弱さと幼稚さ
「……〈運命〉?」
不思議そうに首を傾げたガロンさんに、レガレス陛下から言われた〈運命〉について、説明する。
「……というわけなんですが」
「……なるほどな」
ガロンさんが短く頷く。そして……。
「答えたくなかったら、答えなくていいが。あなたが恋をしていたのは……」
「はい、レガレス陛下です」
頷く。
ガロンさん相手に嘘や隠し事はしたくない。
「…………そうか」
ガロンさんは考え込んだ。
『ばかガロンがしっかりつかまえとかないからー!!』
「こら、闇獣!」
アギノが、マギリの腕を抜け出して、ガロンさんの机に飛び乗った。
『ねぇ、ラファリア。ラファリアは、ボクの世話係だもんね! ……帰ってくる、よね?』
最初は勢いよく、最後は、不安そうに小さな声になったアギノの言葉にはっとする。
「はい、そのつもりです」
上司であるガロンさんたちには伝えた方がいいかと思っていたけれど、かえって不安にさせてしまったかしら。
『つもりじゃ、やだやだ! 絶対って言って!!!!』
「はい、アギ――」
「アギノ」
静かな、声だった。
「……ガロンさん?」
ガロンさんは、声と同じ静かな瞳で、アギノを見つめた。
「この世に絶対なんてない。無茶を言ってはいけない。それに、ラファリアには、自分の好きな場所で働く権利がある」
「……!」
その言葉に、私が衝撃を受けた。
ガロンさんはただ、アギノを諭そうとしただけだ。でも……。
まるで、私は、必要とされていない、そう突き放された気がして、指先から冷たくなっていく。
「……ラファリア?」
『ガロンのばか! ばかガロン!! そんなこといって、ほんとにラファリアが帰ってこなかったらどうするのさ!!』
「それは……悲しいが、ラファリアが恋した人と共に在れるのなら――」
ああ、なんだ、そっか。
ガロンさんの言葉に、気づいた。
私、ほかならぬ、ガロンさんに引き留めて、欲しかったんだ。
私に何かあったら、駆け付けてくれる、そういってくれた、ガロンさんに。
あの時も甘えてると思ったけど、思った以上に甘えてたのね……。
うぬぼれて、舞い上がって、ばかみたいだ。
「……っ、ラファリア!?」
ガロンさんったら、おかしい。
何をそんなに、慌てているのかしら。
そう、笑おうとして、顔が引きつり、うまく笑えなかった。
「――え」
なに、これ。
体が、自分の体のはずなのに言うことを聞かない。それどころか、世界が、滲んで、ガロンさんの顔もうまく、見えなくなってしまった。
「……っ、すみません! ちょっと調子が悪いので、映像を切りますね!!」
震える指で、鈴に触れる。
「まってくれ、ラファ――」
……プツン。
音を立てて、映像が切れる。
「……子供じゃ、ないのに」
これでは、自分の思い通りに反応してくれなかったからって、癇癪を起す、子供と一緒だ。
そう、わかってるのに。
「……ラファリア様」
案の定、ユグの心配そうな声が聞こえた。
「ユグ、待ってください」
掌で、涙を拭う。
「……もう少しだけ」
自分の弱さと幼稚さの証は、零れ落ち続けた。
いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!
もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!




