表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【12/19書籍発売】竜王陛下の運命になれなかった私が、魔国で愛されお世話係に!? 聖花を癒やす弦歌の乙女(旧:運命は、手に入れられなかったけれど)  作者: 夕立悠理
運命の相手編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/75

篭絡

(レガレス視点)

「……陛下」

 いつの間にか、夢も見ないほど、深く眠っていたようだった。

「……マーガレット」


 マーガレットは私の顔を見て、心配そうに表情を歪めた。

「陛下、大丈夫ですか……? 侍従からお薬をいただきましたの」

「あぁ、ありがとう」


 ゆっくりと体を起こし、マーガレットから差し出された水と、薬を受け取る。

 薬を水で流し込むと、苦みが口の中に広がった。


 思わず、顔を顰めながら、その苦みに耐えていると、マーガレットはくすりと笑った。

「陛下ったら……子供みたい」

「!」


 まさか、子供のように純真なマーガレットにそう言われるとは。

 気恥ずかしくて、横を向くと、マーガレットは、また、笑った。

「拗ねていらっしゃるの? ……かわいい」


 小さく漏らされた言葉は、けれど私の耳に届いた。


「……かわいいのは、君の方だ、マーガレット」

 あの日と変わらぬ、金糸の君。


「!」

 途端に頬を赤くするマーガレットを好ましく思いながら、見つめる。

 マーガレットは、赤くなった頬を手で押さえながら、はにかんだ。


「そういえば……陛下、あの日を、憶えているか、と聞かれましたが。私たちが再会した日のことは、憶えておいでですか?」

「もちろん」

 ――君と、再会した日を、憶えている。

 花奏師の試験に合格し、晴れて花奏師となった君。


 花奏師の証は、合格した日に私――竜王から花奏師へと与えられる。

 その回の受験者は、マーガレットだけだった。


 そして、迎えた証の二人だけの授与式のなか、マーガレットは涙を流して、呟いた。

「六年前を、憶えていますか? ……だったな、君の言葉」

「はい。もしかしたら、忘れられてしまっているのでは、と心配でなりませんでした」

 視線を落としたマーガレットに力強く微笑む。

「忘れるわけない」

 ――忘れられるはずもない。


 あの日、恋した君のことを。


「……ふふ、そうでしたね」


 マーガレットの笑みに、また記憶が鮮やかに蘇る。


◇◇◇


 あの日、あまりにも驚いて、証を取り落としそうになった私の手を握り、マーガレットは微笑んだのだ。

『私は、忘れたことは一度もございません』

「六年前、ということは……」


 私にとって特別思い入れがある思い出は、一つしかない。


 あの子が、本当に花奏師に……?


 聖花を見て、涙を流した君。

 きっと、いつかは花奏師を目指すと思っていたが……こんなにも早く、出会えるなんて。

「はい。あの日、聖花を見て涙を流した私を、笑わずに涙をぬぐってくださった」


 そういわれた瞬間に、花の香りがするようだった。


 聖花に香りはないから、あの日、聖花の周りに植えられていた、他の花々の。

「――ずっと、あなたに恋をしていました」

 金糸の髪が、揺れる。


 その輝きは、六年前と同じもの。


「レガレス陛下、あなたに会いたい一心で、花奏師を目指したのです」


 ずっと焦がれ続けた子が、目の前に。

 しかも、君も、私を想っていてくれたのだという。


「……あ」


 嬉しくて、恋しくて、涙がこぼれた。

「!」

 マーガレットは、ハンカチで私の涙をぬぐうと、微笑んだ。

「……心からお慕いしております」

「――私も」


 私も、ずっと、君を待っていた。

 君に、会いたかった。


 その言葉を体で伝えるように、気づけば私は、マーガレットを抱きしめていた。




いつもお読みくださり、誠にありがとうございます!

もしよろしければ、ブックマークや☆評価をいただけますと、今後の励みになります!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

いつもおよみくださり、ありがとうございます!本作が書籍化されます!
書籍のリンクです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ