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【12/19書籍発売】竜王陛下の運命になれなかった私が、魔国で愛されお世話係に!? 聖花を癒やす弦歌の乙女(旧:運命は、手に入れられなかったけれど)  作者: 夕立悠理
運命の相手編

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四つ

 運命?

 竜王の運命……つまり、妃になれってことかしら?

「……」


 ずっと恋焦がれたひとからの、これ以上ない提案だった。

 でも、マーガレット様は?

 それに、それに……。


 少し視線をずらすと、ユグが心配そうにこちらを見つめている。


 そう、私はここ――アドルリアに、何をしに帰ったのかといえば。

 花奏師としての引継ぎと、聖花たちにさよならを告げるためだ。


「……へい――」

「答えはまだ急がなくていい。君も突然のことで驚いただろうし、まだ、帰るまで一週間もある。それに……」

 レガレス陛下は、立ち上がると、首を振った。


「聖花の……花奏師の引継ぎのこともある」

「……聖花に、なにか、あったのですか?」


 聖花。私の憧れの花。銀白に輝く美しい花たち。


「ここから先は、国家機密となる。悪いが……」

 レガレス陛下は、ユグや他の護衛たちに目配せした。


「……しかし」

 ユグが戸惑った声を上げると、レガレス陛下は微笑んだ。


「ここから先は、ラファリアには指一本、触れないと、約束する。それに、魔国の王ともあろう方が、無策で彼女をこちらに送ってくるとも思えないが」

「! ……っ、略式の誓約書を書いていただけますか?」

 ユグがさっと紙を渡すと、レガレス陛下は、それを受け取り、さらさらとサインした。


「これでいいかな、侍女殿」

「……たしかに。承りました。ラファリア様……」

 ユグはそれでも心配そうな顔をしている。

「ユグ、話を聞いたら、すぐにあなたの元へ行きますね」

 なので、ユグを安心させるよう微笑んだ。

「! ……はい。失礼いたします」


 ユグやレガレス陛下の護衛たちも出て行った。


 残されたのは、私とレガレス陛下、二人だけ。


「……それでは、こちらを見てほしい」


 レガレス陛下が見せたのは、萎れた何かだった。

「……これは」

 聞かなくても何か、わかる。

 それでも、聞かずにいられなかったのは、私にとって、それほどまでにショックなものだったから。


「……ああ。聖花だったものだ」

「……そんな」


 あんなに瑞々しかった聖花が、こんなに萎れるなんて。

 そもそも、聖花は、よほどのことがないと、枯れないはずだけど。


「何が、あったのか。お聞かせいただけますか?」

「……あぁ」


 レガレス陛下は、ソファに座るとゆっくりと話し出した。

「どこから、話そうか……。そうだな、まず、この聖花は、君が担当していた区画の聖花だ」

「……え」


 私が、担当していた聖花?

 どうして。去る日の聖花たちは、ちゃんと輝いていた。

 間違っても、そんな姿はしていなかった。これは、自信を持って言える。


「でも……、私の区画は今、花奏師長が担当してくださっているんですよね」

 花奏師長は、私と同じくらい、ううん、もしかしたら私以上に花奏師という仕事に情熱を注いでいた。

 そんな彼女が、こんな風にするとは思えない。


 ……だったら、私のせい?

 引継ぎがというのは、花奏師の引継ぎをしないと、聖花が枯れてしまうということ?


 頭の中でぐるぐるといろんな考えが浮かんでは、消えていく。


「……あぁ。花奏師長が『今は』担当している」

 レガレス陛下は、頷き、今、を強調した。


「……どういう、ことですか?」

「もともと、君の担当していた区画を任されたのは、マーガレット、彼女だったんだ。どうやら、彼女たっての希望だったらしいが」

「……マーガレット様が」

 愛らしい金髪に、緑の瞳のマーガレット様の笑みを思い出す。


「でも、マーガレット様は腕のいい、花奏師だと、花奏師長から……」

 花奏師長は、すべての区画の聖花を見て回る。

 そんな花奏師長が、腕のいい、と表現したのだ。実力に問題があるとは思えない。

 ということは、やっぱり、私の――。


「……彼女は、腕のいい花奏師……のふりをしていたんだ」

「え?」


 ふり?

 そんなことができるの?


 でも、それだと花奏師の試験は……。


「これに見覚えは?」

 レガレス陛下が、取り出したのは、翡翠のネックレスだった。

「……? はい、それは幼い頃からマーガレット様が大事にしていたものですよね」

「なるほど、幼い頃から」


 レガレス陛下は頷くと、ネックレスに触れた。

 すると……。

「!?」

 流れ出したのは、聞き覚えがある音楽だった。


「それ、は……」

 私の歌声だった。私が一番好きな、基礎をしっかりしていないと、綺麗に聞こえない曲。

 全身から血の気が引くのを感じる。

「君の声、だろう?」

 レガレス陛下が、もう一度ネックレスに触れると、その歌は止まった。


「……は、い」

 震えながら、頷く。

 頷くので、精いっぱいだった。


 どうして。


 どうして。


 その言葉ばかりが、頭の中をぐるぐると回る。


『あなた、花奏師をめざしているんですってね!』

 幼い頃のマーガレット様の声が蘇る。

『だったら……今日から私たちは、友達よ!』

 そういって、握ってくれた、柔らかな手も。

 親し気に細められた緑の瞳も。

 風に吹かれて揺れる、金糸の髪も。


 ぜんぶ、ぜんぶ、思い出せるのに。


 友人、だと思っていた。

 だからこそ、レガレス陛下と微笑みあう、マーガレット様を見ていられなくて。見ていたくなくて。


 それなのに、どうして……?


「君には、酷なことだが……。話しておかなければ」

 レガレス陛下は、四本の指を立てた。

「マーガレットに、かけられた容疑は四つ」

「四つも……?」

 聞きたくない。

 でも、聞かなきゃいけない。


「一つ、不正な手段で、花奏師の試験を突破したこと」

 これは、そのネックレス、かしら……。


「二つ、聖花を枯らしたこと」

 でも、ネックレスでごまかしてたのなら、枯れたのは、私のせいなんじゃ……。


「そして、三つめは……」

 レガレス陛下は、私を見つめた。

 悲し気に細められたその瞳に、は、と息を吞む。


「私相手に偽証したこと」


 偽証……? レガレス陛下相手に?

 それは、かなり重い罪に問われるだろう。

 でも、レガレス陛下の表情から察するに、私に関係があることなのだろうか。


「そして、最後。……これは」

 レガレス陛下は、首を振った。


「聞きたくないとは思うが。……それでも、聞いてほしい」

 どくどくと心臓がうるさい。

 そう前ぶりがいるほど、私に衝撃を与えられるものなのだろうか。


「君……ラファリア・トドリア侯爵令嬢に、毒を盛った疑いがかけられている」


いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

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