大好きよ
ガロンさんがぱちん、と指を鳴らすと、ローブは消えた。
「ローブをどこに……」
「燃やしたので、もう、どこにもない」
「燃やしただと!? あれは我が国最高峰の……」
冷たく笑うと、ガロンさんは、侮蔑のこもった瞳で、レガレス陛下を見つめる。
「卑劣な魔法が最高峰とは、笑わせる」
「……っ」
「もう、あなたと話すことはないな。……ラファリア」
ガロンさんは、私に向き直ると、私をふわりと抱き上げた。
「!? ガロンさ……」
「怖い思いをさせてすまなかった」
まっすぐに、私を見て謝られる。
「ガロンさんの、せいじゃ……」
「いや、もっと早くに来られたら……いっそ変装でもしてあなたについていけばよかった」
冗談とも本気ともつかないことを、真顔で言われて、緊張がゆるむ。
「……ありがとうございます、来てくれて」
「約束したからな。……それで、あなたはどうしたい?」
どうしたいか……。
「まだ、一応期間は、六日あるが。あなたが帰りたいなら、今ここで連れて帰る」
「……私、は」
正直言って、レガレス陛下は怖かった。
以前の持っていた恋心なんて、吹き飛んでしまうほど。
……でも。
「聖花に、まだ、お別れを言ってないんです。だから……」
「わかった」
ガロンさんは頷くと、もう一度レガレス陛下を見た。
「……聖花の場所に行く許可だけだして貰えるか?」
「……っ、他国の王を行かせられるわけがないだろう!」
レガレス陛下の言葉に、ガロンさんは眉を上げる。
「他国の人間を、引継ぎがあるから、とわざわざ呼び寄せたうえで、卑劣なことをしようとしたのは、誰だ」
「!!!!」
レガレス陛下は、俯き、小さく、……わかった、許可するとだけ言った。
「感謝する。……では」
そういって、ガロンさんは、私を抱いたまま、窓枠に足をかけた。
「大丈夫だ、あなたやあなたの大事な聖花を傷つけたりしない」
「……はい」
ガロンさんの言葉なら、信用できる。
そのまま、窓の外――聖花の花畑に静かに着地すると、ガロンさんは私を降ろした。
「俺は、ここで待ってる」
「はい……ありがとうございます」
私はゆっくりと私の担当していた区画に行く。
「……聖花」
聖花は、風に吹かれてゆらゆらと揺れていた。
聖花、私の大好きで憧れだった、花。
「……さよなら」
でも、私の言葉は、伝わらないかもしれないから。
代わりに、歌で、伝えるね。
私は、目を閉じ、ゆっくりと歌い出した。
聖花に初めて出会ったあの日の感動を、思い出しながら。
聖花、大好きよ。
あなたたちが、私を忘れても、私は、あなたたちを忘れない。
ずっと、ずっと、大好きよ。
……さようなら。
聖花に向けて、最後になるその歌を歌い終わり、ゆっくりと目を開ける。
「!!!!!」
聖花は、完全に復活していた。
でも、物悲しそうに、儚く揺れている。
「さようなら、大好きよ」
後ろ髪を引かれながらも、聖花に背を向けて、歩き出す。
さみしくて、やっぱり涙が出たけれど。
――振り返ることはしなかった。
「……ラファリア」
「ガロンさん、ちゃんとお別れ、できました。ありがとうございます」
私の涙の跡を軽く、拭ってくれたガロンさんにありがとう、と笑って。
もう、ひとり、お別れしなきゃいけないひとがいることをガロンさんに伝える。
ガロンさんは渋い顔をしていたけれど。あなたが望むなら、と頷いてくれた。
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