聞き間違えるはずもなく
ガロンさんの言葉に、アギノは――。
「やだ! ラファリアはもう、ボクの世話係だもん!! そうだよね、ラファリア」
うるうるとした紫の瞳で見つめられれば、アドルリアに行きますとは言いづらい。
でも……私はアドルリアに行かなければいけない。
「……アギノ、私は――」
「やだー! 聞きたくないもん!! ラファリアは、ボクの世話係なのに!! ばかガロンがしっかりつかまえとかないからー!」
アギノは、言葉通りぺたんと大きな耳を伏せてしまった。
……どうしよう。
「アギノ、ラファリアは、お前の世話係になるためにアドルリアに行くんだ」
ガロンさんの言葉に、アギノの耳がピクリと動く。
「……どーいうこと?」
「私は、聖花たちにお別れを告げに行くんです」
まだ、お別れをちゃんとできてなかったのだとアギノに言うと……。
「ふーん、……そっか、それなら、まぁ? ボクはてっきり……」
アギノは、伏せていた顔を上げると、私を見つめた。
「でも、一つ約束して、ラファリア。……絶対にこの国に、ボクの世話係として帰ってくるって」
元よりそのつもりだ。
「はい、もちろん」
大きく頷いて見せると、安心したように、アギノは腕の中で丸くなった。
「……今日は、どんな曲がいいですか?」
そっとアギノに尋ねる。
「あったかい、曲がいい」
そういって、アギノはまた目を閉じる。
「わかりました。あったかい曲ですね」
◇◇◇
――雪が降る中に、家族で暖炉を囲んだ時のような、そんな曲を歌い終わった後。
眠ってしまったアギノをベッドに寝かせて、ガロンさんとアギノの部屋を出る。
「部屋まで送ろう」
「ありがとうございます」
その言葉通り、やっぱり三メートルほどの距離を空けながら、ガロンさんは私を自室まで送ってくれた。
「……ラファリア」
立ち去り際に、ガロンさんに名前を呼ばれた。
「はい、ガロンさん」
どうしたんだろう。
「もし――……、いや、なんでもない」
ガロンさんは、なぜか複雑そうな顔をしていた。
「ガロンさん?」
「……いや。鈴は、必ず持って行ってくれ」
さっきもそんな話をしたのに。
本当にガロンさんが言いたかったことは、違う気がする。
でも。
ガロンさんが言うのをやめたのだったら、無理に暴くのも違うだろう。
「はい、もちろん」
だから、暴く代わりに頷いて、笑って見せる。
「……じゃあ、ラファリア。また、明日」
「はい、また明日」
◇◇◇
――翌朝。
ガロンさんとマギリが私たちを見送ってくれた。
「ユグ、ラファリアのことを頼んだぞ」
「はい、もちろん。お任せください」
ユグは、微笑んで自分の腕を叩いて見せた。
「こう見えて腕も立ちますからね」
そう言いながら、微笑んでくれたユグに微笑みかえす。
「マギリは、私がいないからって、七徹はしないように」
相変わらず徹夜明けで青い顔のマギリに、ユグが釘を刺す。
……本当に夫婦なのね。
少し年の差があるように見えるけれど、実際のところどうなんだろう。
好奇心が膨らみつつも、ユグの手をとり、もう片方の手で、ガロンさんたちに手を振る。
「ラファリア、帰りは俺が迎えに行く」
「! はい、楽しみにしてます」
ガロンさんが頷いたのと同時に、浮遊感を感じる。
そして、瞬きをした後に――、目の前に広がるのは、懐かしいアドルリアの城下だった。
「さて、ラファリア様。ここからは歩きに――……」
ユグの言葉に頷いて、歩き出そうとした、そのときだった。
「……ラファリア」
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