ふりをして
夢で聞こえた声は、初めて聞く声だったけれど。
光の先にあったのは、紛れもない聖花だった。
だったら、あれは聖花の声?
聖花に必要として欲しいという願望が見せた夢、かしら。
「……ラファリア様?」
「!」
いけない。考え事に集中しすぎていた。
もう、髪は完全に乾いている。
「ありがとうございます、ユグ」
鏡越しにユグに微笑む。
「……いえ。——ラファリア様」
「どうしました?」
ユグは、鏡越しに私を見つめた。
「私たちには、あなたが、必要です。だから、どうか……引き継ぎが終わったら、私と、一緒に魔国に帰って下さいませんか?……」
「……ユグ」
ユグの青い瞳は、不安そうに揺れていた。
……あぁ、私なにやってるんだろう。
急に泣き出したりして、周りにいる人たちを心配させて。
「……もちろ——」
『私の唯一……〈運命〉になってくれないか』
『ずっと、待ってたの』
頷きかけたとき、二つの声が頭に響いた。
そもそも、今の私は、闇獣の世話係で、花奏師じゃない。そして、闇獣の世話係は、公爵と同程度の位置につくほど、重要な仕事だ。
それを、私的な感情で勝手に投げ出していいはずなかった。
「……もちろん、です」
そんなことを考えながら、頷いた。
ユグの瞳がさらに不安そうになったことには、気づかないフリをして。
……翌朝。
よほど疲れていたのか、夢もみないほどぐっすり眠れた。
ユグに朝の支度を手伝ってもらいながら、昨日のレガレス陛下が言っていたことを振り返る。
花奏師ではない私が、聖花に係われるように対策を考えると言っていたけれど……。
どんな対策だろうか。
やっぱり無難なのは、変装、とかかしら。
「……ラファリア様?」
考え込んで俯いていると、ユグが心配そうにのぞき込んだ。
「ああ、ごめんなさい、ユグ。少し考え事をしていました」
「考え事、ですか?」
「はい。……花奏師の件で、少し」
まぁ、私が考えたところで仕方がないか。
何らかの対策を考えてくれるという言葉を信じましょう。
「そういえば、ラファリア様の今日のお仕事には、ついていけませんね……」
そうか、ユグは魔国側の人間だから――私も本当はそうだけど――花奏師、特に聖花とは関われない。
「……そうですね。でも、鈴はちゃんと持っていくので安心してください」
ユグを安心させるように微笑む。
胸に手を置くと、ちりんと鈴が揺れた。
「……はい」
「では、行ってきますね」
「いってらっしゃいませ」
支度が終わったので、ユグの表情が気にかかりつつも部屋を出た。そして指定された場所に向かう。
指定されたのは、花奏師の待機所から遠い、部屋だった。
「……失礼いたします」
ノックをして、中に入る。
中にいたのは、――花奏師長とレガレス陛下だった。
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