女の声にキンキンとするが、同意見だ。
男A:「さっきからうるせーなぁ!強くなって、その四勇者になって神器とやらを手に入れればいいんだろ!?こうなったらやるしかねーだろ!」
えーー…こういう男の悪いところだよ。ノリだっけか?ノリ?
アルベルト:「そういうことじゃ。この世界の平和と人類の存続のためにどうか、力を貸してはくれぬか…」
男B:「分かりました。出来る限りの努力をしましょう。」
女A:「あんたも勝手に…!」
男B:「あなたの気持ちも分かりますが、元の場所に戻るすべはないようですし、世界を救うために僕らで協力して戦えば死ぬ可能性も低くなるでしょう。」
女A:「そうね…。わかったわよ!」
そうなるのかー、皆で逃げ出すのも手だと思ってたんだけどなぁ…
男A:「よし!そうと決まれば取り敢えずモンスター狩りだろ!強くなるぞ!」
気が早すぎるだろ。いろいろ武器とか防具の準備が必要だろ。こいつは正真正銘のバカだな…。
しかしこうなれば仕方ない!異世界ライフを満喫しつつ、四勇者とやらになって、魔王討伐してやろうじゃねぇか!
アルベルト:「ちと、待たぬか。その前に武器屋や武具屋、そして一番重要なギルドでのジョブ鑑定に行ってもらおうかなのう。」
ーーギルドへ移動ーー
この町はそこそこの賑わっているらしい。ギルドへ行く前の道で人間以外にも獣人やドワーフ、翼の生えたものもいた。
アルベルト:「ここがギルドじゃ。あとはそこの受付嬢のところでジョブ鑑定を済ませるがよい。わしはここの2階に住んでおるから、何か聞きたいことがあったら尋ねてくるがよい。」
この爺さん、町長と言っていたがなぜギルドの2階に住んでいるんだ?昔は戦っていたりしたのだろうか。
受付嬢:「ようこそいらっしゃいました。四勇者候補の皆さん。私はここの受付をしております。ナリーナ・ベルクと申します。ここでは貴方がたのような初心者様のジョブ鑑定並びにステータス鑑定と依頼金の贈呈などを行っております。まずはこの水晶に手をかざしていただいてジョブ鑑定をお願いします。」
無限:「じゃあまずは俺から鑑定していただこうか。」
ここで先陣を切る主人公展開は、俺がもらうぜ!
受付嬢:「では、鑑定いたしますね。」
稀に見るレアジョブが出てきたり、ステータスが異常な数値を叩き出したり!?
受付嬢:「……。こ、これは!?」
なんだなんだ!?やはり次期四勇者はもらったか!?
受付嬢:「適正ジョブ、ゼロ……。ステータスも全て1……ですね。」
はぁぁぁぁぁぁぁいい!?