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第74話 ミンチや煮込み料理に向いている

「こ、これが歌舞伎町ダンジョンの中ボスっ……」

「まるで雷を纏ってるみたいっ!」

「めちゃくちゃ強そう!?」


 地下30階で待ち構えていた中ボスの威圧感に、メルシーズの面々が思わず後ずさる。


「あの美味しそうなマトンがこのダンジョンの中ボス、ライトニングシープだ」

「「「美味しそう!?」」」

「ああ、実際かなり美味しいぞ。マトンとは言ったが、実際にはラム肉並みに肉が柔らかいんだ」


 ちなみにマトンは成羊の肉で、ラムは子羊の肉である。


『ライトニングシープって食べることができるのですね……。門山碧のパーティで何度か討伐していますが、今まで食べたことはありませんでした。というか、倒した後もあの羊毛がずっと帯電し続けているため、素材として利用できずに放置していましたが』


 そうこうしている間に、ライトニングシープがその頭に生えた二本の角に電気を集束させていく。

 あそこから強烈な雷撃を放ってくるのだ。


「させるか」


 俺は包丁を閃かせ、その角を二本とも斬り落とした。

 地面に落下した衝撃で放電し、俺たちのいるところまで流れてきて少し足がビリっとした。


「メエエエエエエッ!?」


 自慢の角を落とされて鳴く中ボスだが、さらに俺は邪魔な羊毛を遠距離からガンガン刈り落としていく。


〈丸裸にされてて草〉

〈毛がないとだいぶ威圧感なくなるんやなw〉

〈落ちた毛がまだバチバチいってる〉


「電気を排除できたので後は肉を斬り分けるだけだ」


 俺は包丁で中ボスの身体を部位ごとに解体していった。


「まずはネック。首肉だ。旨味が濃く、ミンチや煮込み料理に向いている。これはショルダー。肩肉だ。風味豊かで濃厚な味が特徴だ。そしてロース。肩から腰までの背肉。柔らかくて非常に上質な部位で、中でもリブロースは最高級だ。ジンギスカンやステーキにすると最高だな。ロイン。背肉の後半部分で、リブロースと並んで最高級の部位だ。ランプ。腰から尻、ももにかけての肉だ。クセが少なく、濃厚な味わいが期待できる。レッグ。もも肉だ。脂肪が少なくて赤みが多いため非常にヘルシー。コラーゲンが豊富で煮込むと柔らかくなる」


〈解説付きで草〉

〈ボスがあれよあれよという間に肉の塊に〉

〈切り分けたらすごく美味しそうに見えるようになったw〉


 全長10メートルを超えるボスだったので、相当な分量がある。


「これ、うちの店で食材として使いたいんだが……全部貰ってしまって大丈夫か?」

「も、もちろんですよ! 西田様おひとりで倒してしまったわけですし……」


 念のため飯島氏に確認すると、苦笑気味に頷かれた。


「やった。これで新メニューを作れるぞ。ジンギスカン定食にするか……だが羊肉のシチューも捨てがたいな……」


〈どっちも美味そう〉

〈早く営業再開してくれ~〉

〈黒豚のトンカツも待ってる〉


 俺が羊肉をすべて仕舞い込むと、飯島氏が呆れたように、


「一瞬であの量が消えてしまった……。前から疑問だったのですが、やはり西田様も収納系のスキルをお持ちなのですよね?」

「一応そうだな」


 収納系と言えば収納系だが、収納以外にも使うことができたりと、実はやや特殊な性質のスキルだったりする。


「スキルの幅が広すぎですね……」

「昔、スキルの書を入手しまくったからなぁ」

「……読んだとしてもスキルを入手できないことは少なくないですよね? 通常、収納系のスキルを取得できる場合、戦闘系のスキルを取得しづらいケースが多いのですが。自分で言うのもなんですが、収納系のスキルを持ちつつそれなりに戦えるわたくしは相当珍しいはずです」

「そのはずなんだが、今のところ読んでも取得できなかったことがほとんどないんだよな」

「え……何ですか、そのチートは……」


 チートって。

 別にズルをしたわけではないんだが。


〈マジかニシダ〉

〈スキル書を読めば読むほどスキル入手できるってこと?〉

〈万能かよw〉

〈それは紛れもないチート〉

〈実はニシダがこの世界のラスボス説〉


「はっ、さすがあたしが憧れただけのことはあるな」

「なぜナナが嬉しそうなんですの?」

「っ……べべべ、別に嬉しくなんてねぇし!?」


〈奈々ちゃんかわいいw〉

〈やっぱニシダが好きなんやな〉

〈ついうっかり本音が出ちゃう〉


 中ボスを倒したことで隠されていた階段が出現し、先に進めるようになった。


 階段を下りた先は地下31階

 同じ深層でもここからはさらに難易度が上がり、魔物の凶悪さも増していく。


「グルアアアアアアアッ!」

「はっ、燃え尽きて死にやがれ」

「~~~~~~ッ!?」

「オオオオオオオオオッ!」

「あたくしに襲い掛かってくるなんて愚かな魔物ですわね」

「~~~~~~ッ!?」


 ……もっとも、熟練のSランク冒険者たちにとってはまだまだ余裕があるようだ。


「地下31階の魔物を瞬殺……」

「……西田さんも凄いですけど、彼女たちもさすがはSランカーですね」

「ぼくたちだったらパーティで力を合わせて、やっと安定して倒せるレベルの魔物だよね……それをソロで軽々と……」


 驚くメルシーズの面々。


〈ニシダのせいで感覚バグってるけど、天童奈々もやっぱかなり強い〉

〈あの外国人もSランカーなのか〉

〈誰か知らないけど相当強いのは確かだな〉

〈フレンスの探索者って噂がある〉

〈エルザ=シモン?〉

〈ジャンヌ=ダルクの生まれ変わりとか言われてるらしい〉

〈天童奈々がフレンスで探索者してるからな。あり得る話だろ〉

〈他の人らは誰なん?〉

〈調べてみたらメルシーズってパーティらしい。割と有名っぽい〉

〈全員Aランカーのパーティか〉

〈クラス5のダンジョンを攻略した実績あるようだな〉

〈それくらいじゃないと歌舞伎町ダンジョンは無理だろ〉


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外れ勇者1巻
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― 新着の感想 ―
こんばんは。 人によって得手不得手があるのは当たり前=取得不可能なスキルは有って当然なのに、ニシダさんはその縛りが極限まで薄いのか…そりゃ強くもなるわ(笑) F○Vで例えるなら他の人はジョブに就いて…
ジンギスカン定食をやるってことは、ジンギスカン鍋が必要になるけど……あれ、ものすごく洗いにくいんだよなぁ(遠い目)
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