第114話 サポートしまくりの叔父さん
俺たちは目黒に現れたばかりの新ダンジョンにやってきていた。
「本当なら別のダンジョンに行く予定でしたが、せっかく新しいダンジョンができたので急遽変更しました」
ちなみに実はここ目黒に、鳳凰山38の寮があるらしく、恋音もそこに住んでいる。
今はその寮を出ているという金本美久も割と近いところに住んでいるようなので、ちょうどいい場所だった。
「他のパーティも続々とダンジョンに入っていっているので、俺たちも急ごうと思います。初攻略の先を越されてしまうかもしれないので」
〈タイムアタックまでさせる気かよw〉
〈アイドル二人に初攻略させるだけに飽き足らず……〉
〈もっとパワレベしてからがよくない?〉
〈まぁニシダが一緒だから危険はないだろうけど〉
「ふふ、心配してくれてる人も多いけど、前回のコラボから私たちも強くなってるからね!」
「う、うん……わたしもCランクになれたし……」
〈え、恋音ちゃんもうCランク?〉
〈この間、探索者デビューしたばっかじゃなかった?〉
〈美久ちゃんに追いついてて草〉
〈さすがニシダの血筋や……〉
「美久ちゃんネルでの最近のダンジョン配信の様子を見たんだが、俺の感覚ではもう二人なら下層でも十分通用すると思ってます。さすがにボスとなると少し話は変わってきますが、難しければ俺か加賀さんが加勢すれば大丈夫でしょう」
パワーレベリングも良いが、あればかりだとどうしても実践を積めないからな。
もちろん彼女たちだけの探索では普通に魔物と戦っているのだが、できる限り安全マージンを確保しなければならないため、こちらも実践としての強度は低い。
なのでクラス3のダンジョン攻略は、ちょうどいい実践訓練になるだろう。
そうして受付を済ませると、俺たちは新ダンジョンへ。
「二人だけで攻略とは言いましたけど、時間もかかるので上層や中層はいつものように転移トラップを見つけてサクッと飛ばしていきますね」
〈やっぱショートカットするんかいw〉
〈そりゃ下層に辿り着くだけで半日はかかるもんな〉
〈半日くらい見てられるが〉
〈お前のようなニートばかりじゃないんやで〉
上層はやはり他のダンジョンと似たようなもので、薄暗い洞窟だ。
スライムやゴブリン、コボルトなどの雑魚をあっさり片付けながら、地下1階を探索する。
「それにしても、またこんな感じでコラボができるのが、すごく不思議な感じです」
「え? どうしてだ?」
不意に金本美久が口にした言葉に、俺は首を傾げた。
「だってケンさん、魔族を倒して、迷宮崩壊から大勢の人を救って……今やこの国の英雄ですよ? なんだか遠い存在になっちゃったなって思ってたので……」
「英雄だなんて大袈裟だな。ただの定食屋の店主だぞ」
〈ただの定食屋の店主ちゃうやろwww〉
〈どこがだよw〉
〈英霊がアルバイトしてる時点でただの定食屋じゃねぇ〉
〈深層の魔物の食材を使ってるのも普通じゃないしな〉
「わ、わたしも……昔からよく知ってる叔父さんのはずなのに、なんだか、急に赤の他人になっちゃったような感じがしちゃって……」
「赤の他人!?」
〈言葉のチョイスおかしくて草〉
〈ニシダが姪っ子に他人扱いされてるw〉
〈それくらい遠い存在に感じたって意味だよな、うん〉
〈ワロタ〉
〈そりゃニシダも動揺するって〉
そんなやり取りをしていると、転移トラップを発見した。
例のごとく魔力を注ぎ込んでからトラップを踏む。
〈魔力を入れるのはやっぱニシダなのねw〉
〈魔力量が桁違いだからな〉
〈転移トラップを見つけるのもニシダだし……〉
〈けど魔物は美久ちゃんたちが倒してるぞ!〉
遺跡のような人工的な通路に出た。
「中層に来ましたね。ではもう一度、転移トラップを探しましょう」
〈さすが本家。普通の探索者は一度にこんなに飛べない〉
〈これ次で割と地下15階に近いとこに行けるんじゃね?〉
〈二人だけっていうか、ニシダのサポートめっちゃ大きいなw〉
〈ほんそれ〉
〈初攻略を目指してる他のパーティ涙目〉
中層も他のダンジョンとあまり変わらず、出現するのはオークやリザードマン、エルダーコボルトといったお馴染みの魔物ばかりだ。
「ええいっ!」
「ブヒィッ!?」
恋音が大上段から振り下ろす戦斧が、オークの脳天を粉砕する。
〈須藤恋音、明らかに前より強くなってんじゃん〉
〈普通にオークを一人で倒せるとかヤバい〉
〈オークって中層では割と強い部類に入る魔物のはずだよな?〉
〈さすがCランク〉
「恋音も中層の魔物は余裕そうだな」
「私はそこまで到達するのに、半年くらいはかかったんだけどねぇ」
〈美久ちゃん遠い目〉
〈才能の差をまざまざと〉
〈金本美久でも成長早い方なんだけどな〉
〈須藤恋音はパワーレベリングでブーストかけてるから〉
〈確かにそれは大きいかもw〉
ちなみに恋音は探索者デビューして、まだ二か月程度といったところである。
「探索者としてもアイドルとしてもどんどん成長していく……叔父さん、嬉しいぞ」
〈感慨深げなニシダ〉
〈アイドルとしての成長も見守ってて草〉
〈探索者活動はパワレベで。アイドル活動は金で。サポートしまくりの叔父さん〉
〈いいなぁ、俺もあんな姪っ子が欲しい〉
〈ニートのお前らじゃ何のサポートもできんだろ〉
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