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【12/19書籍発売】竜王陛下の運命になれなかった私が、魔国で愛されお世話係に!? 聖花を癒やす弦歌の乙女(旧:運命は、手に入れられなかったけれど)  作者: 夕立悠理
運命の相手編

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56/75

蝕む

「――え」


 毒……を、マーガレット様が私に?


「……ど、して」

 どうして。マーガレット様はいつだって、私に優しかったのに。

「花奏師の試験の前日、マーガレットと会わなかったか?」

「……!」

 確かに、花奏師の試験の前日、私とマーガレット様は会っていた。

 でも、あのときだって、試験合格を願って、一緒にクッキーを食べましょうって、少し焦げた手作りのクッキーをマーガレット様は持ってきてくれた。


「マーガレット様は……、手作りクッキーをくれて……でも」


 でも、その翌日、つまり試験当日、私は発熱した。

 この国では聖花の加護があるから、風邪を引くことはめったにない。

 それでも、無理が祟るなどして、風邪を引くことはある。


 私は数か月前からずっと、この花奏師の試験のために、いつも以上に練習を重ねていた。

 だから、試験当日に高熱が出たのも、頭が朦朧としたのも、無理のせいだ、とみんないっていたし、私もそう思っていた。

 ……マーガレット様が毒を盛るはずない。

 あれは、私の無理がたたったせいだもの。


「……そう、そのクッキーに毒を盛ったと、マーガレットは供述している」

「! ……そんな」


 クッキーに毒を。

 マーガレット様はどうして、そんなことを……?


 友人だと思っていたのは、私だけだった……?


 指先が白くなるほど、きつく手を握りしめる。

 そうでないと、正気を保っていられる気がしなかった。


「……マーガレットの目的は」

 レガレス陛下は、静かに続ける。


「『君』に成り代わることだったようだ」

「私に……?」


 愛らしいマーガレット様。

 マーガレット様は、なんでも持っていると思っていた。


 地位も名誉も花奏師の資格も……レガレス陛下の愛も。


「マーガレットは、君に六年前……私と君が出会ったあの日の話を聞いて、思いついたらしい」

「……そんな」


 確かに、六年前の話は、一度だけマーガレット様にしたことがある。

 それでも、全部は話していない。


 レガレス陛下が、聖花を見て、涙を流した私の涙をぬぐってくれたことなど断片的にしか、話していなかった。


 でも、それじゃあ、もし、私がその話をしなかったら、マーガレット様は、今でも私の友人でいてくれたのだろうか。


 それとも、最初から、友人だと思っていたのは私だけだった?


 知りたくなかった事実ばかりで吐きそうだ。


「花奏師の証を授与するとき、マーガレットは、私に言った。『六年前を、憶えていますか?』と」

「!!」


 だったら……。


「マーガレットの髪色は、あの日の君と同じ金髪で。……私にとって特別だったあの日の話をされた。だから、私は、マーガレットを君だと勘違いしてしまった」


 あの日、私は名乗らなかった。

 名乗る前に、レガレス陛下の迎えが来てしまったから。


「私は、ずっと……君を見つけ出せずに、マーガレットを君だと勘違いしていたんだ」

 でも……。


 マーガレット、そう、愛し気に名前を呼ぶレガレス陛下を何度見てきただろう。

 その度に、私の名前をそんな風に呼んでくれたらと、何度願ってきただろう。


「……ラファリア」


 レガレス陛下が、私を呼ぶ。

 甘さを含んだ、その声で。


「すまない。君を見つけられずに、ずっと傷つけてしまった」


 まっすぐ、私の瞳を見つめるその瞳は、朝焼け色だった。


「……いえ」

 首を振る。

 色んなことが一気に起こりすぎて、混乱していた。


「もう二度と、君を傷つけない。だから……もう一度言うが、私の〈運命〉になって欲しい」


 ……〈運命〉。

「〈運命〉とは、なんのことですか……?」


 〈竜王の運命〉ならわかる。

 竜王陛下の妃のことで、私がずっとなりたかったもの。


 でも、〈運命〉って……?


「〈運命〉は、魂の伴侶と呼ばれる、竜にとって唯一無二の特別な存在だ」

「……魂の伴侶」

「あぁ」


 レガレス陛下は頷くと続ける。


「一度、〈運命〉に選ぶと、〈運命〉に選ばれたものも、選んだものも、相手以外との婚姻ができない。それは、転生してもそうだ。だから……魂の伴侶と呼ばれる」

「……なるほど」


 生まれ変わっても、その人以外と結婚できないって、すごいリスクだ。

 でも、レガレス陛下は、そのリスクも承知の上で、私を……ということかしら。

「また、〈運命〉は互いの同意がないとなれない。リスクを背負う分、当然だが」

「……そうですね」


 レガレス陛下は目を細めて、私を見つめた。


「私は、もう一度『君』に会えたら〈運命〉に選ぶと決めていた」

「〈運命〉は必ず、選ばなければならないのですか?」


 ふと、疑問に思ったことを投げかけてみる。

「……いや。そうではない。リスクが伴う分、選ぶのは義務ではないが……それでも、私は君との確固たる絆が欲しい。もう二度と、傷つけずに済むように」

「……私は」


 初恋の人から、そう言われて、まったく舞い上がらないと言えば嘘になる。

 それでも……、今日は色んな事が起こりすぎて、正常な判断ができるとは思えなかった。


「ああ、すまない。答えは急がない。ゆっくり一週間で考えてくれればいい」

「……はい、ありがとうございます」


 そういえば、ガロンさんと〈運命の花嫁〉について話をしたことがあった。

 〈運命の花嫁〉と〈運命〉は同じものなのかしら。


 ぼんやりとそう考えながら、一番大事なことを聞き忘れていたことを思い出す。


「……聖花は、なぜ、枯れたのですか?」


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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