おかえり
「……レガレス、陛下」
ガロンさんの魔法で、レガレス陛下の居室まで戻してもらった私は、うなだれている、レガレス陛下に近寄る。
「君は、魔国に……帰るんだろう」
「はい。聖花も元気になったので、帰らせていただきます。だけど、その前にどうしてもお伝えしたいことがあります。お話、聞いていただけますか?」
ここから、伝えることはただの私の自己満足だ。
だから、もう不要、と言われたら、黙って立ち去ろう。
「……わかった」
レガレス陛下が、顔を上げる。
私がかつて、焦がれた朝焼け色の瞳は、揺れていた。
「私は、あなた――レガレス陛下のことが、ずっと、好きでした。初めて出会った日からずっと」
レガレス陛下に出会った日。
聖花を見て、涙を流した私を笑わずに、涙を拭ってくれた日からずっと。あなたに恋をしていた。
「だから、〈運命〉になってほしいと言われたときは、嬉しかったです。こんな私を〈運命〉にしたいと言ってくださってありがとうございます。……でも」
そっと息を吐きだす。
「その想いには、応えられません」
「……っ!」
レガレス陛下は、ゆっくりと頷いた。そして、続ける。
「だが、もし……来世で君を見つけたら、迷わず、探しに行く。もう、誰にも騙されたりなんかしない。だから――私が、私が間違わなければ……」
「……レガレス、陛下」
私は、ゆっくりと、レガレス陛下の名前を呼ぶ。
「私たちの道は別れました。……でも、誰かに言われたからじゃない。私たちが選んで進んだ道がそうだっただけです」
マーガレット様に思い出を乗っ取られたのは、事実だけど。
私が、レガレス陛下に想いを伝えていれば、ひょっとしたら、私たちの道が交わることもあったのかもしれない。
そんな、くだらない、もしも、の話。
「だから……、レガレス陛下がもう私に拘る必要はないと思います」
「……それでも。それでも、私が拘りたいんだ」
……そっか。それが、レガレス陛下の意思なら、私が言えることは、もう、何もない。
「……それでは、失礼いたします」
さようなら、私の初恋の人。
ゆっくりと、退室の礼をして、部屋から出る。
部屋の外では、魔法で変装したガロンさんと、ユグが待っていた。
「お別れしたい相手は、もう、いないのか?」
ガロンさんに尋ねられて、花奏師長の顔が浮かぶ。
でも、会ったら、ちゃんと言葉にできる気がしなくて。
「……手紙を書くことにします」
「そうか」
ガロンさんは小さく頷くと、一緒に並んで歩き出す。
「……今日は、三メートルあけないんですね」
最近のことなのに、ずいぶん昔のような気がすることを、私がいうと、ガロンさんは渋い顔をした。
「……あぁ」
「三メートルって、なんの話ですか?」
ユグが興味津々で尋ねてきたので、その話をしていると、あっという間に城の外に着いた。
「それでは、行こうか」
ガロンさんが、私の手を握る。
私は、転移魔法が使えないから、こうして、誰かにくっついていないとだめらしい。
「……はい!」
大きく頷いて、目を閉じる。
ふわりと浮遊感を覚えたあと、目を開けると――……。
『わーん、ラファリアー!!! おかえりぃ!!!!!』
アギノが飛びついてきた。どうやら、場所は、ガロンさんの執務室らしかった。
『ばかガロンのせいで、帰ってこないかと思ったよー!!』
ぐりぐりと頭をこすりつけてくるアギノを抱きしめながら、微笑む。
そうだ、私の帰ってくる居場所は、ここしかない。
「……ただいま」
私の言葉に、ユグも、マギリも、アギノも、ガロンさんも微笑んだ。
「……おかえり」
いつもお読みくださり、ありがとうございます。
当初はきついざまぁをレガレスに食らわせる予定だったのですが、
書いてるうちに、そんな雰囲気ではなくなってしまったので、「ざまぁ要素あり」のタグを外しました。
ざまぁに期待して読まれた方には大変申し訳ございません。
国際問題として、ある程度のバツは受けると思いますが、ぬるめかもしれません。
大変申し訳ございません。




